IQ160でシリアルキラーと呼ばれた死刑囚の実話を基にした「テッド・バンディ」を鑑賞してきました。恐ろしいですねぇ。
ザック・エフロン、自己顕示欲の塊テッドを見事に演じていました。
これが実話なら、人が想像する物語なんて、軽いよねぇと感じるほどの殺人鬼です。
危険なオトコに魅了される女の悲しい性、そしてそれを利用するテッド。もしかしたら、彼は無実なんじゃないか?と思うほどの自信たっぷりな主張。テッドは怪物だな、と感じます。
では、鑑賞してきた感想と、テッド・バンディの生い立ちをご紹介いたしますね。
尚、感想にはネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。
Contents
作品概略
原題:Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile
製作年:2019年
製作国:アメリカ(R15+)
キャスト:ザック・エフロン、リリー・コリンズ
監督:ジョー・バーリンジャー
原作:エリザベス・クレプファー
脚本:マイケル・ワーウィー
製作:マイケル・コスティガン ニコラス・シャルティエ他
テッド・バンディとは?
画像引用元:Wikipedia
Ted Bundy 本人の写真
誕生から高校時代まで
セオドア・ロバート・バンディ
1946年11月24日、未婚の母の元に誕生。父親は確認されていない。
幼い頃は母親のことは姉として、祖父母に育てられている。
インタビューでテッド・バンディは、祖父を尊敬していると答えていたが、祖父は差別主義者であり、妻や家族、動物に対して暴君であったと語っている。父性の問題が提起されたときには、激しい怒りを露わにしたこともあったという。
テッドの祖母はうつ病を患い、電気けいれん療法を定期的に受けていたが、家から出るのことを恐れていたらしい。
伯母のジュリアがある日、昼寝から目覚めるとナイフに囲まれていて、そのそばでは3歳のテッドが立って笑っていたという逸話もある。
1951年に母ルイーズが再婚し、再婚相手との間に4人の子どもにも恵まれ、テッドは義理の父ジョニーの養子となったが、テッドの方からなつくことはなく後にジョニーを「明るくない」「お金を稼げなかった」と言っていた。
母と移り住んだワシントン州のタコタでは、近所のゴミ箱から裸の女性の写真を拾ったりし、性的暴力に関連する犯罪や特に死体の写真について描写されていると、探偵雑誌、犯罪小説やドキュメンタリーについて自分がどのようにそれを見たかについて説明したこともあったという。
大人になったテッドは、対人関係が理解できず、友情を育むという感性も友達が欲しいという気持ちもなく、ひとりでいることを好んだ。
高校時代には、強盗や窃盗で2回の逮捕歴がある。
大学時代
1年間ピュージェットサウンド大学で過ごした後、1966年にワシントン大学に転校。ワシントン州副知事のフレッチャーのキャンペーン中にアーサー・フレッチャーの運転手およびボディーガードになる。
クラスメイトのステファニー・ブルックスと恋人関係になるが、後に彼らの関係は終了し、ステファニーは実家へ帰ってしまい、このことを精神科医のドロシー・ルイスは「おそらく彼の発達の極めて重要な時期」としている。
1969年にワシントンへ戻ったとき、ユタ州ワシントン大学の秘書として働いていたエリザベス・クロップファーと出会う。このエリザベスが、映画の中でのリズに当たる。
1970年、ワシントン大学に心理学専攻で再入学。優等生で教授から高く評価されていた。
1972年にワシントン大学を卒業後、 1973年ロースクール入学試験では平凡な成績にもかかわらず、いくつかのワシントン大学教授からの推薦状の強さで、UPSとユタ大学のロースクールに合格し、後にUPSロースクールに入学したが卒業はしていない。
この頃、大学のクラスメイトだったステファニーとの仲が復活している。
テッドの犯罪
1969年に最初の誘拐・殺人に手を染め、1970年代に多くの若い女性や少女を誘拐しレイプ、殺害したアメリカの連続殺人犯。10年以上も無罪を主張し続けたが、1989年の死刑執行前に、7つの州で30人以上の殺人を告白。
テッドが14歳のときにも、未だ確証はないものの、幼女への暴行殺害の疑いがあったと言われている。
カリスマ性があり、公共の場でケガやトラブルを装って被害者に近づき、殴打して意識を失わせ、強姦したのち人里離れた場所で殺害。または、就寝中に襲ってもいる。
少なくとも12人の犠牲者の断頭した頭部を自宅に残していた。犠牲者を写したポラロイド写真も持っていたと、本人が告白している。
テッドは死刑を回避するため司法取引に応じたり、嘆願をしたりと策を講じたものの、訴訟が不利になってくると、一転、全てを取り消して無罪を主張。
そして、収監中に2度の脱獄を実行したが、1989年1月24日にフロリダ州レイフォードにあるフロリダ州刑務所の電気椅子で処刑。
Netflixでもドキュメンタリーが配信中
こちらにはテッド・バンディ本人の画像や実際の映像が使われています。
ざっくりあらすじ
あるバーで出会ったテッド・バンディとシングルマザーのリズは、すぐに恋に落ち、幸せな生活を始める。
しかし、テッドが信号無視で警官に止められ、車の中から不審な道具が見つかって逮捕。そこから二人の運命が変わっていきます。
新聞に公開された女性誘拐事件の容疑者とテッドがそっくりだったこと、犯人らしき男が乗っていたのがテッドの車と同じフォルクスワーゲンだったことから、容疑者として拘束されるが無罪を主張。
裁判が行われた際は、自分で自分の弁護をするという異例の裁判に。裁判の行方はいかに?
