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Netflix「オロトゥーレ」ネタバレ感想|身もふたもない結末に意味がある

新作ってことでNetflixのオリジナル作品「OLOTURE オロトゥーレ」を鑑賞。

個人的には多分、初のナイジェリア映画鑑賞だという記憶ですが、実はナイジェリアって映画大国で1年間に数千本もの作品が制作されるそうで、ハリウッドの数字を超えて世界一なんですって。

アメリカ映画が「ハリウッド」、インドは「ボリウッド」、ナイジェリアは「ノリウッド」と呼ばれているんだそうです。ボリウッドは聞いたことあったけど、ノリウッドは初耳でした。

そりゃあ、ハリウッド映画のような予算はないだろうし、脚本も荒っぽいけど、フィクションとは言え日本に住んでいると絶対に知り得ない人身売買の闇を知ることができたように思います。

それでは、感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。

作品概略

原題:Oloture
製作年:2019年
製作国:ナイジェリア
キャスト:アダ・アメ、ビバリー・オス、ブロッサム・チュクウイェクウ
監督:ケネス・ギャン
脚本:クレイグ・フライモンド、インカ・オグン

ざっくりあらすじ

ナイジェリアのラゴスで人身売買の裏側を暴露するために、女性ジャーナリストが取材のために売春組織に潜り込む。

そこで親しくなった女性から人身売買組織についての話しを聞き、自分もヨーロッパに渡らせてほしいと組織に願い出る。

同じ社に勤務するジャーナリストの男性と定期的に連絡は取っていたが、様子がおかしいことに気づき「もう終わりにしろ」と言われるが、耳を貸さず更に深く潜入したエヒの身に起こったことは・・

感想

感想にはネタバレも含まれます。

潜入取材

人身売買の実態を取材するために、ジャーナリストのエヒは売春組織に潜入。

クラブや道で男たちに声を掛ける娼婦たちに交じって商売をしている風を装うんだけど、太って汗ばんだお客が付いちゃった!

部屋の中で二人きりになったエヒは、さてどうする?

でもさ、そんなワールドに潜入するってことは、そうしたこともあり得るわけで、警察官でもなく単なるジャーナリストの正義感からだとしたらあまりに危険すぎますよね。

若気の至り、若さの暴走としか考えられない!

所属している社が潜入を認めたってのもびっくり仰天ですけどね。

大物が集まるパーティ

そんな危ない橋を渡りながら、エヒはヨーロッパに行く日を夢見てお金を溜めている売春婦のあとをつけて、元締めを探り出します。

その元締めの女がいわゆる「やり手ばばあ」で、大物が集まるパーティに女性たちを派遣する商売もしていたわけ。

そのパーティに派遣する女性の中にエヒも選ばれ、ある大物政治家に気に入られ、薬を盛られて強姦されてしまいます。

ほらーーー、やっぱり危ないじゃん。

定期的に連絡を取っている同じジャーナリストのエメカが、エヒの様子がおかしいことに気づき、もう潜入取材は止めるように言うんだけど「まだまだ世の中に知らせたいことがいっぱいある」とエヒは潜入取材をやめないんですね。

自分の身が危険に晒され、実害もあったというのに、自分を守ることより正義感が勝るのはどうしてなのか?それが私には全く理解できない。

何が大事って、自分自身でしょ?

そんなことが起こる前に、エヒは母親に会いに実家を訪れているんですね。

大きな家でエヒにお腹がいっぱいでも料理を食べて行けと娘を思う母親。エヒは多分、そこそこ裕福な家に生まれ、職業もジャーナリストなんだからきちんと教育も受けたんだと思います。

事件後も実家に立ち寄り、母親の姿を見るだけで声を掛けず、寮に戻っちゃうんです。どうして戻っちゃうんだろ??

ま、お母さんに泣きついて実家に戻り、潜入取材をやめてしまったら物語が終わっちゃいますけどね。

でも、ジャーナリストがそこまでの危険を冒すこと、散々な思いをしても尚続けることに無理があるようには感じます。

いざ、ヨーロッパへ

大金を支払い、組織の指示に従って旅立つ日がやってきます。

エヒの友人は、田舎から妹も呼び寄せて、新しい人生に夢を持っているんですね。それをぶっ潰す出来事がある。

女性たちを斡旋することを商売としている組織の奴らは、血も涙もなく、彼女たちを商品としか考えていないから、ヨーロッパに渡ってからすぐに商売ができるよう様々なことを教え、彼女たちを容姿や経験からグループ分けをします。

