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Netflix映画「バンリューの兄弟」ネタバレ感想|あーあやっぱりそうなっちゃうのか

Netflixオリジナルのフランス映画「バンリューの兄弟」を鑑賞しました。

フランス映画はシャンソンのようだといつも感じるんだけど、今作は私の中では異色だったかも。優美なシャンソンのおフランスな香りは、全く感じませんでした。

移民からフランスに住むことになったパリ郊外に暮らす3兄弟のそれぞれの生活と、法律家を目指している次男ソレイマンと同級生リサの討論会を軸に描かれています。

長男のデンバは、麻薬の売買を生業にしていて、お金も持っていて末っ子のヌムケが憧れる存在。

そんな3兄弟に、弟のしでかした事件が発端となり、災難が降りかかってしまいます。

にーちゃん麻薬の売人だけど、特に凄惨な事件もなく兄弟愛、家族愛を描き、育った環境が劣悪だろうと本人の意思がしっかりしていればまっとうな人生もあるってことよね、という映画かと思っていたら・・・

やっぱり違うんです。最後の最後に悲しい結果が待っています。

感想にはネタバレが含まれますとこをご了承くださいませね。

「バンリューの兄弟」概略

原題:Banlieusards
英語タイトル:Street Flow
製作国:フランス
キャスト:ケリー・ジェームス、ジャメ・ディアンガナ、クロエ・ジュアネ
監督:ケリー・ジェームス
脚本:ケリー・ジェームス

移民が多く貧困な郊外で生き抜く術を探し求める3兄弟それぞれの生き方と、真面目に暮らしていても容赦なく厳しい試練が襲う現実を描いています。

原題の「Banlieusards」は通勤という意味ですが、バンリュー(Banlieue)には「郊外」という意味があり、フランスで「郊外(バンリュー)」は大都市郊外の移民が多い貧しい公営住宅地帯を指すことが多いのだそうです。

映画の中には、電車での移動、駅でのシーンが出てくるし、ラストシーンでもソレイマンが「駅に行かなくちゃ」と言ったりして、タイトルを彷彿とさせています。

「バンリューの兄弟」ってタイトル、確かにそうかもしれないけど、もうちょっとカッコイイ題名が付けられなかったのかな?と思っちゃうのは私だけでしょうか?

フランスのヒップホップグループ「Mafia K-1 Fry」のメンバーであるケリー・ジェームスが脚本・監督を担当し、3兄弟の長男デンバ役として出演。

ネタバレ感想

画像引用元:IMDb

父親はすでに亡くなり、病気がちの母と法律家を目指すソレイマン、15歳の弟ヌムケは郊外の町で暮らしています。

ソレイマンは真面目な学生で、卒業のための討論大会最終選考が迫っていて、同級生のリサと共にそれに向けて準備をしています。

15歳の末っ子は、生意気盛りなお年頃。ちょっと悪さをしてみたりして、お母さんは頭の痛いところ。麻薬の売人である長兄デンバに憧れていて、卒業間際に喧嘩をして退学になってしまいます。

ソレイマンとリサの微妙な関係

ソレイマンとリサは、お互いに気持ちを告白はしていないんだけど、惹かれあっている様子。

大丈夫だよ!きっとリサもあなたのことが好きだって!と思うのに、ソレイマンは境遇の違いから、告白する勇気がないんだろうなぁということがひしひしと伝わってくるんですね。

ある時、電車に乗ろうと道を走っていると、突然パトカーから降りてきた警察官たちに囲まれて所持品検査をされ、結局怪しいところがないとすぐに開放されるのですが、去り際に警官が「走れよサンボ」と捨て台詞。

最悪、最低!です。

そんなことがあったソレイマンは、それからリサを避けるようになっていくんですね。アラブ系黒人とブルジョワ白人では違いすぎるから距離を置きたいとソレイマンはリサに告げるんです。

私はソレイマンと同じ境遇になったことはないけど、彼の苦しい気持ちは痛いほど伝わってきます。

リサは「あなたは黒人だということにこだわりすぎている」と反論します。確かにそうかもしれない。リサがそう思うのも理解できる。

でも、ふたりが付き合うようになったとして、パリで病院を経営しているリサの父親がすんなりと彼らの交際を認めてくれるでしょうか。

そこまでソレイマンが考えていたかどうかはわかりませんが、リサの方が今のふたりの気持ちを大切にしたいと思っていたかも。

人種差別がいけないなんてことは、誰しも知っていることだけど、誰にでも本音と建て前ってのがあるだろうな・・・と。自分の家族に関わってきたら、どんな風に感じるのだろうか?と。

今作では、3兄弟の生活と共に、フランスの人種差別、貧困問題も絡んでいて、ソレイマンとリサの討論会の課題が「フランス郊外の現状につき政府は単独で責任を負うべきか」

ラストの方では、ふたりがこの課題で討論するんだけど、これが実に見事なんです。

末っ子ヌムケがやらかしちゃったこと

おにーちゃんのデンバにナイキのスニーカーが欲しいとおねだりしたものの、自分で何とかしろ!と言われ、女友達のソフィアとデンバと敵対する麻薬密売組織のお金を盗んでしまいます。

それが後に事件に発展しちゃうんですよ。そりゃ、そーだよね。

ケンカで学校を退学になったヌムケに対し、デンバが「人生は選択だ」と言っているところに、歯はボロボロ、足取りもおぼつかないみすぼらしい姿のチコがお金を無心しに現れます。