感想
自己顕示欲の塊だな
映画はテッドとリズが知り合ったところから始まります。テッドが信号無視をしたことでパトカーに車を止められ、車内に不審物があったことで拘留され、ふたりは離れ離れに。
映画の中では、女性の誘拐や強姦、殺人が本当にテッドによるものなのか?それとも彼が主張しているように、無実なのか?がわからないように描かれているため、緊張感が映画を観るごとに増してくる感じ。
もしかしてテッドは無実なんじゃないの?とすら思えてきます。
だって、本当にやったのだとしたら、普通はあんなに自信たっぷり真っすぐ相手の目を見て、顔色一つ変えずに主張できるはずないし、と思っちゃうんですね。
でも、きっとそれがテッドの狡猾なところなのでしょう。
IQ160という頭脳を持ち、ロースクールに通っていたテッドは、自分についた弁護士を解雇し、自分の弁護を自分でやっちまうんですね。しかも、蝶ネクタイで。
まあ、蝶ネクタイは関係ないかもしれないけど、本当の裁判でも映画でテッドが着ていた鮮やかなブルーのスーツに蝶ネクタイだったようなので、自己顕示欲が異常に強いタイプ。そして、ものすごい自信家なんだろうな、ということがうかがえます。
影の主役その1 リズ
この映画の主役はテッドなんだけど、裏の主役はふたりの女性のような気もするわけ。
ひとりはバーでテッドと知り合って恋に落ちたリズ。
幸せなふたりの生活は儚く、テッドが捕まりひとりになったリズは、たまにかかってくるテッドからの電話を楽しみにしていたもするんだけど、かなりその電話に振り回されてもいるのね。
電話の前に座り、電話を見つめながら彼からのコールを何もしないでただひたすら待っていた経験、ありませんか?そんな感じ。
だけど、職場にもかかってくるようになり、リズの同僚たちは何も言わないんだけど、リズにしてみれば非常に居心地が悪いですよね。
しかも、リズの話しは聞かない。言い訳、これからの夢、無実であることなど、一方的に自分のことを話しているだけ。
恋をしていれば、相手の話しを聞くだけでもうれしい時間かもしれないけど、その電話を受けているのが職場じゃいたたまれませんよね。
リズは疲れてきてしまうんです。
そこに登場したのが、同僚のクマのプーさん、じゃなくてジェリー。見るからに優しそうで、穏やかそうで、ウソをつかなそうで、いいヤツそうな男です。
ところが、女性ってのは、どこか危険な香りがする男性が気になったりしちゃうんですよね。
他人事として観ていれば、絶対にテッドよりジェリーと一緒になった方が大事にしてくれるって!とは思いつつ、じゃあ自分がジェリーを選ぶか?と聞かれたら、即答はできないモノね。
それが女心ってもんです。
でも、リズも心の安らぎが欲しかったのでしょうね。ジェリーと付き合うようになるんだけど、ジェリーと一緒にいるときにテッドから電話があったりもして、動揺するリズをジェリーは慰めます。
テッドのことは忘れて、心の平穏を取り戻しなさい、みたいなことをジェリーは言うんだけど、リズにはまだテッドに対する未練があるように感じるんですね。
それが愛情による未練なのか?それとも単なる執着を愛情と勘違いしているのか?
