2020年1月に公開予定のアトランタオリンピック公園の爆破事件の容疑者にされた実話を基に描いた「リチャード・ジュエル」
実話を基にした映画は大好きなので、鑑賞前に実際はどんな人物で、本当は何があったのか?そして、それにまつわる話が知りたくて調べてみました。
つい最近観た「テッド・バンディ」は犯人であるにも関わらず、頑として無罪を主張していたシリアルキラーだったけど、リチャードは無罪なのにマスコミとFBIによって容疑者にされてしまった人物。
起訴はされていなかったものの、マスコミの餌食となって私生活は滅茶苦茶にされちゃったわけです。
1990年代ならSNSは今ほど当たり前になっていなかったけど、そう言えば少し前の「煽り運転事件」でも男と一緒にいたガラケーで撮影していた女を間違って特定したSNSがあっという間に拡散して大きな問題になりましたよね。
媒体は違っても同じことだし、間違った情報は相手の私生活を破壊する行為。怖いわぁ
では、リチャード・ジュエル本人と新聞記事にリチャードを容疑者として書いたキャシーという女性記者について書いてみましたので、参考にしてくださいね。
作品概略
原題:Richard Jewell
製作年:2019年
製作国:アメリカ
キャスト:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル
監督:クリント・イーストウッド
原案:マリー・ブレナー
脚本:ビリー・レイ
製作:クリント・イーストウッド、ティム・ムーア、レオナルド・ディカプリオ他
この映画は、爆撃の事件とジュエルの中傷を記録した1997年のバニティフェア(アメリカ合衆国でコンデナスト社が発刊する雑誌)の記事に基づいています。
リチャード・ジュエル本人
1962年12月17日にバージニア州で生まれ、4歳の時両親が離婚。その後、母親の再婚相手の養子となる。
1996年にアトランタオリンピックが開催され、リチャード・ジュエルはそこで警備員として働いていた。
1996年7月27日リチャードは、オリンピックのインフラ改善の一環として構築されたダウンタウンにあるセンテニアル・オリンピック公園のベンチの下に、不審なバックパックを発見。
ジョージア州捜査局に知らせ、周囲にいる人々に退去するよう促したが、数分後にバックパックの中にあった爆弾が爆発し、2人が死亡、100人以上が負傷してしまう。
初期のニュース報道では、不審な荷物を発見し、避難を支援したヒーローとして称賛されたものの、その3日後には、犯罪プロファイルに基づいて犯人像に非常に近いという理由でFBIが彼を容疑者として扱う。
その後数週間にわたり、ニュースメディアは、疑わしい人物としてリチャードに注目。
メディアは、リチャードがヒーローになるため、世間の注目を集めるために、爆弾を仕込んだ可能性があるもののその計画は失敗した、という方向性の報道をした。
起訴はされなかったが、「メディアによる裁判」を受けたことで、彼は私生活や仕事に大きな打撃を受けた。
12週間後にリチャードの無罪がわかり、真犯人エリック・ルドルフが逮捕。
無罪後も事件は終わっていない
免罪後、リチャードは、主にNBC NewsとThe Atlanta Journal-Constitutionに対して訴訟を起こし、正式な謝罪を主張。莫大な和解金の多くは、弁護士と税金へ行くことになった。
そして、以前の雇用主であったピエモンテ大学、ピエモント大学の学長レイモンド・クリールおよび大学の広報担当者スコット・ローレスに対しても訴訟を起こした。
リチャードの弁護士は、レイモンド・クリールがFBIに電話をし、アトランタの新聞に話を持ち掛け、リチャードに対する誤った情報を伝えたと主張。ピードモント大学とは、非公開ながら和解金で決着。
1997年7月23日には、記事、写真、編集漫画で「奇怪な雇用歴」を持つ「異常な人物」としてリチャードを描写したと主張し、ニューヨークポストを1500万ドルの損害賠償で訴え、非公開額で決着。
2006年にジョージア州知事のソニー・パーデューが、ジョージア州を代表して人々の命を救ったジュウェルに、公の場で感謝の意を表す。
2007年8月29日、糖尿病の合併症で心不全により44歳で亡くなるまで、ジョージア州メリウェザー郡で副保安官として働き、大学ではスピーチも行っていた。
リチャードを最初に容疑者と書いた女性記者キャシー
(GSN) The film Richard Jewell tells the story of the security guard wrongfully treated who saved thousands of lives. Kathy Scruggs, a journalist for The Atlanta Journal-Constitution was the first to publish that the FBI was treating Jewell as a suspect and not a hero. pic.twitter.com/w7wMTupDz2
— HJ (Hank) Ellison (@hjtherealj) December 12, 2019
映画は、オリビア・ワイルド(向かって右)が演じているアトランタ・ジャーナル記者キャシー・スクラッグス(向かって左)についての論争を引き起こした。
