映画「スノー・ロワイヤル」を鑑賞してきました。
淡々と除雪作業をする雪深い山、日本の除雪車が軽自動車に見えるほど、その大きさが半端ない!それを縦横無尽にまるでファミリーカーのように操るところは、痺れます。
クライムサスペンス映画かと思いきや!いや、そうなんだろうけど、おかしいんです。決してゲラゲラ笑っちゃうコメディではないんだけど、フッと失笑してしまったり、皮肉にニヤリとしちゃう映画でした。
映画の主人公は、キャラが立っていればいるほど、魅力的ですが、この映画はわき役もそれぞれに見事な個性が光っていて、そこも見どころのひとつ。
トランクに死体を積んだ車の中で、猪八戒のようなゲイのギャングが助手席の彼氏とボスの目を盗んでキスしちゃう・・なんて、無駄なシーンのようでいて、映画を盛り立てていたりしています。
それでは、あらすじと感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレしていますことをご了承くださいね。
Contents
作品の概要
2014年のノルウェー・スウェーデン合作映画「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」を、リーアム・ニーソン主演で、同じ監督:ハンス・ペテル・モランドがリメイクした作品。
製作には、『パルプ・フィクション』(94)、『ゲット・ショーティ』『エリン・ブロコビッチ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』『誘拐の掟』などを手掛けたマイケル・シャンバーグが携わっています。
これらの作品を観たことがある方なら、あーなるほどね、と感じられるかもしれません。
雪深い静かな田舎町キーホー。この町で除雪作業員をしているネルズ・コックスマンは模範市民賞を受賞するほど真面目に穏やかな日々を送っていた。
しかし、ネルズの1人息子が麻薬の過剰摂取に偽装され、殺されてしまったことから事態は一変する。
地元の麻薬王バイキングの組織に息子が殺されたことに気づいたネルズは、素手や銃、さらには除雪車で、組織の人間を1人また1人と殺していく。
しかし、ネルズの復讐劇を敵対する麻薬組織によるものと勘違いしたバイキングは敵対組織を襲撃。
相手もその報復に乗り出し、ネルズの復讐劇は2つのマフィア、さらに警察をも巻き込んだ戦いへと突入する。
ロケ地
コロラド州のキーホーというスキー・リゾートの町という設定ですが、実際のロケ地はカナダのアルバータ州。
ただひたすら見渡す限り雪、雪、雪。
音を吸い取ってしまうほどのシンとした雄大な自然の中では、人が何を思おうと、何を感じようと、ちっぽけだな、と思わされます。
あらすじ
その1 息子の死因
雪深い山。長年にわたる仕事ぶりを評価され、模範市民賞を受賞した除雪作業員のネルズ・コックスマンは、妻と息子の3人家族。
ある日、息子が死亡したと連絡を受け、確認に行くと、死因は「薬物の過剰摂取」とのこと。息子は薬物なんかやらない!と言うと、「親はみんなそう言う」と軽くいなされてしまいます。
失意のどん底のネルズは、銃での自殺を試みようとしていたところへ、負傷した息子の友人が現われ「ごめんなさい。カイル(息子)は、荷物にコカインがあることは知らなかったんだ」と言います。
その言葉でネルズは、カイルが誰かに殺されたと確信します。
その2 父ちゃんの復讐劇が始まる
カイルの友人から、関わっていた人物の名前を聞き出し、ぼっこぼこにします。模範市民賞を受賞した一般市民なんだけど、チンピラ相手に、反撃する暇を与えないほど滅法強い。
特に息子を死に至らしめた恨み言を言うでもなく、罵倒するでもなく、淡々とやっちまいます。そして、金属製の網にくるくると巻いて、凍てつく川へポイっ!
いやいや、死体って重いって言うじゃないですか、そんなに簡単にポイっと投げられますか?とは思っちゃったけど、そこは映画ですからね、演出ってのも大事です。
ネルズにとって、息子の死に関わったチンピラの命なんてのは、これほど軽いんだよ、ということなのかもしれません。気持ちはわかるなぁ
そんな風に、ぼっこぼこにした相手から次のターゲットの名前を聞き出し、次々とぼっこぼこにして川に投げ捨てちゃいます。
その3 麻薬組織のボス:バイキング
ぼっこぼこにした男たちの組織のボス(通称:バイキング)ってのが、メキシコのカルテルのボスみたいな(あくまで個人的なイメージ)キンキラの成金的御殿じゃなくて、クールな趣味のいい家に住んでいます。
エグゼクティブビジネスパーソンの雰囲気を漂わせたスーツをびしっと着ていて、葉巻をくゆらせたりはしていません。しかもなかなかの男前。
演じているのは、イギリス・オックスフォード出身の俳優:トム・ベイトマン
しかもひとり息子の食事管理に熱心で、糖質の高い菓子パンは窓から捨てちゃう、1週間のメニューまで決めちゃう、お菓子はNGと、子どもにとっては拷問みたいなことをやらかしています。
だから当然、妻とは離婚。父親の跡目を継いだ2代目のボスらしい、わがままで癇癪持ちな一面もあり、これじゃ手下は大変だわ。。って感じ。
その4 手下をやっちまった犯人探し
手下が次々と行方不明になっている原因を、地元で敵対している、ネイティブアメリカンのホワイトブルが率いる犯罪組織の仕業だと思い込みます。
もう怒り心頭!皆殺しな勢い!