それって、本人にはわからないじゃないですか。その人を見ている周りの人からしたら「執着以外の何物でもない」と感じていても、本人が愛情だという認識なら未練が残っちゃうわけで、いかんともしがたい。
恋心って迷路です。
でもね、何故リズが未練なのか、執着なのか、釈然としない態度だったのか?ってことが、終盤になって明らかになります。
それを知ると、苦しかったリズの気持ちも理解できるし、リズの苦悩の原因を知らなかったとしても全責任はテッドにあると感じます。
影の主役その2 キャロル
学生時代の同級生として描かれていたように記憶しているんだけど、実際のキャロルはワシントン州会議事堂に務めていた時の同僚。でも、学生時代の同級生だったと思っている私の記憶は定かじゃないので、間違っていたらごめんなさい。
で、キャロルは、その当時からテッドに恋心を寄せいていて、映画を観ている限り、テッドはそれを利用しているように感じます。
裁判の傍聴席には若い女性がたくさん座り、テッドを悪人だと思わず、憧れていた女性が当時は大勢いたとか。
カリスマ性があり、弁は立つし、好みは置いといて実物もそこそこハンサムだし、危険なオトコに惹かれる女性には魅力的に映ったのかもしれません。
ある時、リズに電話で拒絶されたテッドは、刑務所の職員を買収してキャロルとの行為の最中、テッドの態度に不信感を持ったキャロルが、自分のことをどう思っているのか尋ねるんですね。
不信に思ったのが当たりなんだってば。
テッドを助けるのはやめた方がいいって、と思うんだけど、
女心ってのは弱いもので、耳元で響きのいい言葉を吐かれるとまるで太陽の下のアイスクリームのように、速攻不信感は溶けちゃうんですよ。
アホだなぁーとは思うけど、それが若さだし、恋ってもんですかね。
映画の中では、テッドが裁判中、証言をしてくれたキャロルにプロポーズしますが、これも本当の話し。キャロルもその場でプロポーズを受け、2人は婚姻関係を結びます。
でも、キャロルが何故最後までテッドを一途に信じていられたのか、そこは少し不思議でした。やっぱり恋は盲目ってヤツですかね?
そして刑務所での交わりの結果、キャロルは妊娠。1981年10月に娘を出産。シリアルキラーと呼ばれた死刑囚の子どもを出産する勇気、私にはないな、と気持ちの強さを感じました。
もしかすると、テッドは死刑によりいなくなってしまうけど、忘れ形見を残してくれたことが彼女にとって生きる希望になったのかもしれませんしね。
テッドの執着はどこから来るのか?
リズの苦しかった気持ちが未練なのか、執着なのか、判断しかねる態度だったことは分かったんだけど、テッドの方にもリズに対する執着があるわけです。
たくさんの犯行を重ね、様々なタイプの女性を強姦・殺害していながら、心はリズにある様子。
これって、もしかしたらリズに母性を感じていたのか?とも思ったりしました。
自分が拘留・起訴され有罪判決になる可能性があるとしたら、大人のオトコなら「オレのことは忘れて幸せになれ」って言いませんかね?
テッドは、頑として無罪を主張し、リズとふたりの幸せな未来を彼女に語ったりするわけで、それって卑怯だと思うんですよ。
でも、テッドに自覚はなかったかもしれないけど、母を思う気持ちがリズへの愛情にすり替わっていたとしたら、なんとなく納得できるような気もしました。
まとめ
猟奇的殺人が発覚すると、その犯人の幼少期が分析されたりするけど、本当のことが100%わかるわけじゃないですしね。
もちろん、無駄にはならないだろうけど、壮絶な生い立ちをしても真っ当な人生を送る人はいるし、愛情が足りずに育ってもちゃんとした親になる人もいる。
ただ、その確率は一般的な家庭で育った子どもより低いのも事実。
リズには娘がいて、テッドが殺人犯だった事実を知ったとき、何もなかったからよかったけど、自分の娘の身をイチバンに案じたんですね。
もちろんリズは知り合ったときにテッドがそういうオトコだってことは知らなかったんだけど、殺人鬼と娘を一緒にしていたなんてなんと恐ろしい!
でも、この話はフィクションじゃないんです。だから、これからだって同じようなことがないとは限らないわけで、世の中には虐待で幼児が死亡するニュースもたくさん目にします。
子どもを守るために親がすべきこと、子どもを持った責任、そんなこんなをしっかりと考えなくちゃいけないかもですね。
事実は小説より奇なり、それを感じた映画でした。