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Netflix映画「7月22日/22July」のネタバレ感想|ノルウェー・ウトヤ島で起きた事件

2011年にノルウェーのウトヤ島で起きた事件を、私はすでに忘れていました。身近に感じないほど、遠い国の事件だったからでしょうか。

映画「7月22日/22July」では、事件の凄惨さ、理不尽さ、持って行き場のない怒り、世の中で起こりうる事の矛盾・・などなどいろんなことを感じました。

はっきり言って、ものすごく重いです。そして、映像も冬のノルウェーが映し出されるため、暗いです。放送時間も140分強と長いです。

でも、観るべき作品だと思います。

人の価値観や物事に対する感じ方は違ってあたり前だけど、人としてこの世に生まれた価値は、全ての人が平等だと思っています。

だけど、育っていくうちに、様々な環境や教育や情報に晒されて、その人独自の考え方が培われていきますよね。それを個性とも言います。

何を基準に正しいとか間違っているとか判断するのか?その一つに「法律」があると思います。

でも、この作品ではその「法律に守られた平等」に対しても、理不尽さを感じずにいられません。

日本は島国なので、移民問題がアメリカやヨーロッパほど話題になることはないけど、これからの日本はどうでしょうか?他の国の出来事、と無関心ではいられないかもしれません。

この映画を観た感想を上手く伝えられるほど、ボキャブラリーも豊富じゃないし、自分で表現できる範囲を超えた作品だとは感じだけど、感想を書かずにいられない作品でもありました。

あらすじや感想にはネタバレを含んでいますことをご了承くださいね。

Netflix映画「7月22日/22July」概要

2011年7月22日、ノルウェーのウトヤ島でおきた銃乱射事件を基に、被害にあった少年の回復過程を追いながら、犯人が裁判で証言台に立つまでを描いています。

マット・デイモン主演のジェイソン・ボーンシリーズを手掛けた、調査専門ジャーナリスト出身のポール・グリーングラスが脚本・監督を務めた長編作。

同じノルウェーの事件を扱った「ウトヤ島、7月22日」が、2019年3月に劇場公開されています。

扱った事件は同じですが、Netflixのオリジナル作品の方は、事件の詳細を追うというより、事件が起こった後の被害者や加害者、その関係者にフォーカスしています。

2011年7月22日にノルウェー・ウトヤ島で起こったこととは?

画像引用元:IMDb

2011年7月22日、午後3時17分にノルウェーの首都「オスロ」にある政府庁舎前で、白いワゴン車が爆発。ワゴン車だけでなく、周りのビルまで破壊するほどの威力で8人が死亡。

同じ日の午後5時過ぎ、オスロから40キロ離れたウトヤ島で銃乱射事件が発生。

その時、ウトヤ島でサマーキャンプに参加していたノルウェーの労働党青年部の若者たち69人が射殺され、負傷者は200人以上に及んだ。

実行犯は、積極的に移民を受け入れていた政府に対して反感を抱いていた、当時32歳のノルウェー人「アンネシュ・ベーリング・ブレイビク」

裁判の結果、ノルウェーには死刑制度がないため無期懲役が決定し、現在もオスロ近郊の刑務所に服役中。単独犯としては、現在世界最大の大量殺人犯。

Netflix映画「7月22日/22July」あらすじ

その1 犯人ウトヤ島へ向かう

画像引用元:IMDb

森の中で、ひとり爆弾を製造しているアンネシュ・ベーリング・ブレイビク。爆弾を積んだ白いワゴン車を政府庁舎前に停め、導火線に引火し、違う車に乗り換えてその場を立ち去っていきます。

ジリジリと燃えていく導火線。いつ爆発するのか、気が気ではありません。

監視カメラで不審車を発見した職員が、確認するよう他の職員に無線で指示を出し、それを受けた職員がナンバープレートを覗き込んだ瞬間、ボンッ!周りのビルにも引火するほどの勢いで爆発します。

