2019年2月公開作品でイチバン観たかった、実話を元にした映画「フロントランナー」
私が強く感じたのは、ゲイリー・ハートは男性にありがちな勘違い野郎だった!ということ。
今から30年以上も前の時代に起こったことだけど、そこからたくさんのことを学べるのでは?と思った感想を書いてみたいと思いますが、ネタバレを含みますことをご了承くださいね。
Contents
映画の基になった実話とは?
46歳で民主党の大統領候補となった政治家ゲイリー・ハートは、「フロントランナー(最有力候補)」と言われていたにも関わらず、不倫疑惑報道により、大統領選から撤退を余儀なくされてしまいました。
それまでも、ケネディ、クリントン、トランプなど多くの歴代大統領には女性関連のスキャンダルがつきまとっていたものの、何故ゲイリー・ハートは大統領選を撤退したのか?
ゲイリー・ハート不倫疑惑については、共和党が仕掛けた罠だと告白した人がいるとも言われていますが、その点の真相はわかっていません。
ゲイリーを演じたヒュー・ジャックマン
第1級のサスペンス!
映画『フロントランナー』
2月1日(金)公開<真実>は葬られる。#フロントランナー pic.twitter.com/UW8TXNBHbx
— ソニー・ピクチャーズ (@SonyPicturesJP) 2019年1月28日
ヒュー・ジャックマンは、実際にゲイリー・ハートの家に3日間滞在し、インタビューして「心の内を誰にも明かさないミステリアスなところもある、不思議な人物です。実物は私が演じたゲイリーよりも、さらに捉えどころのない感じかな。」という感想を抱いたそうです。
更にヒュー・ジャックマンは「映画は答えを用意するメディアだと思っていない」と語っています。
作り手の「これが答えだ!」が透けて見えるようじゃ、魅力的な映画とは言えないだろうし、年齢や男女差で大きく異なる答えが出てくる可能性のある作品になっていると思います。
感想
以下の感想には、ネタバレが含みますことをご了承くださいね。
その1 男性にありがちな勘違い野郎

ゲイリー・ハートが大統領選に立候補したときには、妻と別居状態ではあったものの離婚はしていません。
そんな中、女性が自宅を訪れた写真を張り込みしていた記者に撮られてしまい、それが報道されたことでゲイリー・ハートの女性関係へと世間の注目が集まります。
政治家のプライベートは、選挙とは何ら関係はないから弁明の必要はないと考えているゲイリーに対し、選挙スタッフのボスは、きちんと説明をすべきだと主張しぶつかります。
確かに、政治家のプライベートは選挙には関係ないかもしれない。だけど、それをゲイリーから告げられた妻は「私を傷つけた責任を感じて」と言います。
妻の信頼も得られない人が、世間からの信頼を取り戻すのは容易じゃないことを、もっとゲイリーはすぐに自覚すべきだったと思うんですけどねぇ。
仕事だけちゃんとしていればいい、次期大統領として何ができるか表明することが最重要であるはず、不倫疑惑報道に答えることより公的インタビューの方が大事、というゲイリーの思いはわからなくないけど、その姿勢で突き進むことは多くの女性を敵に回しかねない、ということは理解していないわけです。
不倫疑惑が本当だったのか、単なる疑惑なのか、ということが問題なのじゃなくて、そうした疑惑が明らかにされた後の発言の方が問題だったように思いましたね。
そもそも、世の中の男性方は、浮気は妻にバレなきゃいいと思っているかもしれませんが、概ねバレています。
で、一番大事なのは、浮気をした、しない、ということより、「バレた!」ときの対処の仕方。私としては、ゲイリーもここを大きく間違ったような気がしましたね。
女性は共感性の生き物です。政治としての理念より、「そうよねぇ~」と共感できることが潜在的に大事と感じている女性が多いんです。
だからこそ、疑惑が表に出たなら、自分の考えを押し通すより、周りの共感を得られるような行動に出るべきだったかも、と私は感じました。
その2 女性蔑視がまだまだ世の中にはびこっていた時代
映画の中で、すごくわかりやすい女性蔑視の発言があるわけじゃないんです。
だけど、発言のあちこちに匂っているとでも言いましょうか。時代は1980年代の後半。日本では男女雇用均等法が施行されて数年しかたっていません。
だから、まあ仕方ないだろうけど、30年経つと世の中は良くも悪くも変わるものだということを感じます。
ただ、何らかのスキャンダルが報じられると、マスコミが関係各所に大挙して押しかけるのは、今も昔もアメリカも日本も同じなんだな、と思いました。
私も昭和を生きてきて、女性蔑視の発言をいやというほど経験してきましたからね。セクハラだ、パワハラだ、と何でもハラスメントにしてしまうのもどうかと思うけど、女性に対する物言いには気を付けていただきたい。
男も女も母から生まれてきたわけで、男だけしかいなけりゃ子どもは生まれてこないからね。
その3 スタッフへの対応も信頼関係を優先すべきだった

スキャンダル報道の鎮静化の対応に追われている選挙スタッフへも説明の必要はないという姿勢を崩さないゲイリー。
だけど、そこはひざを突き合わせて、ウソでもいいから真摯な気持ちで向かい合うべきだったのじゃないか、と私は感じました。
ゲイリーを当選させるべく、スタッフは一生懸命働いているわけだし、そんなスタッフからの信頼を得られずにいい仕事ができるはずないですもん。
これはゲイリーだけでなく、全ての経営者にも通じることかもしれません。
その4 優秀な人材がマスコミにつぶされるかもしれないという恐れ
そうなんです。マスコミの在り方にも疑問を投げかける映画だったのではないでしょうか。
政治家のプライベートを報じることが是か?非か?ということについては、何の興味もありませんが、ゲイリー・ハートは“時代を変えられる政治家”として当時の若者の心を捉えていたそうです。
もし、ゲイリーがすごく優秀な大統領になり得たとしたら、過熱報道によってその才能がつぶされた、と言っても過言ではないわけで、非常にもったないことをしたわけですよね。
仮説にすぎないので、本当に優秀な大統領になったかどうかは、実際にはわかりませんが、可能性としてそれもあったわけですもん。
スキャンダル報道は、みんなが興味を持つからマスコミも報道合戦が過熱していくわけで、じゃあ興味を持たなきゃいいじゃん、って話しなんですけど。
それは無理でしょうから、マスコミの方で自粛すべきは自粛する、みたいなルールがあるといいかなぁとは思いますかね。
まとめ
実話を元にした社会派映画は、若い頃にはあまり興味がなかったのに、歳のせいですかねぇ。映画「フロントランナー」は非常に興味深く、男性目線と女性目線では感想が大きく違うだろうと思います。
「フロントランナー」は政治家とマスコミとの対決!的な話でもありますが、同じように国とマスコミの戦いをメリル・ストリープとトム・ハンクス主演で描いた作品が「ペンタゴンペーパーズ」この映画は、2018年に観た中でベスト3に入るほど好きな映画でした。

時代が変われど、マスコミと政治や芸能の世界との駆け引きは、永遠に変わることなく続くのかもしれません。
非常に興味深い要素がたくさん詰まった作品でした。