実話を基に書かれた「An Unbelievable Story of Rape」というピューリッツァー賞を受賞した記事をドラマ化したNetflixオリジナル作品「アンビリーバブル たった1つの真実」を鑑賞してみました。
これはすごいです。
記事タイトルはちょっとふざけていますが、これでも足りないくらいの暴言を吐きたかったですけどね。
冒頭に「自己責任で視聴してください」という意味のテロップが流れます。
連続レイプ事件が軸になっているドラマなので、残酷なシーンはありませんが、男性に対して嫌悪感を抱いている女性、レイプの過去がある女性は見ない方がいいという注意喚起です。
加害者の人権ってのも理解はできなくないけど、女性の立場から言わせていただけば「レイプ」ほどむごくて人権を無視した犯罪はないと思っています。
日本では強姦罪に対しての刑が軽すぎると思うのですが、どうでしょうか?
ましてや、被害者が幼児や少女だった場合、極刑にすべきです。こうした傾向のある人たちは病気だとも言われているので、非常に難しい問題ではありますけどね。
このドラマはそれに加えて、警察側の思い込みによるミスが、ひとりの少女を奈落の底へ突き落しています。
とんでもない話しなんだけど、その少女を救った二人の女性刑事がカッコイイんです。こんな人たちばかりなら、世の中もっと暮らしやすくなるかもしれないのに、と思います。
それでは、Netflixドラマ「アンビリーバブル たった1つの真実」の基になった事件と感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレを含んでおりますことをご了承くださいませね。
作品の概略
若い女性によるレイプ被害の訴えを作り話として片付ける警察。だが数年後、酷似した手口の事件が続き、2人の女刑事が捜査に乗り出す。実話に着想を得たシリーズ。
全8話からなる今作の脚本は、1.2.3.8話をジュリア・ロバーツ主演の社会派映画「エリン・ブロコビッチ」の脚本を手掛けた「スーザン・グラント」が担当しています。
「エリン・ブロコビッチ」もいい映画でしたよねぇ。ジュリア・ロバーツの健康的な色気と、正義感に熱くなっちゃう作品です。
作品の基になった記事
このドラマは、実際にあった事件をProPublicaで大統領選挙の取材やタイムズの局長を務めたクリスチャン・ミラー氏と、2001年にはハーバード大学のニーマンフェローであり、プリンストン大学の教授でもあるケン・アームストロングが書き上げ、ピューリッツァー賞を受賞した「An Unbelievable Story of Rape」と、その後のラジオ番組「This American Life」に基づいています。
「ニーマンフェローとは」
アメリカ、ハーバード大学が設置しているジャーナリストのための特別研究員制度をニーマンフェローシップという。
ミルウォーキージャーナル紙の創立者ルシアス=ニーマンの遺産の寄付によって設立された。
本当の事件とは
フロリダ州バートーで、13歳の少女をレイプしたヘンリー・パリ・キャドルが17年の刑を宣告されました。
でも、被害者少女は以前、同じ男性に対して嘘の強姦の申し立てを報告していたことがあると、警察への虚偽情報提出で告発起訴されます。
そんなことがあり、2度目にレイプされた報告をしたとき、少女は犯行の証拠になる写真とビデオを持っていました。
フロリダ州レイクランドの地方新聞「The Lakeland Ledger」は、虚偽報告事件の検察官が、後に「少女は決して起訴されるべきではない」と証言したことを明かしています。
この事件は、法執行当局が性的暴行の被害者を疑い、さらには「虚偽情報提出」の犯罪者として起訴することさえ起こりうることを提起しています。
虚偽の報告を提出したとして告発されたものの、2回目の暴行の2日後、カウンセラーが少女に聞き取りをした結果、少女に対する告発処理をした州検事補は、保護観察を無効にする申し立てを行い、それが認められて告訴記録は取り消されました。
