Netflixオリジナルのドイツ映画「ステラ -真昼の誘拐-」を視聴しました。
ドイツ映画ってあまりポピュラーではありませんが、少し前にNetflixで観た「ロック・マイ・ハート」や


ここで取り上げた「ピエロがお前を嘲笑う」がドイツ映画です。「ピエロがお前を嘲笑う」は、話しが二転三転してすごく面白くおすすめの1作です!
記憶にある3本からイメージするドイツ映画は、ハリウッド映画のような派手さは全くなく、フランス映画のようなファッショナブルさもなく、淡々と丁寧に物語を追っている感じ。
かといって、決してつまらないというのではありません。
「ロック・マイ・ハート」は、若者が観る映画だったかな、と私の年齢では共感するにはちょっと歳を取り過ぎていたかも、とは思いましたが、「Kidnapping Stellaステラ -真昼の誘拐-」は抜群に面白かったです。
ただ、イギリス映画「アリス・クリードの失踪」のリメイクということで、「アリス・クリードの失踪」を観た人には「微妙」という感想もありました。
サイコスリラーでもないし、ホラーでもないんだけど、背筋がぞくっとするシーンはあるので、好みは分かれるかもしれません。
それでは、あらすじ&感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレしておりますことをご了承くださいませね。
作品の概略
白昼堂々街中でさらい、身代金を要求。用意周到な誘拐計画を立てた覆面2人組を相手に、猿ぐつわをはめられ拘束された人質が、逃げ出す隙を狙って猛反撃を仕掛ける。
日本でも2011年6月11日に劇場公開されたイギリス映画「アリス・クリードの失踪」を、Netflixオリジナルとしてリメイクしたドイツ映画。
キャスト
誘拐犯その1のヴィクを演じている「クレメンス・シック」、身代金目的で誘拐されたステラ「ジェラ・ハーゼ」、誘拐犯その2のトムが「マックス・オブ・ザ・グローベン」
この映画は、登場人物が3人しかいません。誘拐事件が発生しているけど、警察も誘拐された女の家族も声すら出てこない!そこがまた怖いんですけどね。
3人ともドイツ出身の俳優。
クレメンス・シックは、「007カジノロワイヤル」、フランス映画「スクランブル」、イギリス・ドイツ合作の「アウトバーン」などに出演。
あらすじ
その1 男たちの買い物と無言の行動
映画が始まってからしばらくは、会話もなく、音もなく、二人の男が買い物をする姿、買ったもので部屋をしつらえていく姿が映し出されます。
言葉がないって、恐怖心が煽られるですよ。
人と一緒のとき、そこに会話があるから楽しいんであって、もし相手が終始無言だったとしたら、不安になってきますものね。
しかも、男たちが買っているのが、想像をたくましくしてしまう品々。温度のない品物とでも言いましょうか。
それらを使って部屋の模様替えをしていきます。模様替えなんて表現すると、ワクワク感が生まれるけど、壁に防音スポンジ、スチール製の枠があるベッドにビニールシーツ、玄関ドアのカギは3重仕様。
それって・・・何かとんでもないことを、この部屋でやろうとしてるってことよね?と想像に難くない。
ホラーが苦手なので、ちょっと怖くなって見続けるかどうか、躊躇しちゃいましたもの。
その2 誘拐実行
男たちが、特別仕様の部屋を作っていたのは、誘拐した女性を監禁するため。
誘拐してきた女性の服を脱がして、赤いスエット上下に着替えさせ、スチールの枠があるベッドに手足を拘束します。
暗い部屋で浮かび上がる視覚効果を狙って、赤を着せたのか?ミョーに怖いです。
着ていた服のままじゃ、ダメなのかしら?と疑問に思ったところ、なるほど!と合点がいったのが、ステラはベッドに縛られたまま用を足さなければならなかったから。
着脱しやすいよう、スエット上下にする必要性があったんですね。こんな屈辱的なことありません!
