日本劇場未公開作品

未公開映画「アグネスと幸せのパズル」ネタバレ感想|幸せの価値を決めるのは私

Netflixで日本では劇場未公開の作品「アグネスと幸せのパズル」を鑑賞してみました。

地味な映画でしたが、主人公の心の様子の移り変わりが興味深い作品でしたので、感想を綴ってみたいと思います。

感想にはネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。

作品概略

原題:Puzzle
製作年:2020年
日本劇場公開日:未公開
製作国:アメリカ
キャスト:ケリー・マクドナルド、イルファン・カーン
監督:マーク・タートルトーブ
脚本:オーレン・ムーヴァーマン

2018年にアメリカで公開された、2010年の映画『幸せパズル』をリメイクした作品。2010年の『幸せパズル』は、フランスとアルゼンチンの合作映画で、こちらは2011年に日本でも公開されている。

ざっくりあらすじ

自動車整備工場を営んでいる夫:ルイと、二人の息子と共に暮らしている専業主婦のアグネス。

自分の誕生日パーティーの準備や片付けも自分でやっていたが、不平不満をこぼすこともなく淡々とした平凡な毎日だった。

誕生日プレゼントとして贈られた1000ピースのジグソーパズルを試しにやってみたことから、アグネスの平凡な毎日にある変化が訪れ、それによってアグネスの人生が変わっていく。

感想

画像引用元:ソニーピクチャーズ

夫と息子たちの世話を中心に専業主婦として暮らし、教会へのボランティアに時々通う程度の地味な暮らしをしていたアグネス。

自分で準備した誕生日会のとき、夫:ルイが誤って割ってしまったお皿のかけらを拾い集めて修理しようとするが、かけらが足りずに探している時、ルイから「後にしろ」と言われて素直に従う姿は、とても自分自身の誕生日だという華やかさはありません。

プレゼントにもらったスマートフォンも自分には異世界の代物だし、とても使いこなせないから必要ないと否定的。

淡々とアグネスの生活や個性、家族との関係性を映し出す画面は、すごく地味なんです。

だけど、そこからアグネスに何が起こるのか、タイトルの「パズル」がどうかかわってくるのか、それが知りたくて観続けました。

ジグソーパズル

ある日、誕生日プレゼントにもらったジグソーパズルを出してきてやってみると、1000ピースという量にも関わらず、1日で仕上げてしまいます。

ジグソーパズルなんて、もう何年もやったことがないから確かじゃないけど、1000ピースは1日じゃ仕上がりませんよね?

だけど、アグネスはやってのけちゃうわけです。

パズルに夢中になった彼女は、新しいのを購入するため、ニューヨークの専門ショップを訪ねます。そして、そこで「パズル大会の前チャンピオン、ロバートが翌月の大会に向けて新しいパートナーを募集中」という広告を見つけ、連絡先を持って帰ってくるわけ。

意を決して、スマホでショートメールを送ってみると、すぐに返事が来て、ロバートを訪ねることになります。

ふたりで大会に出場するため、週に2回の練習をすることにつくんんなり、保守的な夫ルイには「骨折した伯母の手伝いに行く」と嘘をつくんですね。

だけど、ルイは「俺や息子たちの世話はどうするんだ?そこまでする必要があるのか?人が好過ぎる」といい顔をしません。

下の息子が大学進学の年齢だから、ルイとアグネスは多分、40代ってとこですかね。日本的ないい方をすれば、ルイは完全に亭主関白。

愛してるとか言ってるけど、多分それも本当だろうけど、自覚はないだろうけどアグネスを自分の所有物のように思っている節はあるし、相手の気持ちを推し量ることなんて全く考えたこともないようなオトコ。

ロバートの元に通っていると

ロバートの元に定期的に通うようになったアグネスは、自分の生活にはなかった習慣を知り、ルイにはない知性をロバートに感じます。

ふたりだけの大会に向けた練習は、ふたりの距離を縮め、そして恋愛感情を持つようになるのは容易です。

だけどね、ロバートは妻に去られた寂しさを抱えていたし、アグネスは自分自身を大らかに表現できない暮らしに不満が蓄積していたようだし、もしかしたらお互いに相手は誰でもよかったのかもしれません。