一方、少女に対する暴行で17年の刑を宣告されたキャドルは、12歳から18歳の複数の子供に対する性的犯罪で裁判になり、異議を申し立てることなく終身刑が宣告されました。
あと1週間で60歳になるキャドルの判決において、再犯の可能性ありとし、刑務所から釈放された場合は生涯の保護観察を課しています。
キャドルは、現在コロラド州に投獄されています。
被害にあった少女は、現在結婚してワシントン州の郊外に住み、二人の子供に恵まれています。
そして、インタビューに対して「2度と同じことがおこらないで欲しい。ドラマにしてくれたNetflixに感謝し、教訓としてみんなに知ってもらいたい」と語っていたそうです。
ざっくりあらすじ
このドラマは、警察での尋問や病院でのレイプ検査など、事実に基づいて描いている部分と、個人が特定されないように脚色している部分があります。
自宅でレイプ被害に合ったマリーは、すぐに警察に連絡し、被害を申し出ます。何度も調書を取られ、病院ではいくつもの屈辱的な検査を受けさせられます。
ところが、マリーが被害にあった自室には、物的証拠がほぼ残っていなかったこと、犯人が侵入したところを目撃した人も、物音を聞いた人もいなかったことから、マリーが虚偽の被害届を出したのではないか、と警察から疑われます。
幼いときに両親が離婚し、何人かの養母に育てられたマリーは、大人に対して不信感を持っていると共に、面倒なやり取りが苦手で、警察から「もしかしてウソを付いているのでは?」と疑われた時、ウソでした、と言ってしまいます。
ウソだ、と言ってしまったことで、マリーは警察から虚偽罪で訴えられ、住んでいた寮も追い出され、友人は離れていき、メディアには追いかけられ、八方ふさがりになっていきます。
マリーの事件から3年後、コロラド州で驚くほど手口がよく似た事件が発生し、その捜査にあたるのがカレン・デュバル刑事。
管轄の違う地域で、同じような事件の捜査にあたっていたのがグレース・ラスムッセン刑事。
ひょんなことから二つの事件に共通点が多いことを知り、二人は事件情報を交換し、精力的に捜査に当たっていきます。
頼もしいんだ!この二人。
マリーが心に負った深い傷を癒してくれたのも、カレン・デュバル刑事。
どの事件も物証があまりに乏しく、捜査の糸口も見えないかのように思えたけど、小さなことをコツコツと積み上げ、仮説⇒検証⇒考察を重ね、次第に犯人に近づいていきます。
感想
このドラマのメインは、レイプ事件そのものではなく、マリーが嘘の申告をしたと告訴されたこと、女性がレイプされる現実は、こんなに過酷な精神状態を持ち続けるんだよ、というところにあります。
マリーの聴取をしたのは男性の刑事。傷ついている少女の性的暴行事件の聴取を、男性刑事が行うことからもうNGと思うんですけどね。
レイプは、身体は死んでないけど、その瞬間に心は死んじゃうんです。深い深い傷が残るはずです。
そこ!日本でも、もっともっと重視すべきだといつも思っています。
そもそも、レイプの被害にあったとは人には言いにくい世の中です。「かわいそう」という気持ちにウソはないだろうけど、その裏に好奇の目が隠れている、それも真実だと思うんですね。
だからこそ、表に出てこない被害もたくさん、たくさんあるはずです。
レイプされただけでも大問題なのに、今作では、まだ未成年の少女が「それは嘘だろ」と疑われ、しかも虚偽の申告で告訴までされちゃうなんて、過酷すぎます。
このドラマは、警察の、イヤ世間がそう考える可能性が大であることを訴えたいのだと激しく感じました。
マリーは決して幸せな家庭環境で育ったわけではなく、生い立ちの影や大人に対する不信感をマリーを演じたケイトリン・ディーヴァーが、ものすごく繊細に演じています。
ケイトリン・ディーヴァーは、「ビューティフル・ボーイ」や「フロントランナー」にも出演しています。
マリーの事件とは別に、非常に手口が似たレイプ事件が起こり、これを担当した二人の女性刑事がすごくかっこいいんだ!