一瞬にして凄惨な現場と化した爆発現場。

警察の制服を着たアンネシュ・ベーリング・ブレイビクが、車で次に向かった先は、フェリー乗り場。

爆発事件を受け、フェリーは運航を停止していたのに、ウトヤ島の安全を守るために派遣された警察官だと言い、ウトヤ島に向かっちゃうわけです。

でも、どんな場合でも警察官が単独行動ってないですよね?ダメ!そいつを乗せたらダメだって!と思いながら観ちゃいます。

そんな思いが届くはずもなく、アンネシュはウトヤ島へ。迎えに出たウトヤ島での責任者に「身分証明書を」と提示を求められると、カジュアルに「ヤー」と言いつつ、無情にも二人を射殺。

そうか・・自分に都合が悪い人が現われたら、躊躇なく引き金を引いてしまうのね、とこれから起こるかもしれないことに、やや気持ちが暗くなります。

その2 ビリヤル負傷

画像引用元:IMDb

ひとりでウトヤ島に乗り込んだアンネシュは、狂気の沙汰としか思えない乱射を繰り返し、キャンプを楽しんでいた子供たちが森の中で次々と倒れていきます。

キャンプに参加していたビリヤルは、弟:トリエや友達と海岸の岩陰に隠れるんだけど、結局見つかって5発も打たれてしまいます。

撃たれた兄に寄り添い、その場を動こうとしない弟:トリエに「行け、逃げろ」と。負傷した兄も、兄を置いて逃げなくちゃ自分が撃たれてしまう弟の立場も辛すぎます。

島にやってきた警官にビリヤルは救助されますが、その警官たちが島に到着するまでが、実にヤキモキするんです。

乗り込んだボートのエンジンが、なかなかかからない!どうして保守点検をしておかないのっ?!とイラつきます。

しかも、飛ばせるヘリがない!って、何とかして!と、ここもイラっとします。

後日、被害者の親族に、ノルウェーの大統領が初動に不手際があったと謝罪していました。

その3 ビリヤルの具合と壮絶なリハビリ

画像引用元:IMDb

病院に担ぎ込まれたビリヤルは、心肺停止の状態。脳には弾痕の破片が残り、手術をしても全てを取り除くことができませんでした。

こん睡状態が続いたものの、奇跡的にビリヤルは意識を取り戻し、足や腕も負傷していたものの、歩けるようになるまで回復していきます。

こん睡状態の中、同じようにウトヤ島のキャンプに参加していて、姉を亡くしたララがお見舞いに来るんだけど、もう犯人に対して不信感マックスな私は、ララも犯人の回し者じゃないか?と疑ってしまいました。

でも、そうではなくて、ビリヤルは回復し、裁判で証人台に立つまで、ララの存在に助けられます。

同じ痛みを経験した人の助けは、多くの言葉を必要としない、ということを改めて感じます。

その4 アンネシュの弁護士

画像引用元:IMDb

ノルウェーは死刑がなく、あらゆる面で平等な国、という印象ですが、捉えられた大量殺人犯アンネシュも、人としての権利を平等に有しています。

自分で選んだ弁護士を呼び、取調室では宅配のピザを食べています。

だからこそ、日本における日産のゴーン元会長の逮捕されてから釈放までの扱いが、国際的に問題視される側面があったのも、なんとなぁーくうなずけますよね。

と、話しは逸れてしまいましたが、私ならアンネシュの弁護を引き受けたくないなぁと思うけど、指名された弁護士は淡々と「心神耗弱により、責任能力なし」という方向性でアンネシュの弁護をすすめます。

プロ意識を感じましたね。

ところが、最初は「心神耗弱により、責任能力なし」という方向性に賛成したアンネシュが、自分の主張を世の中に知らしめたいからと、犯行を全面的に認めて裁判に臨むと言ってきます。

アンネシュにとって、自分の犯した罪は誇りであって、世の中にその功績を讃えてくれる人が大勢いる、と信じている自己顕示欲の塊みたいなヤツです。

だからこそ、自分で指名した弁護士に「自分の弁護をすることは名誉だ」とか精神鑑定医に対しても「世界中の精神科医がうらやましがるだろう」と言い放つ。

こういう不愉快な発言をする勘違い野郎は周りにも、ネットの世界にもいます。関わりたくないタイプです。

だけど、その自信は一体どこから来るんでしょう?