そこへ、ネルズからバイキング暗殺を9万ドルで請け負った殺し屋がやってきて、「お前を狙っているヤツを知っている。そのネタを9万ドルで売ってやる」と言われるわけですよ。
殺し屋の風上にも置けない、金勘定極上主義の腐った野郎です。
その5 ネルズの兄嫁が強烈
次々と息子の死に関わったと思われる奴らをぼっこぼこにしてきたネルズは、昔ちょいと悪さをしていた兄のところに相談に行きます。
そこにいたのは、中国人の兄嫁。とにかく強烈です。おったまげるほど強烈です。
後に夫が殺され、ネルズとお墓を訪れたときは、思いっきり夫のお墓に唾を吐きかけていました。
でもそれは、もうトラブルはごめんだよ、と言っていたのに、先に逝ってしまった夫に対する彼女なりの愛情表現なのかな、と好意的に解釈してみましたけどね。
その6 バイキングの息子を誘拐
チクリ野郎の殺し屋が、バイキングをやっちまわなかったので、ネルズは自ら行動に出ます。
仕掛けられたホワイトブルの手下たちも、バイキングの息子誘拐を計画していましたが、一足先にネルズがかっさらっていきます。
ところが、肝っ玉が据わっているバイキングの息子は、動じることもなくネルズの家でくつろいじゃう。子供心に、ネルズは悪者ではないと感じたのでしょうね。
ネルズの息子のベッドに寝るよう指示すると「本を読んで欲しい」と彼に言われ、子どもに読んであげるような本はないからと除雪車のカタログを読み聞かせるんですよ。
いいよねぇ、こういうセンス。ある種、男同士のロマンです。
本はない、と諦めさせるのではなく、除雪車のカタログですよ!バイキングの息子は、目を輝かせながら聞いていて「明日は除雪車に乗せて欲しい」とせがみます。
そりゃ、乗ってみたくなるってもんです。
その7 マフィアも警察も山の上に大集合
バイキンググループもホワイトブルのグループも山の上に集まり、ネルズも加わって派手な抗争劇が展開されます。
バイキングは、オヤジが仕切っていた土地にホワイトブルがのさばっていることを快く思っていないちっちゃい奴。でも、よぉーく考えてみればホワイトブルグループはネイティブアメリカン。
バイキングのオヤジのそのまたオヤジの、そのまたオヤジは、元を正せばホワイトブルたちの先祖の土地を奪って商売を始めたってことになるわけで。
そこを考えられないのか?わかっていないバカなのか?とにかく自己チューなヤツですね。
それに比べると、歳がだいぶ上だから経験値も違うけど、ホワイトブルの方がボスとしての貫禄と包容力と他の人を認める人間らしさがありました。
ラストには、そこまでやらなくても・・・というオチがあり、そのシーンに『ジャンゴ 繋がれざる者』を見た気がします。
感想
ぼっこぼこにするシーンあり、首を取っちゃうシーンあり、派手なドンパチシーンあり、と残虐なシーンは多々あるものの、嫌悪感はそれほどなく、どこかさらりと乾いた感覚のある映画でした。
強烈な中国妻の意味不明なエクササイズとか、チクリ殺し屋のタクシー内での音楽に対するこだわりとか、小さなネタが私には極上でした。
クライムサスペンスというだけでなく、厳しい雪山の雄大な風景も楽しめるし、それを楽しむためにあつらえただろうなと思えるシーンもあり、娯楽映画としては120%楽しめる作品だと思います。
スウェーデン映画と言えば、私の中ではミレニアム。ハリウッド版の「ドラゴンタトゥーの女」

ハリウッド版は、エンタメ要素が前面に押し出され、派手に演出されている感じ、それに比べるとスウェーデン映画の方は物語を淡々と描いた印象でした。
スノーロワイヤルの基になったスウェーデン映画の「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」も是非観たいと思っています。