洋画

映画「明日を継ぐために」ネタバレ感想|息子の成長が喜びだった

ハリウッド映画だけど、キャストがほぼメキシコ人という映画「明日を継ぐために」を鑑賞してみました。

明日が保障されていない不法移民の父親とアメリカで生まれた息子。母親は貧しさに耐えられず息子を置いてトンずら。

父と息子が厳しい現実の中、逞しく生きる姿を描いた作品です。

作品概略

原題:A Better Life
製作年:2011年
製作国:アメリカ
キャスト:デミアン・ビチル、ホセ・フリアン
監督:クリス・ワイツ
脚本:エリック・イーソン

主演のデミアン・ビチルが、第84回アカデミー賞で主演男優賞にノミネート。

ハリウッド映画だけど、キャストはほぼ全員メキシコ系。

Wikipediaによると、第24回東京国際映画祭のコンペティションで上映されたとなっていますが、東京国際映画祭のサイトを見ると、「A Better Life」という同じタイトルのセドリック・カーン監督によるフランス映画が上映された様子なので、日本では未公開作品ではないかと思われます。

ざっくりあらすじ

イースト・ロサンゼルスで庭師として働く不法移民であるカルロス。

ひとり息子のルイスがギャングの仲間入りをしないか心配しながら、移民局に捕まらないよう仕事と家を行き来するだけでひっそりとした暮らしていた。

ある日、妹に借金をしてトラックを購入し、仕事を広げ、ルイスにもっといい環境を与えたいと希望に燃えるカルロスだったが、思わぬトラブルが起きてしまう。

不法移民の父、アメリカで生まれた息子。二人の未来はどうなっていくのか?

感想

日本人に生まれようとか、アメリカ人に生まれようとか、黒人に生まれようとか、白人に生まれようとか、人は生まれ落ちる親や環境を選んでこの世に誕生することはできません。

だけど、全てじゃないにしろ生まれた環境で育つ環境もある程度決まってくるし、親の職業が子供に影響を与えることもあります。

だけど、それは子供のせいではないし、ドラッグやお酒におぼれて育児放棄したわけではなく、一生懸命働いているけど生活が楽にならない親のせいでもなかったりします。

その歯がゆさ、自分がひどい目にあっても人に対して誠実であることの大切さ、心にある本当の思いを伝える価値など、じわっと心に迫る作品です。

カルロスの夢

カルロスは、庭師の助手をしていました。

故郷に帰るから使っているトラックを機材も一緒に譲ると親方に言われ、結婚で市民権を得た妹から借金をしてトラック一式を購入します。

それでカルロスは息子のルイスに「商売を広げて引っ越して、もっといい環境の学校に変わろう」と夢を語り、幸せな気分に浸るんですね。

不法移民としてアメリカで働いているカルロスは、運転免許がないのに親方からトラックを買っちゃって大丈夫か?と少し心配に思います。結局それが、後から問題を引き起こすことになっちゃうんですね。

やっぱりか・・・と。

トラックに乗ってカルロスは、助手を探すために日本でいう山谷のように日雇い労働者が集まる場所に行くんですね。

その時、以前そこでパンを分けてくれたサンティアゴを見つけ、彼を指名して助手席に乗せて仕事に向かいます。

なけなしのパンを半分くれたサンティアゴに、恩返しをしたいカルロスの気持ちはよぉーくわかりますよね。私だって同じことをしたと思いますもん。

だけど、そのサンティアゴが悪党だった。いや、根っからの悪党だったわけじゃない。もしそうならパンを分けたりしないもんね。

カルロスのトラック

トラックに乗って現場に付いたカルロスとサンティアゴ。カルロスが高所で作業をしようと木に登っていたスキに、サンティアゴは車を盗んでしまうんです。

車のキーを無防備に放置していたカルロスも悪いけど、貧しくて苦しい生活の中で、サンティアゴも魔が差した、目がくらんだ、ってことかな。貧しさは、人の心に悪魔が忍び寄る隙間を大きくするような気がします。

移民とか不法滞在の人と交流した経験はないので、そういう人たちの思いや環境について全くわからないけど、少しでも暮らしが楽になれば、というのが共通の思いだろうと思っています。そうだよね?