その3 ステラの反撃
画面に登場するのは、誘拐された女性:ステラと誘拐犯:ヴィクとトムの3人だけ。身代金を要求するための電話すら掛けません。
時々、リーダーのヴィクは交渉のために出かけ、トムはステラを監視するために部屋に残ります。
ステラが大の用足しを要求し、バケツを持って入ってきたトムは、両足と片手の拘束を解き、銃を構えてそこでしろと言います。
だけど、ステラは緊張して出ないからあっちを向いていて、と言います。そりゃ、そーですよ。ところが!ステラは、やや後ろを向いたトムにバケツで反撃し、銃を奪います。
その4 ステラとトムの関係
実はトムは、ステラの元カレ。同じ刑務所にいたヴィクに誘拐ターゲットとして、振られた腹いせにステラを推していたというクズ男なトム。
ステラの反撃で、面が割れてしまったトムは激しく動揺します。結局、気の小さい男だったんですよ。
ステラ曰く、悪い仲間とつるんでその日暮らしで、将来を考えていないあなたがイヤになった、と。そりゃ当然です。
でも、そんな自分の生活を、金がないから、環境が悪いから、と全て周りのせいにするクズ男トム。いますよねー、こーゆーヤツ。
もし、そんな男と付き合っていて、別れようか?どうしようか?迷っている女性がいたら、迷いはすぐ捨てて、即刻別れるべきです。
しかも腹いせに誘拐って、どんだけ子どもなんですかっ!トム!
その5 身代金の受け渡し
ステラとトムの関係をヴィクは知りません。ステラもトムのことを、ヴィクには告げていません。
だけどヴィクは、挙動不審なトムが何か隠していると不信感を持ち、それが確信に変わる出来事があり、ヴィクは身代金ひとり占めを画策します。
映画の半分以上が、監禁部屋の中。いよいよステラを伴い身代金を受け取るというシーンで、部屋から外に出ると、観ている方にも解放感があり、呼吸が楽になったような感じがします。
身代金を独り占めしたヴィクは、トムを始末しようとしますが、「刑務所で僕をかばってくれたよね」という泣き落としに、つかの間躊躇しちゃうんですね。
ヴィクは、きっとトムを息子のように思っていた側面もあったはず。だからこそ、秘密を打ち明けてくれなかったトムに対して、残念な、がっかりしたような、裏切られた気持ちがあったと思います。
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核心部分を語っちゃうのでご注意!
以下、核心部分についてネタバレしていますので、ご注意くださいね。
ステラが妊娠していることを知ったトムは、最初、騙されているんじゃないか?と半信半疑だったものの、荷物の中から母子手帳を見つけ、ステラを助けたい気持ちになっていきます。
銃を持ったヴィクは、トムの言葉に一瞬躊躇したものの、結局、撃たれ瀕死の重傷を負いながらも、最後の力を振り絞ってステラを助けます。
ステラとトムの駆け引き、トムのステラに対する感情の変化も見どころのひとつ。
感想
ものすごくシンプルで簡素だからこそ、誘拐の緊迫感、3人の関係性がぎゅっと凝縮した作品になっています。
細かいことを言えば
ケータイのGPSは? 警察は? ステラの父親は? そんなに簡単に身代金手に入る?等々、疑問はたくさん頭をよぎりますが、それを越えて凝縮させた部分に興味を持っていかれる作品です。
汚れたトイレ、不気味にしつらえた監禁部屋に、誘拐を企てた二人の闇が垣間見えますが、捕らぬ狸の皮算用で身代金の使い道にワクワクしているお気楽ぶりに、誘拐が成功するはずもない、という結論も容易に想像できます。
拘束されているステラの絶望感が迫ってくるわ、小心者トムの迷いや混乱も手に取るように伝わるわ、ヴィクの緻密さの裏にあるハートも垣間見えるわ、と残虐なようでいて、人の心理も描いています。
やっぱり女性は、人気のない道、暗い夜道をひとりで歩かない方がいいよね、なんて単純なことを考えちゃいましたね。用心、用心。
サスペンス映画がお好きな方にはおススメです!