ふたりが持っていた心の隙をお互いの存在で埋めることで、安らかな気持ちになれたり、抱えている寂しさや不満が癒されたような気もします。

まあ、恋愛ってのはそんなものかもしれません。

なんとなくの空虚感を抱えていた時、たまたま目の前にいた異性に対し恋心を抱いちゃった、というスタートもあるんじゃないかしら。

変わっていくアグネス

保守的なルイは、整備工場を手伝っている長男が「料理の道に進みたい」と言うと「男がする仕事じゃない」なんて言い出すんですよ。

びっくりです。

スマホの時代に、アメリカにまだそんなことを言うオトコがいるだなんて!えっ?時代劇じゃなくて、現代作品だったよね?と確認しちゃいましたよ。

私・・アメリカの何を知っているんだ?ではありますが、日本での有名店シェフは男性の方が多い認識だったし、お菓子職人だって男性の方が多いですよね?

以前のアグネスなら、ルイの決定に対して反対意見は述べなかっただろうけど、長男の好きな道に進ませてあげたいと主張するようになります。

更に、ルイのいびきも我慢していたのに、どついて「いびきを止めて」と言ったりしちゃう。

他の異性に気持ちを持っていかれると、隣の夫や恋人に我慢ならなくなる女性が多いと思うんですね。そういうところでバレないように、お気をつけあそばせね。

ロバートと出会ったことで、アグネスは本来の自分を取り戻したんだと思います。

長い結婚生活の中で、相手に合わせている方が平和だと感じたり、相手が頑固だったりすれば、自分が意見を言ったところで何も変わらないと諦めちゃうことってあると思うんですね。

きっとアグネスもそうした諦めの中でルイに従ってきたことは、ルイにとっていつの間にか当たり前になり、相手の気持ちを考えてみたり、感謝したりということがなくなってくる。

それで幸せなわきゃない。だけど、オトコは気が付かない。

アグネスの決断

アグネスとロバートは、パズルの全米大会に出場し優勝しちゃいます。

そして、ふたりは1回だけ一線を超えてしまい、ロバートは世界大会にふたりで行く手配をします。

アグネスもロバートに「愛してる」と告白するんだけど、本当にアグネスはロバートを愛しているのか?それは幻想じゃないのかな、と私は感じました。

ある晩、アグネスが深夜に帰宅したところ、足に刺さった何かを確認すると、それは誕生日に割れたお皿の見つからなかった最後のかけらでした。

きっとね、割れたお皿は家族、見つからなかったひとつのかけらはアグネス。

たったひとつでもかけらがないお皿は元の形にならないし、迷子になっていたかけらが見つかったとしても元の状態には戻りません。

アグネスは、ロバートに世界大会への出場を断ります。

じゃあ、ルイとやり直すのか?

一度は離れてしまった気持ちは戻らないし、しでかしたことも消えません。そして、アグネスは本来の姿を取り戻して、それがとても快適だったと感じていたら、ルイに従っていた妻には戻れませんよね。

さて、アグネスはどんな結論を出したのか?

まとめ

すごく地味な映画です。

だけど、アグネスの気持ちの変化が興味深くて見続けてしまいます。

人生って、ちょっとしたきっかけで大きく変わるものだし、他人から言われたことで自分の潜在意識に置いてあったことに気づかされたりもします。

選択したことは、それが間違っていたとしても全部、自分の責任。

例え、自分の結婚は間違いだったと感じたとしても、相手に幻滅したとしても、その相手でいいと思って決断したわけで、相手だけが悪いわけではありませんよね。

そう考えると、アグネスの決断は潔かったかもしれません。

まあね、映画だからあんなキレイなラストシーンになるのよ!とは言えるけどね。

男女の中、結婚生活ってのは忍耐の修行の場って感じですかね。

夫に対してプチ不満がある方は、ちょっとだけスッキリする作品かもしれません。