2019年には日本でも外国人労働者の受け入れに関する改正法が施行されたことで関心が高まったし、アメリカやヨーロッパでも移民をめぐって様々な問題が起こっています。

アメリカではメキシコからの移民がイチバン多いそうですが、カルロスたちが住むところもメキシコからの移民が多く住んでいる居住区。決して治安がいいとは言えない環境。

仕事を終え、トラックに乗って帰宅する途中、窓から見える景色が家に近づくにつれ、豊かな緑から徐々に殺伐とした風景へと変わっていくんです。

緑豊かな街並みを犬を連れてジョギングする女性、友人と連れ立ってオシャレなカフェに入っていく若者たち。息子のルイスには、もっといい環境を与えてあげたい、やりたいことをやらせてあげたいというカルロスの親心があります。

そんな思いを抱いてトラックを購入し、洗車もしてもらって意気揚々と仕事を始めたのに、盗まれてしまったカルロスの思いはどんなだっただろうと胸が痛むんですよ。

事情を知ったルイスは、父親と一緒にトラックを盗んだサンティアゴを探しに行きます。

サンティアゴの住んでいる場所に行ってみると、そこはまさにタコ部屋。小さなアパートの1室に老若男女を問わずギュウギュウ詰めで人が暮らしていました。

サンティアゴを見つけたものの、もはや後の祭り。彼はトラックを売っばらって祖国に送金しちゃってました。

猛烈に頭にきたルイスはサンティアゴをボコボコにしちゃうんだけど、それを父は止めに入ります。カルロスだってボコボコにしたかっただろうけど、彼は人として誠実だし冷静だし、非常にまじめなんですね。

そうしたカルロスの行いは、彼がルイスにまともな人生を歩んでほしいと思っているからに違いないと感じます。

危なげなルイスを救った事

ルイスの彼女はギャング一家。ルイスも危なげな生活を送っています。カルロスにしてみるとそれがイチバンの心配事なんだけど、14歳の少年にしてみれば、父親の言うことなんて鬱陶しい以外の何物でもないわけです。

日本で言えば中2ですよね。道を踏み外したいお年頃ですよ。子どもなんだけど、もう子ども扱いは嫌いだし、いっぱしのことができると本人は思っているし、だけど大人から見たら危なっかしいしね。

ルイスもそんな感じ。だけど、パパが一生懸命働いていることはわかっているんです。

メキシコ系のギャングって、タトゥーが派手。ほぼ全身に入っているんですね。以前、FBIのおとり捜査でアメリカの極悪刑務所へ収監された日本人ヤクザKEIのドキュメンタリー「HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~」を観たけど、そこに実際出てくるギャングたちもすごかったですもん。

でね、ルイスはトラックを探している中で食事をしている時、父に「貧乏なのに何で子どもを育てるの?」と問いかけます。

だけど、カルロスは話しをはぐらかします。きっと、その時にはカルロスもルイスの問いに対する明確な答えが出てこなかったのだと感じます。

カルロスとルイスは、サンティアゴが闇の中古車屋へ売り払ったトラックを見つけ、ふたりで金網を突破して取り返すんだけど、その帰り道にパトカーに呼び止められ、無免許だったカルロスは拘束されてしまいます。

父の言葉

捕まってしまったカルロスは、古郷メキシコに強制送還されてしまいます。最後に面会したとき、カルロスは

「あの時、答えなかったけど、母さんと愛し合ってアメリカに来てお前が生まれた。だけど母さんは、俺の稼ぎに満足できずに出て行った。

腹が立ったけど、たったひとつの救いがあった。それがお前だ」と答えを告げます。

本国に送還されることでルイスと別れなくちゃならず、改めて息子がかけがえのない存在であり、成長を見守ることだけを楽しみに生きていたことを痛感したんだろうと思います。

ギャングに入団しようとしていたルイスは、父の素直な告白に改心するんです。非常にベタな展開なんだけど、ものすごく素直に感動します。

なんですかね。親の言葉って、ストレートだと聞いてる方が恥ずかしくなったりするけど、荒れた生活の息子にとっては、父の愛を感じ、離れ離れになってしまう寂しさの糧になったのかもしれません。

カルロスの訥々とした語りが、とても心に響くんですよ納得のアカデミー賞で主演男優賞ノミネートです。

最後に「悪かったな、父親失格だ」とつぶやくんだけど、ルイスは父親失格だなんて絶対に思っていないはず。直球の愛は、しっかり息子に伝わったと感じましたもん。

まとめ

国や人種や環境などが違うと、絶対に理解できないことってあると思うけど、親の子に対する愛情は、表現の仕方が違っても世界共通ですよね。

それが伝わらない時もあるし、子供を育てる中で親が学ぶこともたくさんあるし、共に成長していくんだと感じるけど、子どもに対しても「あ、違ったな」とか「言いすぎちゃったな」とか思ったら、素直に謝ることって大事だと思っているんですね。

カルロスは、通常の生活の中では言葉数が多い方ではないんだけど、ここぞというときにちゃんと自分の言葉で、息子と対等に向き合う姿勢があるんです。

だからこそ、ルイスも道を踏み外しそうになったけど、父親の思いを裏切らなかったんだと思います。

派手なドラマがあるわけじゃないし、大どんでん返しも全くないけど、こういう作品こそたくさんの人に観てほしいなぁと個人的に感じた良作でした。

子どもに腹が立っていてもこれを観れば「ま、いっか」と思えるかもだし、親にムカついていても「仕方ないな」と思えるかも。

映画って、ホント素敵な娯楽です。是非ぃぃ。

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