キャシーは、最初にリチャードが容疑者であると述べたジャーナリストだった。
ワイルド演じるキャシーは、FBI捜査官トムにセックスと引き換えに容疑者の名前を明かすよう取引を持ち掛け、ホテルに部屋を取るか、車に戻るかを尋ねるものの 2人が行為に至ったところまでは描かれていない。
しかし、同紙の現在の編集長ケビン・ライリーは、そのような取引が行われた証拠はない、青天の霹靂であると述べている。
アトランタ・ジャーナルは、12月9日に公開された映画の中でのワイルドが演じているキャシーの描写について、正式に不満を述べた。
キャシー役のオリビア・ワイルドは
「1990年代に南部で女性記者に挑戦する、多くの人が応援し、賢く、揺るぎなく大胆不敵で恐れることのないキャシー・スクラッグスという女性の支援役を演じるよう求められていた」
と語っている。
キャシーは、2001年に処方薬の過剰摂取により死亡。事故か自殺かはわかっていない。
尚、映画の中でリチャードを捜査しているFBIエージェントとしてジョン・ハムが演じているトムと、イアン・ゴメス演じるダンは、実在の人物に基づいたものではない。
リチャードは、キャシーとその新聞社も訴えたが、彼の存命中に裁判の判決は出ず、長年かかったのち裁判所はキャシーの記事は、当時知られていたことを正確に報告していると判断した。
だけど名誉棄損で訴えられたキャシーのストレスは大きく、亡くなる1年ほど前からはかなり健康状態が悪かったと伝えられている。
映画の感想
犯人から「爆弾を仕掛けた」という予告電話が入っていて、もし仮にリチャードが班員だとすると、彼が目撃されている場所から使用したとわかっている公衆電話までの距離を、徒歩のみならず、バイクでの移動だとしても不可能だとFBIはわかっていたんですね。
なのに、共犯者がいるに決まってる、という前提で家宅捜査を強行。これといった証拠は、挙がってきません。
プロファイルによって導き出された犯人像に近いこと、大学の学長から、大学で働いていた間、リチャードの普通ではない行動に対する告発電話があったことの2点から、FBIはリチャードを容疑者としています。
そう、確たる証拠はなかったんです。
それなのに、捜査官はキャシーにネタをバラしちゃってる。しかも、キャシーは自らの功名心と他社を出し抜きたい一心で、確定していないのに実名入りでリチャードを容疑者として記事を書いてしまいます。
不運が重なったともいえるけど、その不運は人が作ったことによるもの。
捜査官がもう少し職務に忠実だったら、正義感が強かったら、キャシーが記事にする前にもう少し事実を検証していたら、大学の学長がもう少しリチャードの本質を見極められていたら、きっとこんなことにはならなかったはず。
残念です。
人は、人の不幸が好きだったりもして、マスコミはそれをよくわかってる。
だからこそ、煽るような記事を書くわけだけど、それによって標的になった人がどんな境遇に貶められるか、ってことを想像していないように思うんです。
残念です。
ただね、リチャードは太り過ぎ。デブは、いじめられるターゲットになりやすい。その大きな理由は、病気でもない限り、デブは自己責任だからです。
センテニアル・オリンピック公園の警備で、若者に注意をしたときも、デブを弄られていたし、マスコミの扇動記事に対する人々の反応もやっぱりデブなことが指摘されているんです。
自分をしっかり管理できないってことは、生活全般がだらしないと取られても仕方ない。もし、リチャードがデブじゃなかったら、人生変わっていたかもしれません。
そうは言ってもリチャードが悪いわけじゃないし、彼が爆弾を見つけなければもっと被害は拡大していただろうし、本当はヒーローだったのに、いい加減な人たちによって苦しい思いをさせられたのは事実。
そんな中、リチャードの日頃の優しい行いが一点の光明をもたらしたと感じたのが、弁護士との出会いです。
きっと彼を信じて共に戦ってくれる弁護士のワトソンがいなかったら、FBIの汚い手口に巻き込まれていたかもしれません。
まとめ
無罪がわかって解放されたとしても、心の傷や破壊された私生活、失った人間関係、何もなかった時と同じようには修復できません。
事件後にリチャードはたくさんの訴訟を起こしますが、それでも失った平和に続くはずだった生活や時間は戻ってきません。
助けたのに犯人に間違われるなんて、どんなに悔しかったでしょう。
ただ、女性記者キャシーについて、映画の中で真実ではないことが描かれているとして、そこが論争になっているようですが、リチャードもキャシーも今は亡き人。本人たちから本当の話しが聞けないのは、少し残念な気がします。
でもね、こうした映画が出来て、少しでも多くの人が観ることによって、事件に対する興味が沸けば、リチャードが無実だったことを知るきっかけになる。
もしかしたら、煽情的な当時のニュースは知っていても、無実だったことまで関心を寄せずに知らないままでいた人や忘れちゃってた人がいるかもしれないものね。
そして、根拠がないこと、人から聞いたこと、曖昧なことは、安易に拡散しちゃいけないんだ、と多くの人が感じてくれたらラッキーだな。
映画がその一助になれば、映画ファンとしては嬉しいかな。そして、キャシー側の映画ができたら、それはそれでかなり興味深いかも、と感じました。