洋画

映画「ステージマザー」ネタバレ感想|助けていても助けられている

急逝した息子が残したゲイバーを立て直す手伝いをして、田舎町の平凡な主婦が第二の人生を見つけるというドラマ「ステージマザー」を鑑賞してきました。

LGBTの生きづらさ、ジェネレーションギャップのある親世代との確執、夫に従って生きてきた主婦の反乱などなど、様々な問題を織り込み考えさせられる作品になっていると感じました。

サンフランシスコの風景、夕焼け、坂道を走る電車、ドラァグクィーンたちのきらびやかな衣装や、歌詞が沁みる歌も魅力的です。

それでは、感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレも含みますことをご了承くださいませね。

ステージマザー作品概略

原題:Stage Mother
製作年:2020年
製作国:カナダ
キャスト:ジャッキー・ウィーバー、ルーシー・リュー
監督:トム・フィッツジェラルド
脚本:ブラッド・ヘンニク

トム・フィッツジェラルドは実兄を薬物の過剰摂取で亡くしていて、脚本家のブラッド・ヘンニクはゲイとして保守的なテキサスで育ったという作品とリンクしているところがあるんですね。

また、ドラァグクィーンたちの教育係兼母親役でもあるダスティを演じたジャッキー・ビートは、俳優でもありアメリカの伝説的なドラァグクィーンだそうです。

ざっくりあらすじ

故郷を離れ疎遠になっていたひとり息子の訃報を受けた母メイベリンは、夫の反対を押し切って息子の葬儀に出席するためサンフランシスコに駆け付ける。

出席した教会の葬儀でメイベリンが目にしたのは、ドラァグクィーンたちのステージ。

思わず席を立ち、退室してしまったメイベリンだったが、息子リッキーの親友だったという女性シエナやリッキーの共同経営者でパートナーだったネイサンに出会い、息子が残したゲイバーを立て直す手伝いをすることを決意する。

最初は非協力的で攻撃的だったネイサンも優しく面倒見のいいメイベリンに少しずつ心を開き、店に所属しているドラァグクィーンたちも協力してバー「パンドラボックス」は客足が伸びていく。

