実話を基にしたというよりドキュメンタリーに近い映画「バイス」を観てきました。バイスというタイトルには、映画の本質が隠れています。
でも今回の映画鑑賞は、やや不満でしたね。バイスに入り込んで観ていると、聞こえてくるのが、どこぞで居眠りこいてるおっさんのいびき!経験ありませんか?
ものすごく気になる。
ゴーゴーと映画館に響き渡るほどの音量、しかもゴロゴロ鼻だか?喉だかが鳴っていて耳障り。寝るなら家帰れ!
あ・・私も思わず落ちちゃうことはあるから、寝ちゃうのは仕方ないとしても、いびきはねぇ。困ったもんだわ。
で、映画バイスですが、飲んだくれだったチェイニーが副大統領にまでなれたのは、野心家または上昇志向とも言えるかな、そんな妻:リンの存在あってこそだな、と私は感じました。
ということなどなど感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレいたしますことをご了承ください。それではGO!
Contents
タイトルに隠された意味は?
実際のチェイニー氏の写真。しかし!俳優ってすごいですよね。似てる!チェイニーの役を演じるために、クリスチャン・ベールは20キロも増量したそうです。お腹ぽんぽこりんでしたもん。
で、この作品は、ご存知の通り第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュの下で副大統領を務めた「ディック・チェイニー」を描いた映画。
タイトルになっている「バイス」とは、どんな意味なのか?そこに込められた思いは?
「Vice」とは、職名などに付けて「副・次・代理」を表す意味と共に、「悪徳, 不道徳, 邪悪」という意味もあります。
ナイスタイトル!と感じましたねぇ。文字通り副大統領でしたが、世論調査では「史上最悪の副大統領」だとする意見が23%にのぼったと言われていますからね。
さくっとあらすじ
ディック・チェイニーはジョージ・W・ブッシュの下で副大統領を務め、心臓の持病を抱えながらも、「史上最強の副大統領」「影の大統領」と評されるほどの影響力を発揮した。
チェイニーの影響は今日の国際秩序にも及んでいる。その一方で、チェイニーは「史上最悪の副大統領」と指弾されることもあり、毀誉褒貶が著しい人物であると言える。
本作はそんなチェイニーの実像を描き出す一つの試みである。
感想
その1 飲んだくれが野心家へと変貌した陰に妻あり!
妻のリンとは、高校生時代からの同級生で、リンの助けがあったからこそ、イェール大学に進学できたものの、自堕落な生活で大学は中退。
お酒を飲んでは喧嘩をし、逮捕歴も2回。2度目のときに後の妻、その時の彼女であったリンから
「これで2度目!いつまでつまらない生活をしてるつもりっ?!(怒り)サイテーな生活に甘んじているような人と生涯を共にする気はサラサラないの。立ち直るつもりがないなら、別れるしかないから!覚えておいて!」
的な説教をされるわけです。
セリフの内容は、記憶をたどっているだけなので、言葉はそのままではないけど、私が受け取った意味としてはこんな感じ。
でもね、そこには他にリンの本音も隠れていたのよ。
リンは成績優秀だったんだけど
「私はどんなに勉強していい成績を取って大学を卒業しても、就職するところすらない。出世だってできない!夢はあなたに託すしかないの!」
と言うんですね。
ここ、まさに「映画ビリーブ」のルース・ギンズバーグとほぼ同じ時代なんですね。
リンは優秀だったし野心家だったけど、女性が活躍できる時代ではなかったことから、夫になるであろうチェイニーを陰から支え、コントロールし、時には慰めたり励ましたりしながら、自分の夢を実現しようとしていたんだなぁと感じましたね。

だからこそ、せっかく大学に入学したのに、飲んだくれているチェイニーが立ち直れないなら、他に候補を見つけて乗り換えちゃうよぉ~ってことです。
でも、チェイニーは立ち直り、大学にも入りなおして、34歳のときには史上最年少の若さでアメリカ合衆国大統領首席補佐官となります。
リンの気持ちは通じたってことです。でもねぇ、人の根っ子にあるものは早々変わらないとも言うじゃない?
