Netflixのオリジナル作品の中でもお気に入りだったドラマが4か国同じ設定の尋問室で繰り広げられる「クリミナル」
イギリス編のシーズン2が配信されました。待ってましたっ!嬉しいです。
各国がそれぞれに制作しているのかと思っていたら、制作しているのはイギリスの会社で、撮影場所はスペインだそうです。
シーズン1はどれも3話でしたが、イギリス編のシーズン2は全4話。今回も全ての話しにどんでん返しがあり、目を離せません。
というか、しっかりと目を見開いて字幕を読んでいないと、あれ?ってなっちゃうかもよー。
それでは感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。
作品概略
原題:Young Wallander
製作年:2020年
製作国:イギリス
キャスト:キャサリン・ケリー、リー・イングルビー、ロチェンダ・サンドール
監督:ジョージ・ケイ
原作:ジョージ・ケイ、ジム・フィールド・スミス
クリミナルシリーズは、ジョージ・ケイとジム・フィールド・スミスによって考案され、彼らの会社「イディオランププロダクション」によって制作。イギリスに拠点を置いているが、4か国のシリーズはすべてスペインのマドリードの同じセットで撮影。

感想
第1話:ジュリア
教え子を殺害した罪で服役中の殺人犯の妻:ジュリアに質問していた中、ジュリアの発言に矛盾を感じた捜査官が色めき立ちます。
もうひとりの教え子:ルカが行方不明になっていることから、もしかしたら同じように殺害されてしまったのでは?と、ジュリアが呼び出されたわけだけど、質問している捜査官:ヴァネッサと話をしている中で心を開いていったと思われます。
雑談をしていて「みんなが革ベルトで殺人を犯すわけじゃないし、革ベルトで後ろから首を絞め、身体が真っ赤になることなんてそうあることじゃないし」と言い始めるんですね。
だけど、そのことは犯人と病理報告書にしかない情報。
彼女は、夫の犯行現場にいなかったはずなのに、何故、ジュリアが知ってる?
服役中の夫は、一貫して殺人は犯していないと言っている。さて、ジュリアはどうなるのか?真犯人は?ってことですよ。
夫宛てのメッセージを読み、それを全て削除したジュリアは、その行為を夫に対して「私は全部知っている」というサインだったと言っています。そして、夫の恋心に対して「恥ずかしい、媚びていてみっともない」と泣きながらヴァネッサに話します。
男子生徒に恋をしてしまった夫から相手にしてもらえない不満が、ジュリアの中に充満していたことが垣間見えます。
全く事件の外にいたジュリアが、ぽろっと口走ったことで事件はひっくり返るんだけど、そこが重要なんじゃなくて、そこに至るまでの経緯、ぽろっと言ってしまったジュリアの心理、それからの捜査班の動きが実に興味深いわけです。
みんな経験があると思うけど、ひとつウソをつくとそれを覚えていなくちゃならないし、それに関わることについてウソを重ねなくちゃならなくなったりしますよね。
そうなってくると、自分が何を言ったのか、覚えていられなくなったりもするし、ウソをついている後ろめたさも生じるし、ふっと気を抜いたときに本音を言ってしまうこともあるわけです。
経験したことはないけど、多分、普通の人だったら殺人を犯したあとに、平常心で今までと同じ生活は送れないと思うんですね。
ジュリアは、取調室に入ってきた時こそ特別に変わったところはなかったけど、心のどこかに楽になりたい気持ちはあっただろうな、と。
第2話:アレックス
部下の女性:サラからレイプで告発されたアレックス。十分な証拠はなく、サラから訴えられ、サラの友人とのラインのやり取りがアレックスに不利な証拠として挙げられていました。
アレックスは、同意の下だった、最初に誘ったのはサラだったと言い、サラはアレックスからキスをされ押し倒された、と言っているわけ。
アレックスとサラの間だけでなく、こうした密室で行われることは、誰も見ていないわけで立証しにくいだろうと思われます。
アレックスに不利なのが、サラと友人クレアとの間で交わされたラインのやり取り。
だけど、そこにはあるからくりが潜んでいます。
さて、アレックスとサラ。どちらの言い分が正しいのか?
