ソッ、ソッ、ソフィア・ローレン??!!!!
Netflixでその名を見つけ、半信半疑でチェックしてみたところ、最初に流れてきたキャスト名に「Sophia Loren」とあったので鑑賞を決めた作品。
期待を裏切りませんでしたね。
もちろん、グラマラスでゴージャスだったソフィア・ローレンもおばーちゃんにはなっていたけど、グラマラスなボディは変わってないし、その存在感も衰えていません。
でも、そのソフィア・ローレンをしのいでいたのが、モモ役を演じた少年だったかもしれません。見事です。
1977年にフランスのモシェ・ミズラヒ監督により作品化されたリメイク版でもあり、特筆すべき点はないストーリーだけど、青い空と街の風景、そして役者たちの存在感が見事。
そして、忘れちゃいけないことを改めて感じさせてくれるシチュエーションなどが素晴らしい作品です。
感想にはネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。
Contents
作品概略
原題:The Life Ahead
製作年:2020年
製作国:イタリア
キャスト:ソフィア・ローレン、イブラヒマ・グアイ、アブリル・サモラ
監督:エドアルド・ポンティ
脚本:ウーゴ・チティ
原作:ロマン・ゲイリー
ロシアで生まれ、ポーランドに住んだのち、フランス国民になったロマン・ゲイリーの小説「The Life Ahead」に基づいた作品であり、監督のエドアルド・ポンティはソフィア・ローレンの息子。
1977年にフランスのモシェ・ミズラヒ監督により作品化されたリメイク版。
1965年のソフィア・ローレン主演映画「レディL」は、原作が同様にロマン・ゲイリーによるもの。
今作は、賞シーズンの対象として宣伝のために、Netflix配信の数週間前に限定劇場で上映される予定になっていたものの、コロナパンデミックのため直接ストリーミングに移行。
キャスト
マダム・ローザ:ソフィア・ローレン
1934年9月20日生まれイタリア・ローマ出身。
若い方は知らないと思うけど、若い頃のソフィア・ローレンはスクリーンに登場しただけで匂ってくるかのような華やかさと豪華さと存在感のある女優さんでした。
そんなソフィア・ローレンも今年86歳。当たり前のことなんだけど、大女優も歳を重ねるんだということを実感すると、なんだかホッとします。
多分、テレビの洋画劇場で観たのだと思うけど、個人的に印象に強く残っている作品は「ひまわり」。
今作は、2010年以来の演技になるそうです。役どころは、いわゆる春を売る商売をしていたものの歳を取って引退し、現役の女性たちの子どもを預かって小遣い稼ぎをしているマダム・ローザ。
懇意にしているドクターに頼まれて、セネガルからの移民の男の子モモを預かることになります。
モモ:イブラヒマ・グアイ
どうやら新人俳優らしく、いくら探しても情報が見つからなかったのですが、この子!すごいです。
この作品は、ソフィア・ローレンの存在感とモモの卓越した演技力によって成り立っていると言っても過言ではないと思います。素晴らしいです。
3歳の頃にセネガルから移民としてイタリアにやってきたものの、マダム・ローザと同じ商売をしていた母親はモモが6歳のときに亡くなってしまい、異国の地で天涯孤独です。
その寂しさを紛らわそうと彼の潜在意識が作り出した幻のライオンと楽しそうに戯れるシーンがありますが、マダム・ローザとのかかわりの中でモモは「信頼」や「愛情」を知るようになり、やがてライオンは去っていきます。
最初はとんでもない悪ガキだったんだけど、マダム・ローザと生活を共にすることで変わっていくんですね。
その変わっていく様子、心理的な変化、口数は少ないけど思っていることが想像できる表情。見事です。
ローラ
マダム・ローザに子どもを預かってもらっているローラは、ものすごく特徴的な声をしていて「あれ???」と思っていたら、トランスジェンダーの作家・女優として活躍しているようです。
1981年11月11日生まれ、スペイン出身でスペインドラマ「Vis a vis」にも出演。日本のタイトルは「ロック・アップ/スペイン 女子刑務所」これも面白いです。
陽気なローラは、マダム・ローザとモモの間で押しつけがましくなくとても自然にふるまいつつも、どちらからもなんとなく頼りにされている重要な存在。
すっごくセクシーなのに、かなり野太い声に違和感はあるものの、そういう人たちが増えていけば気にならなくなるのにな、なんて思いながら観ていました。
ざっくりあらすじ
今回、キャスト紹介であらすじまで紹介しちゃった感じですが、ものすごく端折っちゃうと移民の子モモと高齢のマダム・ローザがいろんなことを乗り越えて絆を深める物語です。
その中には、日本人だと知らないこと、知り得ないこと、時代が変わると薄れてきてしまう認識なども詰まっていました。
感想
ヤサグレているモモ
若干12歳で移民孤児のモモ。ヤサグレるなって方が無理な話し。寂しいんだよね。誰か自分を見て!そして褒めて!という気持ちは誰にでもあります。
自分のことを気にかけてくれる人が誰もいなかったら、生きている価値ってあるの?とすら思ってしまいますから。
母親の写真すら持っていないモモだけど、わずかな思い出を大切にしていたりして胸が痛いんですよ。
そんなヤサグレちゃったモモが、ドクター・コーエンの元からマダム・ローザの元へ。そこにはすでに母がいない間、預けられているヨシフという少年がいました。