私は、チェイニーのやんちゃっぷりとか、自分の欲望に忠実なところが、大人になってもひょっこりと顔を出すに決まってる!と思ってたわね。
その2 野心家だけど実は家族愛にあふれた男だった
アメリカ合衆国大統領首席補佐官になってからは順風満帆と思われたチェイニーに、思いがけない方向から横やりが入ります。
それが次女。今はカミングアウトしていますが、実は同性愛者だったんです。
いずれは大統領、と思っていたチェイニー夫妻だったけど、立候補すれば対立候補者から必ず次女のことが世間に漏れると判断し、チェイニーはあっさりと政界を去ってしまいます。
その後は、世界最大の石油掘削機の販売会社であるアメリカのハリバートン社のCEOに就任。
ハリバートンは、イラク戦争後のイラク復興支援事業や、アメリカ軍関連の各種サービスも提供していることから、湾岸戦争とイラク戦争で巨額な利益を得たので、ハリバートンの最大の個人株主でもあったチェイニーも莫大な利益供与を受けたはず。
運を持ってるのねぇ~きっと。でも、その運はリンと一緒になったからこそかも!と私は思っているんだけど。
そうそう、家族愛ね。非情な男かと思っていたら、娘がやり玉に挙げられて傷つくくらいなら、さっさと身を引きまっせ―ということで、一旦は政界を引退しちゃう潔さに家族への深い愛を感じたわね。
と、映画はここでエンドロール。終わりですか?んなはずはなく、チェイニーの新たな歴史の幕が上がります。
その3 副大統領にならない方がよかったのに
新たな幕開けは、そうジョージ・ブッシュからの副大統領にならない?というお誘い。そのままハリバートンのCEOでいた方がよかったんじゃない?と映画を観ると思うけど、そこは国を動かす!という誘惑に勝てなかったのかしらね。
だけど、こんな映画作っちゃって、しかもワールドワイドに公開しちゃうって、アメリカってすごい!と感じたのは、きっと私だけじゃないと思う。
ストーリーもあるし映画にはなっているけど、実際の映像も差し込まれ、「華氏119」よりドラマ要素を濃くしたドキュメンタリーって感じかしら?

いい気になったとしか思えないチェイニーの行動はエスカレートしていく。法律は解釈によって見解が異なることもあるわけで、チェイニーはそこを利用し、次々と都合のいい法案を通していこうとしちゃうわけ。
副大統領にこんなにやりたい放題やらせちゃったジョージくんにも大きな責任があるわよね。アメリカ人は、この映画を観て、どのように思うのかしら?
パックンとかデーブ・スペクターに聞いてみたいわ。
イラク戦争の引き金になった大量破壊兵器保持については、後に亡命イラク人がフセイン政権打倒のために、捏造した話をアメリカにリークしたとも言われていて、実際、アメリカ当局に伝えたとの疑惑が浮上しているのよね。
イラク戦争で亡くなった米兵は4000人以上。実際、戦争を指示する人たちは、戦場に行くこともなく、あの話はどうやら捏造だったらしいとわかっても処刑されるわけでもないけど、実際に戦地に行った軍人、その家族の悲しみや傷を思うとやるせないし、権力って何なの?と思いますよね。
その4 謝る・感謝することができない人
狩猟が趣味のチェイニーが、誤って弁護士を撃ってしまうのね。だけど、撃たれた弁護士の方が会見を開いて、チェイニー家族に迷惑をかけた、みたいな理由で謝罪しているのよ。
これには怒りを感じたわねぇ。謝るのはどっちよっ(怒り)
どんな立場だろうと、どれだけ偉かろうと、悪いことをしたら謝る、子どものころから当たり前に教えてもらっていることでしょっ!
それに、チェイニーには感謝の気持ちもない。もう心臓移植しかないという状態で余命いくばくもなかったチェイニーに、事故にあった青年の心臓が移植されるわけ。
だけど、その青年役が影の声として語っているところによると、回復したチェイニーは「誰かの心臓」とは言わず「新しい心臓」と僕の心臓のことを呼んでいるんだよ、と切なそうに解説するのね。
大金出して「新しい心臓を買った」認識なんじゃないかな、と思うわけ。誰かが亡くなったことにより、心臓を移植してもらえたお陰で、今の自分の命がある、と思ったら「新しい心臓」なんて言わない。
感謝の言葉しか出てこないはず。
まとめ
と、観ているとムカつくこといっぱい!な映画でしたが、そもそもアメリカの歴史や戦争や、大統領や映画に出てくる事柄の詳細についての知識がない私だったので、非常に勉強にはなりました。
マスコミにしてもネットにしても、全てを信じちゃいけないし、人から言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分の頭を使い行動を起こして情報を精査する必要があると強く思います。
ネタバレ感想その1に書いた「人の根っ子にあるものは早々変わらないとも言うじゃない?」のように、
チェイニーは家族愛にあふれたおじさんではあったけど、他人には非情だと感じたし、副大統領になってからも「権力の魔力に抗えない」という、己の欲望に突き動かされただけだったんじゃないか?と感じるわけですよ。
日本の政策も迷走しているし、とても未来が明るいとは思えない今だけど、まずは選挙に行かないと話にならないし、若い人たちの意見が反映されるような世の中になったらいいなぁと個人的には思っています。
最後は話が逸れちゃったけど、非常に興味深い映画でしたので、おすすめです!