チコに対して嫌悪の表情を見せるヌムケ。

自分のようになりたいと思っている弟に、デンバは「チコはみんなが注目する伝説のオトコだった」と伝えます。

人生は自分の選択次第だけど、道を誤ると厳しい現実が待っているということを教えたかったのかな、と。

そこからヌムケは退学になったものの、勉強するようになるんですね。人から言われたことに聞く耳は持たなくても、自分が心から何かを感じると、人って行動に移すものなんですね。

ヌムケ頑張れ!と応援したくなります。

母親から嫌悪されているデンバ

同じ街に住んでいるデンバと母。母が帰宅途中、重そうな荷物を持っている母を見つけたデンバが「持とうか?」と声を掛けると、母は「Out of my life」と捨て台詞。

そんな風に言わなくても・・・とは思ったけど、お母さんだって本当はそんなこと言いたくないはず。だけど、デンバが麻薬密売人をしていることが何より許せない。

でも、病気で倒れ入院したときには、見舞いにきたデンバの手をそっと握る。それが母親なんですね。

くそったれだと思って恥じていても、やっぱり見捨てることなんてできないんです。デンバもそれをわかっている。母の手を握りながら号泣!

教育熱心で信仰心の熱いお母さんは、病気がちなんだけど愛情を注いで彼らを育てたんだろうなぁと思うわけですよ。

だけど、子供って残念だけど、親の思った通りには育たない。家族って、親子って、切っても切れない縁ってのがあって、ときには重いなと感じますよね。

ふたりの討論会

「フランス郊外の現状につき政府は単独で責任を負うべきか」という課題に対して、リサは肯定命題、ソレイマンは否定命題で討論します。

これが実に見事!討論会なので、ちょっと言葉が硬いんだけど、それぞれの命題に沿って現状の問題点を挙げて戦います。

そこにフランスの人種差別、貧困、移民問題全てが凝縮されていたように感じます。

日本にも貧困はあるし、貧しい地域ってのもありますよね。だけど、自分も含めどこか自分さえよけりゃOKと思っている人が多いようにも感じます。

肯定派のリサが「選挙で当選した人は公約を果たしません、投票しろと訴えた政治家たちは金の魔力に操られ、問題をすり替えます」みたいな発言をするんだけど、それはそのまま日本にも当てはまると思うんですね。

日本の政治家たちも、私利私欲に目がくらんでいないで、もっと真剣に日本の将来を考えなくちゃ!ですよね。

日本にはお年寄りが増えています。かかる医療費も年金も右肩上りに増えています。そのせいで子どもたちにかかる予算が削られているとしたら、日本は沈没を待つばかりですもの。

最後におきた事件(ラストシーンのネタバレ)

ヌムケが盗んだお金がお母さんに見つかり、ソレイマンはデンバに相談に行きます。デンバは相手と交渉して問題は解決したとソレイマンに伝えます。

画像引用元:IMDb

ここまで麻薬や人種差別が絡んだ映画にしては、派手なケンカや打ち合いや闘争がなくて、何かが起こるんじゃない?いつ?何が起こる?

とドキドキしながら見ていたものの、静かな映画なんだろうな、と気持ちはラストに向かっていたんですね。

しかぁーし!そんなに甘くありませんでした。

ソレイマンが討論会を終え、無事卒業が決まり、ロンドンに旅立つリサを駅まで見送りに行く前にデンバの店に立ち寄り、卒業祝いに兄弟とデンバの相棒と3人で乾杯していました。

デンバの笑顔には、見事な卒業討論をやってのけたソレイマンを誇りに思う気持ちが表れています。

そこに、バイクに乗った二人組がやってきて、デンバは撃たれて亡くなってしまいます。

個人的には、カンパイしてめでたしめでたしで、ソレイマンは駅に向かう、って感じで収めてほしかったのに、最後の最後に撃たれちゃうなんて悲しい・・・

ヌムケにしてみれば、デンバが撃たれたのは、自分がお金を盗んだことが原因になっているわけだから、一生その後悔と自責の念を抱えて生きていかなくちゃならないってことです。

ほんの出来心であろうと、やっぱり悪いことをすれば罰が当たるんです。気を付けなくちゃね。

まとめ

麻薬を扱った映画は数々ありますが、「ボーダーライン」みたいに恐ろしくないし「スカイラインズ」ほどシリアスじゃないし、人種差別や地域問題を盛り込んだとてもいい作品だなと思いましたね。

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デンバは、愛情あふれるお母さんに育てられたからか、不必要に人を傷つけないし、管理しているアパートも子連れは家賃を滞納していても追い出さない主義だったりと、ハートのある対応をするんです。

おばちゃんとしては、そこも好ましかったかな。

デンジャラスな映画も決して嫌いじゃないけど、今作はソレイマンという優秀な弟の存在があるため、ちょっと違った仕上がりになっていて興味深く鑑賞できた感じ。

トム・クルーズ主演の実話を基にした「バリー・シール アメリカをはめた男」も麻薬密輸絡みの映画。ハリウッド映画らしいスケールと豪快さで個人的には大好きな作品です。

人は、全てのことに平等な権利があるんです。でも世の中、不平等なんですよ。

そんなもんですかね?

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