Netflixの実話を基にしたドラマ「ボクらを見る目」は、1989年にNYのセントラルパークで起こった「セントラルパーク・ファイブ」という事件が基になっています。
日本では未公開ですが、2012年にもドキュメンタリー映画になっているので、その情報と「セントラルパーク・ファイブ」と、事件に巻き込まれた5人の少年を演じたキャストについて調べてみました。
1話では「Wilding(ワイルディング)」という言葉が出てきますが、これについても知っていた方がよりドラマがわかりやすくなります。
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「ボクらを見る目」概略
1989年にニューヨークのセントラルパークで起こった暴行事件の容疑者として、ハーレムの少年5人が不当逮捕される。それは、長年にわたる悪夢の始まりだった。実際の事件に基づくシリーズ。
「グローリー/明日への行進」などの作品を手掛け、アカデミー賞候補にもなったエヴァ・デュヴァネイが監督。全米に衝撃を与えた事件の真相をつづる。
今作のエヴァ・デュヴァネイ監督は、1960年代のアメリカ公民権運動の中、キング牧師の先導により抗議デモを行った歴史に残る事実を映画化した「グローリー/明日への行進」も手掛けています。
Netflixのオリジナルドラマ「ボクらを見る目」は、1989年にニューヨーク・セントラルパークで起きた暴行事件を題材にして全4話にまとめてありますが、1話が映画並みに放送時間が長く、内容もヘビーなので連続で観るのは覚悟が必要かもしれません。
容疑者として逮捕されたハーレム出身の5人の少年は、逮捕から13年後の2002年に無実が明らかとなり、2014年にはニューヨーク市と和解が成立。賠償金としてひとりに4.500万ドルが支払われたそうです。
エグゼクティブプロデューサーには俳優の「ロバート・デ・ニーロ」も名を連ねています。
2012年のドキュメンタリー映画「The Central Park Five」
日本では公開されいませんが、2012年に同じ事件を調査したドキュメンタリーが「The Central Park Five(原題)」という映画になっています。
この作品は、ドキュメンタリーの巨匠と言われているケン・バーンズが、娘のサラ・バーンズとデビッド・マクホマンと共に共同監督で製作され、ピーボディ賞のほかさまざまなドキュメンタリー賞を受賞しています。
セントラルパーク・ファイブとはどんな事件?
1989年にセントラルパークでジョギング中の白人女性が頭を暴行・強姦され、瀕死の状態で発見されます。
同じ夜、当時ニューヨークの黒人やヒスパニックの少年たちの間で流行っていた「Wilding(ワイルディング)」によって、セントラルパークにはたくさんの少年たちが集まってきていました。
「Wilding(ワイルディング)」とは
黒人ラッパー「トーン・ロック」のデビュー・アルバム「Loc-ed After Dark」から、1989年にシングルリリースされた「Wild Thing」が流行っていたことを背景に、「何かワイルドなことをする」をワイルディングと呼んでいたようです。
実際、当日はワイルディングによって集まった少年が、罪のない一般人に対して暴行を働いていたことから、パトカーがやってきています。
ジョギング中に白人女性が暴行を受けたのとは全く別の事件でしたが、警察は二人の少年を逮捕しています。
その後、ハーレムの黒人やヒスパニックの少年たちに聞き込みをし、白人女性への暴行及び強姦容疑で14歳から16歳の5人の少年を逮捕。
少年たちは、尋問する警官たちによって作られた話を「そのまま言えば早く家に帰れる」と説得され、自白を強要され、しかも確かな物的証拠が一切ないにも関わらず5人は逮捕されてしまいます。
裁判が行われるも、結局5人は収監されてしまいますが、2002年にレイカーズ・アイランド刑務所に別件で服役中だった男が、白人女性に対する暴行及び強姦を自白。
それにより、5人のうち4人が刑期を終えて出所していたものの、2003年に二人がニューヨーク市を相手取り、誣告と人種差別と精神的苦痛で訴えています。
The New York Times に実際の5人の写真が掲載してありました。
5人の少年を演じたキャストたち
アントロン・マックレイ(通称トロン)
カリール・ハリス
2003年4月19日生まれ、アメリカ出身。
青年期のアントロンを演じているのは、ロンドン生まれでアメリカ育ちの俳優ジョヴァン・アデポ。
レイモンド・サンタナ・Jr
マークィス・ロドリゲス
1998年9月17日生まれ、アメリカ出身。好きな食べ物はパンケーキとチーズバーガー、フライドチキンなんですって。ものすごくアメリカン!