感想

物語としては平凡なんだけど、何がいいってやっぱり音楽かな。

映画にとって音楽はなくてはならないわき役。どんなに素敵な映画も音楽がなくちゃ盛り上がりませんからね。

今作は、冒頭からサンフランシスコの風景やナイスな音楽が流れ、そこでもう作品に対する期待感が上がってきます。

息子がゲイだったら・・

父親は最後まで、息子がゲイだということを受け入れられないんですね。でも、母親は結局愛しいわが子であることに変わりはないと本能で理解するんです。

しかも、息子の葬儀にも行く必要ないとメイベリンに言うんだけど、そんなことってある??今生の別れなんですよ。信じられない。

そんな夫に対して、メイベリンは「今まで逆らわずにあなたに従ってきたけど、ここだけは譲れない。私は行く」とサンフランシスコに向かいます。

あっけにとられた夫をしり目に、スーツケースを握って車に乗り込むメイベリン。かっこよかったですねー。

日本でいえば、頑固おやじ、モラハラ夫ってとこですかね。

ドラァグクィーンたちにメイベリンが助けられていた

メイベリンと夫には、リッキーが経営していたゲイバー「パンドラボックス」が遺産として残されたんだけど、それはつぶれる寸前の赤字経営。

共同経営者でリッキーのパートナーだったネイサンは、メイベリンに敵意をむき出しにしてきます。

でもね、おばちゃんの強みは敵意も軽く受け流せるところ。人生長くなると、少々のことじゃ動じなくなるんですよ。

そして無謀にも「私が経営の立て直しをする」と言い出す。えっ?素人ですよね??なんだけど、素人ってのもある意味怖いものなしで強い。

しかもメイベリンは、教会で讃美歌の指導をしていたので、口パクでショーをしていたドラァグクィーンたちに生歌でショーをできるように指導するわけ。

そりゃあ口パクでスピーカーから流れてくる歌より、生の迫力ある歌の方がお客さんは喜ぶってもんですよね。

でもね、きっと店の経営を立て直すことに忙しくしていたメイベリンは、そのことによって息子を失った寂しさを紛らわすことができていたと思う。

そして、自分が知ることのできなかった息子リッキーのサンフランシスコでの暮らしや友達、生活を感じることができて、きっと幸せな時間を過ごせていたと思う。

友情に年齢はない

リッキーの親友であばずれのシエナには、同じリッキーという名前の息子がいて、こいつがかわいいったらない。

もちろんゲイであるリッキーとの間にできた息子ではないんだけど、メイベリンにしてみたら孫みたいな年齢。リッキーを亡くし、小リッキーの存在に救われてたもあるんじゃないかしらん。

店を立て直すというひとつの目標に向かい、次第に団結していく様子はまるで学生の部活のよう。

メイベリンは、ドラァグクィーンたちがそれぞれに抱えている問題をわが子のように寄り添って解決していこうとするのね。

息子のリッキーにしてあげられなかったことを代わりにこの子達に、という思いがあったのだろうと思う。

結局は人柄

メイベリンと夫は、息子リッキーがゲイだということで疎遠になっていたようだけど、メイベリンは許せず疎遠になっていたことを悔やんだはず。

そもそも子供なんてのは、親の思った通りには育たない。と思いませんこと?

例えばいい大学に入って一流の企業に就職したとしても、突然やめて世界放浪の旅に出ると言い出すかもしれないし、その一流企業が倒産するかもしれないし、仙人になって山に籠ると言うかもしれない。

でも、犯罪に手を染めることなく元気に生きてさえいてくれれば、会えるし言葉も交わせますからね。

メイベリンは、サンフランシスコで亡きリッキーの生活に触れ、みんなから愛されていたこと、その道では有名になっていたことを知り、遅まきながらわが子を誇りに思ったと思う。

ゲイ?いいじゃないですか。恋愛の対象は人間ですから。馬や牛じゃ困るけどね。結局は人柄に価値があるんです。

みんなに愛されていたリッキーを育てたのは自分、という自信を持たせてくれた友情に感謝したんじゃないかな。

すでに鑑賞した方と共有する感想

メイベリンがホテルにゲイバーのショーのチラシを置いてもらえないか、と尋ねていき、そこでコンシェルジュチーフと知り合い、なんだかいい感じになりますよね。

あれ、ちょっと出来過ぎじゃないですかね?どう思います?

息子を亡くしたばかりで、そんな気持ちになるものかしら?ちょっと安易な展開のように思うんだけどなぁ。

で、メイベリンは夫に言われて渋々テキサスに帰るんだけど、サンフランシスコでの華やかな毎日が忘れられず戻っちゃう。

そこはわからなくもないし、置いてきぼりにされた頑固おやじには「ざまーみろ!」って気持ちにはなりましたけどね。

男ってそんなもんだろうけど、夫は自分が妻を抑圧していたことに全く気付いてません。アホだよねぇ。

ストーリーはありふれているけど、ショーでの歌の歌詞が、その時、その人の心情を表現していて、どれも心に刺さるんですよ。素晴らしかった。

別に泣ける作品ではないんだけど、私は何度もウルウル来ちゃいました。

うちのクソ無愛想な息子が1年ぶりに帰省してきたばかりで、人を小ばかにしたような態度に猛烈にムカついていたんだけど、この映画を観て「元気な姿を見せてくれただけでよし!」と思いました。

結局、人って誰かを助けているようでも、それは自分が助けられていることにも繋がり、お互い様ってことになっているんですね、覚えておこっと。

心が疲れている人、乾燥しちゃった人、愛を再確認したい人におすすめの映画です。

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