マリーが最初にカレンかグレースと出会っていたら、人に対する不信感が深くなりすぎずに済んだのに・・と残念です。
最終的に、犯人が捕まり、そいつが使っていたPCを証拠品として押収した中に、逮捕したときにはカレンもグレースも知らなかったマリー事件の証拠である写真が残されていて、管轄の警察に連絡をします。
そこで、マリーから聞き取りをし、嘘の申告をしたとして告訴した刑事が事実を知り、愕然とするわけですよ。
もしかしたら、保身のために握りつぶすんじゃないか?!とドキドキしちゃいましたが、さすがにそこまではしなかったから少しだけホッとしましたけどね。
ところが、犯人が捕まったことをマリーに告げに行った刑事は、事実を告げただけでマリーに一言も謝罪をしない。
ふざけてますよっ!
マリーは、自分を告訴したことに対して市を訴え、和解金を受け取った後、刑事を訪ね謝罪の言葉がないことを責めるんですね。当然です。
大人が正しい行いをしないと、子供はちゃんと育ちません。
年齢も地位も立場も全然関係なく、間違ったことをしたり、人を傷つけたら謝らなきゃいけないのは、幼稚園児だって教えられていることですから。
何件ものレイプ犯罪を犯していたくそ野郎な犯人は、カレンによって逮捕され、裁判になり、禁固327年?だったかな?が言い渡されます。ま、終身刑ってことです。
判決を言いわたした裁判長は「女性を物として扱った行為は許されない。あなたが自由に生きる権利は認められない」と言います。全然気持ちは晴れないけど、裁判長の言葉は心に沁みます。
ざまーみろ!です。保釈になんかならず、ずっと塀の中にいてくれ!ですよね。
加害者の人権も理解できなくはないけど、レイプって本当に卑劣です。実証がしにくい上に、被害者は2度と思い出したくないにもかかわらず、被害状況を説明したり、裁判になれば証言までしなくちゃならないわけでしょ?
レイプをするようなヤツは、自分の欲望に負けただけの獣以下の卑劣な人間です。ということを声を大にして訴えたい!
今作は、決して悲観的にレイプを取り上げているのではなく、問題提起をし、淡々と事件を追う二人の女性刑事のとてつもなく丁寧な仕事ぶりに敬意を払いたくなる上質な展開だと感じました。
最後に、マリーがカレンに電話をして、二人が短い会話を交わすシーンがあって、マリーが二人の女性刑事の存在を知って心が少し開放されたことを感じホッとしました。
この会話が、とっても印象に残る素敵なラストになっています。
同じような事件は他にもあった
マリーの事件と同じように、レイプされてから虚偽の報告で告発された事件は、決して初めてではなく、1997年の性的暴行の2人の被害者は、1人はウィスコンシン州マディソン、もう1人はニューヨーク市で、被害を受けたと報告した後に刑事告発されています。
どちらの場合も、のちに加害者が特定され、有罪判決を受け、女性は免罪されました。
2004年には、ペンシルベニア州クランベリータウンシップで性的暴行を受けたと報告した19歳の女性が、虚偽の報告で告発され、のちに開放されてはいるものの5日も刑務所で過ごしています。
その女性を暴行した男はその後逮捕され、女性に対する告発は取り下げられました。その女性は警察を訴え、150万ドルの和解金を受け取っています。
まとめ
警察の仕事だって人が行っていることだから、100%間違いが起こらないというわけでないだろうけど、ずさんな捜査や被害を訴えている人を簡単に疑うようなことはしてほしくないな、と思います。
事実はどうであるかわかりませんが、ドラマの中ではレイプ被害にあった女性は、みんな窓を開けて就寝していました。
世の中どんなことが起こるかわからないので、自分でできる限りのことはやっておかなくちゃいけませんね。
みなさん、気を付けましょう!