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海外ドラマ「NIP/TUCK マイアミ整形外科医」ネタバレ感想|美と男女と家族の葛藤

2003年のかなり昔のアメリカドラマなので、ちょっとね、ファッションとかは古臭さが否めないけど、マイアミで開業している美容整形外科を舞台にした内容が女性としてかなり興味深い。

日本では2005年5月1日からFOXチャンネルでスタートし、シーズン4まで放映されたようですが、2021年3月現在U-NEXTで全シーズン視聴できます。

手術描写がものすごくリアルなので、私はそのシーンでは全容が見えないよう目を細めて鑑賞していますが、苦手な方にはちょっときついかも、という点は先に申し上げておきますね。

作品概略

原題:Nip/Tuck
製作年:2003年~
製作国:アメリカ
キャスト: ディラン・ウォルシュ、 ジュリアン・マクマホン、ジョエリー・リチャードソン

「nip and tuck」は美容外科手術を表す俗語でもあり、意味は「五分五分、負けず劣らず」で美容外科を共同経営しているクリスチャンとショーンの関係を表していると思われます。

若い方は知らないだろうけど、その昔「チャタレイ夫人の恋人」という衝撃的な小説が映画化され、1995年の作品でチャタレイ夫人を演じていたのがジョエリー・リチャードソン。

U-NEXTではシーズン4まで視聴でき、シーズン5からは舞台がマイアミからカリフォルニアに移るため、日本放映のサブタイトルは「NIP/TUCK ハリウッド整形外科医」に変更。

アメリカでは2010年に放送されたシーズン6で終了となっています。

ざっくりあらすじ

マイアミで美容形成外科を共同経営しているクリスチャンとショーン。

クリスチャンは無類の女好きで未婚、一方のショーンは学生時代の同級生ジュリアと結婚し2児のぱぱ。

日々、来院する様々な不満や悩みを持っている女性に対応しているふたりの間に起こるトラブルや友情、ショーンの家族に起こるトラブル、クリスチャンがやらかす女性問題などを描いている。

感想

かなり手術描写がリアルなので、そこはちょっと勘弁なんだけど、それを見ていると痛いのが苦手な私は、やっぱり歳を取っても切ったり貼ったりの美容整形は止めておこう、と決意を固くしましたけどね。

もうひとつ過激なのが男女関係。クリスチャンが無類の女好きで、機会を逃さずワンナイトラブを楽しむため、頻繁にラブラブシーンが登場します。

他人の恋愛や男女関係には全く興味はないんだけど、クリスチャンがやらかすことがクリニックに甚大な被害を及ぼしたりもするんで、ドラマ的には排除できないパートなんだろうと理解しています。

ジュリアの秘密

複雑なのがクリスチャンとショーン、その妻ジュリアの関係。

3人は大学時代からの親友なんだけど、簡単に言えば三角関係。近しい人間との三角関係がトラブルを生まないはずはなくて、実はショーンの長男マットはクリスチャンの子だった!という衝撃の事実が発覚しちゃう。

困るよねぇ、二人は共同経営者だし。

でもね、個人的にちょっと腹が立ったのは、母であるジュリアが、息子マットにその事実を大学受験を控えている時期に告げちゃったこと。

あり得ない!!どう思います??

自分ひとりで秘密を抱えているのが苦しい、そりゃあわかりますよ。でもね、守らなくちゃいけないのは自分の気持ちより、受験を前にした息子の気持ちだと思うの。

違うかしら。

ご想像通り、マットはジュリアを罵って家を飛び出しちゃうんだけどね。あーあ、もう元には戻れないよねぇ。

マットは自分と同じ年の息子がいるライフコーチと付き合うようになり、実はこのライフコーチが大きな秘密を抱えていたり

ジュリアの母親が強烈なキャラクターで、きっとジュリアは母親との関係性から構築された何がしかの問題を抱えているのかも、と思えたり

かなりしっかりとしたキャラ設定がされていて、それぞれに興味深いんです。

40歳は年寄り?

美容外科なので、リフトアップや脂肪吸引、豊胸手術を希望する女性がたくさん来院するんだけど、歳を重ねていく女性の共通した悩みが浮き彫りにされていて共感できちゃうんですよ。

輝いていた張りのあるお肌は失われ、鏡に映るのは弾力がなくなってたるんだ自分。ため息ですよねぇ。

クリスチャンとショーンは40歳の誕生日を迎え、自分の老いを自覚して若干ウツに。私から言わせれば、40歳なんて若造なんだけど、アメリカではもうオールド世代になっちゃうんですかね?

でも、今作は約20年ほど前の作品になるから、そのあたりの認識も変わってきているかもしれないし、40歳の人にばばあ!なんて言ったら完全にセクハラですけどね。

外見の衰えは心をむしばむ

顔の美醜に定義はないけど、自分が自分を好きになれないとか、自分を認めてあげることができないと、精神面が不安定になっちゃいますよね。

そんな問題も浮き彫りにしていたりします。

誰でも平等に歳を取るわけだけど、子育ても終了し、仕事もリタイアしちゃうと人から頼られたり、人の世話を焼いたりってことがなくなります。

すると、焦燥感に襲われ、それが人を攻撃することにつながっちゃうことを描いていたりして、クレームシニアとか頑固シニアを思い浮かべたりしちゃいました。

恋愛依存

精神面の不安定さをもたらすは、外見に対する不満だけでなく恋愛関係も然り。

クリスチャンと付き合っていたキンバーは、とっても美しいのにクリスチャンに執着しすぎてどんどん言動がおかしくなってしまうんです。

これも他人事じゃない。

恋愛って、上手くいっている時は心身ともに無情の喜びをもたらすけど、自分が望んでいない別れや仕打ちを経験しちゃうと、その愛情は憎しみに変わったりするから怖い。

くっついたり別れたり、時には激しく罵りあうのに決定的には離れない不思議な関係のクリスチャンとキンバーですが、キンバーを蔑んでいるように見えて、実はクリスチャンもキンバーに依存しているのかも、と思えるシーンもあります。

ま、お互い様ってことでしょうかね。

必要な外科的処置

例えば、事件に巻き込まれて受けた傷は、そこを目にするだけで被害にあった事実を思い出すだろうから、それはきっちり治療をしてもらった方がいいと感じます。

レイプ被害にあって顔に傷を受けたモデルは、ショーンの素晴らしい腕前と優しいカウンセリングで笑顔を取り戻します。

だけど、ショーンとクリスチャンもモデルを襲った連続切り裂き魔:カーバーの犠牲者になってしまうんですね。

ショーンは顔の傷だけで済んだものの、クリスチャンはレイプ被害にもあってしまい、なかなか立ち直ることができず、それがクリニックの経営やショーンとの関係性にまで影響してきちゃいます。

作品自体は軽快な運びになっているけど、意外と深く考えさせられるようないくつものベースが敷かれているように感じます。

まとめ

U-NEXTでは、ファイナルシーズンまで全話配信中。

私はシーズン2まで見終わったところ。

今後3人の関係がどうなるのか見届けなくちゃだし、クリスチャンが付き合っていたジーナが生んだウィルバーを我が子のようにかわいがっていたのに実父が現れて引き裂かれたものの、どうやら後にクリスチャンの元に帰って来るらしいのでそこも気になる。

今後の展開が楽しみなのと共に、ちょっと古いけどアメリカの美容外科事情なんかも気になるかな。

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こっちはアメリカの最新美容外科ドキュメンタリー。これもすごく面白かったです。