同意の下なのか?それとも被害者と加害者になってしまうのか?男女の仲ってのは、少々ややこしいもので、本来、同意の下に行われたはずだったのに、女性のプライドや尊厳を傷つけたことによって男性が被害者の立場に置かれてしまうこともあり得ます。
どうぞお気をつけあそばせ。
第3話:ダニエル
第3話はかなり複雑です。
小児性愛者を暴くネットグループ「ペスティサイド」の創設者ダニエルは、ネットの不正利用で逮捕されていました。
自分のやっていることは正義だと主張し、自分は一切悪いことはしていない、未然に犯罪を防いでいると信じて疑っていないないし、尋問を受ける態度も傲慢。
ダニエルは、いわゆる自警団。ほら、コロナでも「マスクをしていない」ともめごとになったり、「マスクなしで咳をした人がいた」からと電車の非常通報ボタンを押しちゃったり、と言うことがありましたよね。
正義感からの行動であっても、度を超すと人権問題にもなるわけです。
クリスマスや大晦日でも活動しているため、仲間がいると思っている捜査班は、ダニエルから仲間の名前と住所を聞き出したいが、のらりくらりと逃げるダニエル。
何故か?そう、そこに第3話の秘密が隠れています。
ダニエルにも二人の子どもがいたんだけど、実は5年前に福祉事務所に引き取られています。ここにヒント。
彼女は小児性愛者狩りに自分の生活の全てを掛け、育児放棄になっていたんですね。彼女の生活での最優先順位が、自警団の活動になっていたわけです。
しかも5年も経過しているにも関わらず、その熱が冷めていないと言うことはもう精神的に歯車が狂ってしまったとしか言いようがない。
彼女の「ネットの不正利用」によってあぶりだされた対象者は、実は人違いだったというおまけつきです。
ただ、その事実を知ったダニエルの反応が実に怖い。一瞬、人間らしい反応は見せるものの、もう正気じゃないな、と感じさせる発言をします。
第3話は、なかなか奥が深い問題を取り上げていると感じました。
第4話:サンディープ
個人的には第4話が一番面白かったですね。
服役中の殺人犯:サンディープが、行方不明になっているアナベルの事件でも疑われていて尋問を受けるんだけど、それはアリバイが成立して無罪と言うことになる。
だけど、サンディープは刑務所の中で聞いた話の中に、未解決事件の情報があるかもしれないからと、それと引き換えに減刑を要求するんです。
捜査班は、一気にバタバタとサンディープの話しの裏が取れた場合は、要求に応じると文書を作成します。
そして、彼の供述の真偽を見極めるため、サンディープが告白する事件の元担当刑事を呼んで協力を依頼するわけ。
でも、ここからの展開が見事。
第4話は、その展開がキモなので、バラしちゃったら面白くないから内緒にしておくけど、ちょっとできすぎな告白かな、とは思いつつ、見事な結末になっています。
いやー、これこそクリミナルの醍醐味!と感じました。
まとめ
アクションはない、登場人物も少ない、場所も変わらない、ただひたすら会話をしているだけの作品です。
なのに、こんなに興味深い展開を作り出すことができるんだ!と、ハマったドラマです。
長編は難しいかもしれないけど、ドラマ枠の時間内なら予算を掛けなくても、十分面白い作品が作れるってことを証明しています。
脚本が全てだと思うけど、シーズン1しかないフランス編、スペイン編、ドイツ編もシーズン2が出来たらいいのにと期待しています。
同じ会社が作っているとは言え、なんとなくお国柄を彷彿とさせる事件の扱い方が、更にこのシリーズを面白くしていますから。
たまには、静かにじっくりとドラマと向き合うのものですわ。