仲良くすりゃあいいのに、モモはヨシフに喧嘩を売っちゃう。学校にも行っていない二人は、仲良くする方法ってのがわかっていないのかも。
でもね、そこは子供。時間と空間を共有するうちに打ち解けていくわけですよ。微笑ましい。
ヤサグレているモモは、大麻の売人として商売をしちゃう。元締めがいて、モモの商売上手な手腕を認めてくれるんですね。そうなると承認欲求が満たされちゃうモモは、そいつを頼りにしちゃうわけだ。
まずいよねー。
マダム・ローザ
そもそものモモとの出会いが最悪だったマダム・ローザは、ドクター・コーエンからモモを預かってほしいと提案されると、かぶせるように「NO、絶対NO、何が何でもNO」と断りまくります。
もちろん無料ではなく、ドクター・コーエンから養育料を提示され、つかの間悩んで値段交渉をするマダム。
これもご縁なんですよね、きっと。値段交渉をしてしぶしぶ受け入れたとしても、縁がなければモモはそこにいつかないだろうし、問題をおこしたら別の選択肢もないわけじゃない。
ある日、皿洗いのお手伝いをしている時、モモはマダムの腕に数字の入れ墨がしてあることに気づきます。
マダムに直接訪ねることはせず、同居の少年ヨシフに「あの数字は何?」と尋ねると、「マダムはスパイなんだよ。地下の秘密部屋に入るための暗号」と少年らしい答えが返ってきます。
その数字は、アウシュビッツの囚人番号なんですね。
私も映画を観ている時はわからなかったんだけど、調べてみて今でも生存しているアウシュビッツ収容所に入れられたユダヤ人たちには、左腕に同じ入れ墨が残っているという事実を知りました。
モモとライオン
モモの逃避先は、空想と夢の中に出てくるライオン。
辛かったり悲しかったりマイナスな感情になったとき、大きなライオンがモモに寄り添い体を摺り寄せたり舐めたりして彼の気持ちを癒してくれます。
空想のライオンを作り出して接することで、母を失った寂しさや生きているやりきれなさをこなしてきたんでしょうね。
そんなモモはある日、マダムが懇意にしている商店に連れて行かれ、そこでお手伝いをすることになるんだけど、大丈夫かぁ???
その店主は妻に先立たれ、イスラム教徒としての教えをモモにぽつぽつと語るんだけど「余計なお世話!」と全く心には響かなんですね。まあ、無理もないと思うけど。
でもね、その店主はモモをどうにか教育したいと思っているわけ。モモとしてはウザい!だけなんだろうけど、その後、モモが店主の気持ちを理解し謝る場面もあるんですね。
おざなりに接している大人と、本当に自分のことを心配してくれている大人の違いを、子どもは本能で嗅ぎ分けられるのだと感じます。
マダムの病気
自分が何をしているかわからなくなる、どこにいるのかわからず迷子になる、などの症状が出たりして、マダム・ローザの様子がおかしい。認知症なんじゃないか?と思われるんですね。
で、マダムは正気でいるとき、モモに「病院は嫌いなの。酷いことをするし、私たちを実験材料としか思っていない。そうしたら必ず助けてね、信じているから」と伝えます。
これって、収容所に入れられていた経験のトラウマですよね。
モモは自分が信じてもらっていることに心を打たれ、大麻の売人から足を洗うんです。
そんなに簡単に抜けられるのか?とは思ったけど、そこは問題になってなくて、モモは信じて自分を頼りにしてくれた喜びを感じるわけです。
でも、モモがいない時、マダムは救急車で運ばれてしまいます。
だけど、モモは約束を守るため、車いすを用意して迎えに行くんだけど、車の運転ができる年齢じゃないし、どうやって家に帰るのか?と思って観ていたら、ひたすら車椅子を押しながら歩くんです。
帰る途中に美しい日の出を見ることができて、それはモモやマダムの新しい人生を表しているのか?と感じました。
さーーーーてっと、家に戻ったふたりはその後どうなるかな?
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ヤサグレていたモモはどこへいっちゃったのか?と思うほど、献身的にマダムの看護をするんだけど、その甲斐もなく亡くなってしまうんですね。
モモは、生前マダムが幸せだった頃の想い出の場所と似ていると見せてくれた絵葉書に描かれていたミモザの造花をプレゼントします。
「これまでの人生で最高の贈り物だわ」と力なく微笑むマダム。ここ!泣けるんですよ。
マダムは亡くなってしまったけど、そのマダムに信じてもらって頼りにされ、そして自分はマダムとの約束を果たせたこと、プレゼントを喜んでもらえたことが、これからモモが生きていく大きな支えになるはず。
そうした体験をさせてくれたマダムのことを決して忘れないだろうなぁと、泣けるんです。
それもこれも、モモを演じたイブラヒマ・グアイの素晴らしい演技力だと感じました。
見せてもらった絵葉書をモモはそっとマダムを埋葬した墓地に置いていきます。すると遠くにあのライオンの姿が見えたんだけど、ライオンはモモに寄ってくることはなく、その場でしゃがみモモを見つめているだけ。
そのライオンにモモは、心の中で別れを告げたはず。
もう君の助けは必要ないよ、と。
ハードな環境に置かれた少年が、押しつけがましくないマダムと手伝いをしていた店主の愛情によって成長した物語なんだけど、何だろう・・それ以上の価値を感じた作品でした。
最後に流れる曲の歌詞が字幕で流れるので、それも是非最後まで読んでほしい!!くじけたとき、凹んだとき、きっと力になってくれるだろうな、と感じる歌詞です。
ソッ、ソッ、ソフィア・ローレ???という驚きから見始めた作品でしたが、家族での鑑賞におススメの1本です。