ケータイも取り上げられて、外部とは一切連絡が取れないようにしちゃう。

恐怖心から従わざるを得ないように仕向けちゃう。もうね、見ていて辛いんです。エヒとその友人は、ヨーロッパに渡ってからも同じような仕事に就かされることはわかっている様子。

それでもヨーロッパに渡る決心をした女性たちは、今よりいい生活がしたいと望んでいるわけです。

同じ人として女性として生まれたのに、国や環境や時代やいろんなことが違うと、過酷な人生を送らなくちゃならないこともあって、自分がよかれと思って選択したにも関わらず、悪の手に落ちてしまうと抜け出すことが難しいことを感じます。

以下、ラストのネタバレを含みます。

身もふたもない結末

ヨーロッパに渡れる!という組織の言葉を信じて大金を払って移動のバスに乗り込んだ女性たち。その中にエヒもいます。

エヒは同僚のエメカに助けを求めたものの、エメカがことの顛末を訴えた警察からは、夜が明けなければ動けないと言われ、夜が明けてから組織の潜伏先と思われるところへ行ったものの、すでにもぬけの殻。

そこでエメカは、港に向かいエヒを探しますが、見つけられません。

その頃エヒは、偽のパスポートチェックが終わった移動のバスの中。

パスポートチェックの場所には長蛇の列ができていたものの、組織の人間がバスに乗せた女性たちのパスポートを持ってそこへ行くと、お得意さんが来たからと列に並ばず手続きをします。

ということは、そこにも組織のお金が流れて買収されてるってこと。

エヒは、ヨーロッパへ渡る組織のことを教えてくれた友人の妹ともに、見張りの目を盗んで逃げだすんだけど、ヘルプの声を上げても助けてくれる人はいません。

追手に捕まりバスに戻され、手続きが終了したバスは静かに出発します。

監督の思い

身もふたもない結末については、監督自身が「人々に、これが現実であることを知ってほしかった。人生はハリウッドのような結末とは限らず、常にハッピーエンドではない。」と語っています。

作品の最後に、アフリカでは人身売買によって年間1億5千万ドルもの利益がもたらされている事実がテロップで流れます。

ナイジェリアからの人身売買被害者は、91%が女性であり、密売人が半数以上を性的に搾取していると推定されているそうです。

外務省のHPによると、ナイジェリアの2018年の一人当たりの国民総所得は1,960米ドル。20万円ほど。GDPはアフリカ第1位。

それでも、貧富の差が激しくて貧困層から抜ける夢を見て、ヨーロッパへ渡ることを望み新天地での新しい生活に思いを馳せてお金を溜めていたのに、いざ蓋を開けてみたら奴隷とも言えるような扱いが待っていたら、もう絶望しかありません。

奴隷制度はなくなったという認識で暮らしているけど、そんな現実が、今でも地球上には存在するってことです。

まとめ

遠いアフリカにある国ナイジェリアのそうした実情を知って、日本にいる私たちに何ができるっていうの?とは感じます。

だけど、何事も最初にすべきは「知ること」かな、と思っています。

ナイジェリアの人身売買対策を担当する法執行機関である国家人身売買禁止局(NAPTIP)は、Netflixにアクセスできない農村地域の人々がこの映画を鑑賞できるようにしたいと考えています。

CNNより

確かに、ヨーロッパに渡る夢を見てお金を溜めていたにも関わらず、騙されて人身売買の罠に落ちてしまった女性たちを増やさないためには、その対象になり得る可能性のある多くの女性たちにこの映画を観てもらえば、被害者の減少につながるかもしれません。

明るい色彩で描かれている今作は、最初は全く暗さもないし、陽気なスタートだったので、こんな闇を見るとは思ってもいませんでした。

闇を見て自分の幸せをかみしめるのは不謹慎かもしれないけど、様々な問題があったとしても今の日本は平和だし、コロナ禍にあっても清潔で秩序正しい社会が存在します。

感謝を忘れちゃなんねぇな、と痛感しました。

映画って、ホントいろんなことを学び、いろんな世界を見せてくれます。

私が洋画好きなのは、日本にいて見えない世界を見せてくれて、触れられない世界を身近に感じさせてくれて、知らない世界に連れて行ってくれるからかな。

いやー、ラストは重かったけど、映画館では決して観られないだろうナイジェリアの映画を観れたことだけでも価値はありましたね。

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