レイモンドの青年期を演じていたのは、フレディ・ミヤレス。
ユセフ・サラーム
イーサン・エリセ
2000年9月23日生まれ。
青年期のユセフを演じていたのは、「それでも世は明ける」「ゴッサム」等にも出演している俳優のクリス・チョーク。
ケヴィン・リチャードソン
アサンティ・ブラック
2001年10月20日生まれ、アメリカ・メリーランド州出身。コーリー・ワイズ役のオーディションを受けるも、ケビン役としてキャスティングされました。
青年期のケヴィンを演じているのはジャスティン・カニンガム。
コーリー・ワイズ
ジャレル・ジェローム
1997年10月9日生まれ、NYのブロンクス出身のドミニカ系のアメリカ人。最年長の役柄だったコーリーは、少年時代~青年期までジャレル・ジェロームが演じています。
日本での中学生の頃、母親のススメで地元のリバーデールチルドレンズシアターに参加するようになり、大学に入学したころ、初めての映画出演作「ムーンライト」で主人公シャロンの友人ケヴィン役を演じています。
1話は事件の始まり
少年たちの生活の様子や、家族構成、日頃の様子などから、ワイルディングによってセントラルパークに集まっていくところ、そして警察がやってきて逮捕⇒起訴されるまでが描かれています。
え?まだ子供だよね?強姦という言葉がしっくりこない幼さを残す少年を、警察の取り調べはとことん追い詰めていきます。
1989年といえば、たった30年前。
でも、30年前にはきっと今より、ずっと歴然とした差別が横行していたのかもしれません。今でさえ、白人警官が職務質問しようと呼び止めた黒人を銃で撃ってしまうなんてことが起こるんですもの。
追い詰められた少年5人は、やっていないのに「やった」と言わされ、その様子は録画されていて、証拠として残されるわけです。
なのに、彼ら5人が犯人だという物的証拠は何もない。それで立件できるのが不思議でならないけど、警察も検察も全てが彼らを犯人と決めてかかっているんです。
警官だって、検察の人だって、子どもを持っているだろうに・・・。自分の子が同じ目にあったとしたら、どう思うのだろう?ってことは、考えないんですかね。
しかも捜査の指揮を取っているのは女性警官。もちろん、女性が犠牲になった事件の犯人を挙げて、凝らしめることは大事です。
でも、それは本当の犯人が検挙されてこそ意味があるわけで、とりあえず誰でもいいから世間に言い訳できるよう犯人をでっちあげることではない!ですよね?
と、1話からかなり強烈なインパクトがあります。
5人は今どうしてる?
それぞれ収監期間に違いはあるものの6年~14年もの長い間、無実だったにも関わらず刑務所の中で過ごしていた5人。
2014年にはニューヨーク市と和解が成立し、NYでの最高金額だったと言われている、ひとり4,500万ドルの賠償金が支払われました。
でもね、時間は戻らないし、味わった苦痛も消えないし、一番楽しいであろう青年期に刑務所の中だったわけだから、お金では償えなません。
そして、大人になった5人の少年たちは、今どうしているのでしょうか?ドラマの最後に本人の画像と共に紹介されています。
トロン
6人の子どもに恵まれ、ジョージア州在住
レイモンド
出身地に因んだ「パーク・マディソンNYC」という名の服飾会社を立ち上げ、」ジョージア州で娘と妻と住んでいる。
ユセフ
10人の子どもに恵まれ、ジョージア州在住。執筆や講演活動をしていて、刑事司法制度の改革を主唱。
ケヴィン
娘2人と妻。ニュージャージ州在住。2017年には、ブロンクスアカデミー学校から高校卒業の証書を授与された。
コーリー
2015年にコロラド法律学校に「コーリーワイズ無罪運動」を出資設立し、不当逮捕の無料相談が受けられるようになっている。
まとめ
人のことを差別なんてしてない!と自分では思ってはいても、気づかないうちに人を差別するような発言をしていたり、さりげない行動が差別につながったりする可能性もあるわけで、気を付けなくちゃね。
日本では、あまり人種差別について考えさせられるような報道はないけど、人種だけでなく、人の心の中には、人より優位に立とうとする気持ちが隠れていると思うんですね。
それが差別につながるわけで、ハラスメントも立派な差別です。
今作での5人の少年たちは、演技とは思えないほどの力強さだったので、気持ちがぐいぐいと持っていかれましたね。
人には好みがあるのはわかっているけど、それでも少しでも多くの人に見て欲しいなあと思った作品でした。