最近、実話を基にした映画が多いような気がしますが、今回観てきた「運び屋」も実際に麻薬の運び屋をしていたレオ・シャープの話を基に作られています。
メキシコ麻薬カルテルと聞くと、「ボーダーライン」のような暗くて、残酷で重い作品を想像しますよね。
しかも、流れるCM映像には、深い皺が刻まれたクリント・イーストウッドが血だらけで運転しているシーンがあったりしたけど、いい意味で期待を裏切る女好きな肝っ玉じーさんのユーモア溢れる作品でした。
えっ?!そんなセリフ、絶対NGでしょ?とこちらは慌てる発言をしても「えへへ」と笑っている通称:タタは、憎めない存在でした。
麻薬カルテルでは、お互いにメンバーの本当の名前を知らず、ニックネームで呼び合うんですって。ちなみに、「タタ」はスペイン語で「じーさん」という意味らしいです。なんか、かわいいですよね。
感想は、ネタバレしていますことをご了承くださいね。
Contents
作品の概略
90歳近い老人がメキシコカルテルの麻薬の運び屋として活動していた話しを、クリント・イーストウッドが監督及び主演で映画化した作品。
映画の中でクリント・イーストウッドが演じている運び屋:アール・ストーンの娘を演じているのは、クリント・イーストウッドの実の娘:アリソン・イーストウッド。
感想
その1 女好きなタタ
花農園を営んでいたアールが展覧会に行くと、盛況だったのはネット販売のブース。そこで「バイアグラでも配っとるんか」と皮肉り「インターネットはくだらん!」と言い放つ。
そこで対抗意識を燃やしたからか、自分のブースではタダで苗木を配って押すな押すなの人だかり。
でも、そのインターネットによってアールは仕事を追われちゃうんだけどね。だから、映画の端々にアールのネット嫌いが表現されているのよね。
麻薬の運び屋になってメキシコの親分のところへ招待された時は、親分がアールに女性の接待を付けるんだけど、「心臓の薬を飲まなくちゃ!うっひょっひょぉ~」ってな感じで存分に楽しんじゃう。
また別の日には、滞在したホテルにコールガールを2人も呼んで、朝まで楽しんじゃうというパワフルな老人。
もうすぐ90歳ですよ!まあ、だからこそ鼻歌交じりでブツを運ぶ度胸があるのかもだけど・・・
その2 肝っ玉が座っているけどKYなタタ
退役軍人だからか、人生経験を積んだ老人だからか、とにかく肝が据わっている。
強面のメキシコカルテル組織の男から、銃を突きつけられているというのに、全く動じず「殺すなら、早く殺しやがれ!」的なセリフを吐いちゃう。
思わず「タタ、かっこいいじゃん」と思っちゃうんですねぇ。
だけど年寄りの特徴なのか、私の母もそうだけど困っている人がいるとほおっておけない。まっ直ぐ寄り道をせずにブツを運ぶように言われているのに、草原のど真ん中でパンクした車を見つけると、降りて行って手伝っちゃう。
後ろにはカルテルの見張り役がぴったりと追走しているにも関わらず、そんなこっちゃお構いなし。
だけど、黒人だった車の持ち主にニコニコしながら「ニグロ」って言っちゃうのよね。悪気がないのは見てわかるから、その夫婦も「今度から我々のことはブラック、あなたのような人はホワイト、と言ってください」とたしなめる。
すると実に軽く「オッケー!」的な対応。言った方も拍子抜けよね。
カルテルの見張り役のメキシコ人には「タコス野郎」と言っちゃうし、とにかく思うがままの言動が笑える。
でも、結局のところ、もちろん表現の仕方は相手を傷つけちゃいけいことは前提だけど、悪意があるかないかで、受け取る方は全く違った気持ちになると思うのね。
人種差別は、永遠になくならない課題かもしれないけど、この作品のタタの言動を見ていると、大騒ぎする前に人として相手にどう接するか、という根本のハートが何より大事なのかも・・とタタを観て思う。
その3 大金転がり込んで太っ腹
運び屋をやって大金が転がり込んで来たら、ボロボロのピックアップトラックは新車のピカピカトラックに買い替えちゃうし、退役軍人が集う施設が火事で閉鎖になったのを聞き。修理代をポンと寄付しちゃうし、オイオイ!そんなにバラまいてヤバくないですか?と心配になったりしちゃう。
気前がいいのはいいことだけど、みんなきっと「お金の出所は?」って、絶対思ってるって!
90歳を経験したことがないので、何とも言えないけど、映画を観ている限り、麻薬を運んでいる罪悪感やビビる気持ちなんてのは全くなくて、車の中でお気に入りのミュージックを流して、大声で歌ったり、旅の途中の「美味しいモノ」を堪能しつつ、ただひたすら好きな運転を楽しんでいる感じ。
運んでいるモノが麻薬でなければ、いい老後だな、と思っちゃうわね。
歳を取ると、人から頼りにされたり、人から喜んでもらうことができたり、という機会が減っていくのだと思うのね。
自分が大金をつかんだことで、それを人のために使って喜んでもらえることが何よりタタには嬉しかったんだと思う。
その4 家族との絆を築くことがへたくそ!
この映画のひとつの大きなテーマが家族の絆。仕事に夢中で、娘の結婚式にも出席しなかったアールは、12年間娘と話をしていない。
孫の結婚式前夜のパーティに行ったときも、アールの姿を見たとたん娘は帰ろうとする。
昔は、アメリカにもこういうタイプの男性が多かったのかしらね?
仕事さえしていれば、金さえ稼いでいれば、養ってさえいれば、そんな風に思い込んでいるオトコたち、日本にもいっぱいいるけど、それは自分で思い込もうとしている大義名分なだけで、結局は体のいい逃げ!と私は思うのよ。
だけど、元妻が病に倒れ、長くないと孫から連絡をもらったとき、ブツを運んでいる途中だったため、1度は「行かれない」と断るものの、元妻のところへ駆けつけて、無事葬儀まで付き添うのね。
その時、元妻がものすごく幸せそうで、最後にあなたに会えてよかった、愛してるわ、と言うんだけど、ここ!個人的には納得いかないのよねぇ
自分の寿命を悟ったことで、夫を許したのか?それとも本当に愛していたのか?映画だから、美談にしちゃったんじゃないの?と穿った見方をしちゃった私。
まあ、男女の仲は当人同士しかわからないけどね。本当のところはどうだったのか、ちょっと知りたいかも。
元妻が病に倒れ、駆け付けた父親を娘は許し、感謝祭には来てね、と親子の絆は取り戻したのはよかったかな。でも、その矢先の逮捕。やっぱり悪いことをすると神様は見てる!と思い知った場面だったかな。
そう、悪いことは絶対できないんです。必ず罰が当たるってことです。
まとめ
クリント・イーストウッドがしわくちゃのおじーちゃんになっていてびっくりしたけど、実年齢が88歳と聞けば、88歳になって監督と主演が務められることにびっくり!
モデルとなった人物は、麻薬を運んでいた運び屋だったけど、そこだけにフォーカスしてなくて、タタに親近感を感じたり、勇気をもらったり、応援したくなったりするハートフルな要素もあり、歳を取っても何か使命感を持つことが元気でいる秘訣なんだな、と感じた拓品でしたね。
もちろん、麻薬の運び屋なんて仕事は、絶対に手を出しちゃいけないことだけどね。
クリント・イーストウッド、88歳にして尚健在!と存在感を改めて感じた作品でもありました。
こちらでは、映画のモデルになった「レオ・シャープ」を掘り下げてみましたので、ご興味がありましたら是非!