その5 アンネシュの母

もしかして、アンネシュの孤独な犯行の一因はここにあるのか?と私が思ったのは、弁護士が母親のところにやってきて、証人として裁判に出廷してほしい、と頼んだところ、NOと断るんです。

「私が証人席に立てば、私のことが世間に知られてしまう」と。

えっ?!耳を疑います。

多分、お母さんは息子の窮地、そこに至るまでの思いより、自分の現在の立場の方が大事だったんですね。

そりゃあ、お母さんにも生活があるし、誹謗中傷の嵐の中に立たされることになるだろうけど・・親として息子を弁護したいとか、役に立ちたいとか、世の中にお詫びをしたいとか、そんな気持ちにはなれなかったんだな、と感じました。

子どもは、親の行動や思いを、大人が感じている以上に見て真似し、いいことも悪いことも吸収していきます。いつも一緒にいた母親の考え方に影響は受けていたはず、と感じました。

その6 証人になった極右の人物

弁護士が、もうひとりアンネシュ側の証人として出廷をお願いしたのが、アンネシュが憧れていた極右の人物。

だけど、証人台に立ったその人物は、アンネシュの犯行を自分たちとは全く関係ないひとりの暴走みたいなことを淡々と言ってのけるわけです。

それを聞いていたアンネシュ。非常に孤独です。憧れていたからこそ、ガツンと頭を殴られたかのような気分だったことでしょう。ちょっとざまーみろ!でしたね。

その7 ビリヤル証言台へ

画像引用元:IMDb

ビリヤルは片目の視力を失い、弾痕の破片が残っていることで常に頭痛に悩ませられ、歩けるようになったとは言え、まだ少し足を引きずっています。証言台に立った彼を見て、アンネシュは何を感じたでしょう。

自分の犯行に誇りを持っていたものの、極右の人物に突き放され、そしてビリヤルの「僕には家族も友達もいる。希望も愛もある。だけど、あの人はひとりだ」という言葉に、アンネシュの表情が変わっていきます。

ビリヤルの人生は、事件によって一変したけれど、周りの助け、自分の強さで人生を取り戻しています。

だけど、自分の行為に誇りを持っていたアンネシュは、残りの人生を刑務所の中でただひたすら孤独に耐えながら終えることになります。そこには愛も希望もありません。

感想

ひとつ私が気になっていたのが、弟の存在。目の前で兄が撃たれ、そのままにして自分は逃げなくちゃならなかった事実を受け止めきれないのではないか?と。

事件後、弟:トリエは口数が少なくなり、兄との接触も避けているように感じました。

そんな弟を気遣い、ビリヤルは「何か心配事がある?僕のケガで両親が僕にかかりっきりになって、寂しい思いをさせてごめん」みたいなことを言うんですね。自分だって辛いのに・・ここは泣けてきます。

トリエは、それでも「大丈夫」と何も言いません。

だけど、裁判所で証言の順番を待っている緊張した面持ちの兄を見て、「大丈夫?」と声をかけ、ぎゅっとハグをして「ありがとう」と一言。ここ、号泣でした。

きっと、自分の心の中にあることを言葉で説明できるほど大人にはなっていなかったんだろうけど、それでも「ありがとう」のひと言にトリエの気持ちの全てが込められていたのだと思います。

兄は自分を助けてくれた、守ってくれた、そして気遣ってもくれている、と。個人的には、長い長い物語の中で、ここがイチバン沁みたシーンでした。

画像引用元:IMDb

ビリヤルの友人ララも証言台に立ちますが、ララの一家は移民。戦争のない平和なノルウェーに来て、安心して暮らせると思っていたら、このような事件に巻き込まれたと語っていました。

日本でも1995年にオウム真理教による「地下鉄サリン事件」が起こっています。

20年以上が経過し、記憶も薄くなってきていますが、いつでもどこでもこうしたことが起こりうる世の中だということを忘れちゃいけないと感じました。

ノルウェー事件の犯人:アンネシュは組織に属してるわけではなく、ネットに声明を流したり、ネットで極右の情報を収集したりと孤独だった様子。

オウム真理教の信者たちも、非常に狭い世界で生きていましたよね。

ひとつの思想や狭い世界での活動ではなく、広く物事を知り、広く人と関わり、たくさんの意見を聞き、たくさんの人と意見を交わしあい、いろいろな考え方があるという事実を知ることはとても大事かな。

長々と綴りましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。いつまでも平和な日本でありますように。

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