お金は、お金があるところに集まると言います。元々ないところには、入ってきてもすぐ出ていくだけで、一向に集まってきません。
ふぅ。
少し前に日本でも関心の集まったタックスヘイブンの機密文書「パナマ文書」流出事件。これを題材にした著書「The Secrecy World」を基にNetflixで映画化されたのが「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」
この映画を観ればパナマ文書の全容が理解できるか?っていうと、そうでもないけど、実に興味深い映画であることは確かです。
しかも、監督・製作・キャストが勿体ないほど豪華!!スクリーンで十分観られるクオリティなのに、Netflixオリジナル作品になっています。
それもまた時代の流れってことでしょうか?Netflixの熱いオファーでしょうか?それとも力関係でしょうか?
経済に詳しいわけじゃないし、投資に燃えているわけでもないし、タックスヘイブンが必要なほど稼いだこともありませんが、
豪華なキャスト、パナマ文書流出によって解散に追い込まれた法律事務所「モサック・フォンセカ法律事務所」の内情、ブラジル国営石油公社「ペトロブラス」かな?と思われる大富豪の暮らしっぷりなど、一見の価値あり!な作品です。
Contents
Netflix映画「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」概略
原題:The Laundromat
製作年:2019年
製作国:アメリカ
キャスト:メリル・ストリープ、ゲイリー・オールドマン、アントニオ・バンデラス、シャロン・ストーン
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
原作:ジェイク・バーンスタイン
2017年に出版された、アメリカのピューリッツァー賞を受賞したジャーナリスト・作家のジェイク・バーンスタインの著書「The Secrecy World」に基づいています。
ジェイク・バーンスタインは、25年間のキャリアの中で、中央アメリカの内戦、テキサスの産業汚染、マイアミの政治腐敗、ウォールストリートのシステムクラッシュ、オフショアマネーの秘密の世界を扱ってきました。
作品の基になった「The Secrecy World」は、オフショアマネーの秘密の世界を書いた著書であり、映画にはオフショア企業の管理と資産管理サービスを行っていた「モサック・フォンセカ法律事務所」が登場します。
パナマ文書
パナマ文書とは、1970年代から作成されて総数は1150万件に上り、オフショア金融センターを利用する21万4000社の企業の株主や取締役などの情報を含む詳細な情報。
2015年8月にドイツの地方紙『南ドイツ新聞』が、匿名の情報提供者から2.6テラバイトのモサック・フォンセカ法律事務所関連文書を入手したものと言われていますが、国際投資家のジョージ・ソロスが関わっているという説もあります。
ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が、インターネット上で法人や株主らの名前や住所を公開したそうです。
モサック・フォンセカ法律事務所
モサック・フォンセカ法律事務所は、ドイツ系移民の弁護士ユルゲン・モサックとパナマ出身の弁護士ラモン・フォンセカ・モーラが、1977年にパナマの首都のパナマシティーで設立した法律事務所です。
モサック・フォンセカ法律事務所は、オフショア金融センターにおける企業の設立、オフショア企業の管理と資産管理サービスを提供していて、40以上の国に事務所を持っていましたが、パナマ文書流出により評判も信頼も失墜し、2019年3月に解散しています。
「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」キャスト
監督は、数々の作品を世に送り出してきたスティーヴン・ソダーバーグ。映画を観るときに監督が誰か?で選ぶことはないけど、どうやら私はソダーバーグ氏が手掛けた作品は好きな傾向にあるらしい。
「エリン・ブロコビッチ」「オーシャンズ11」「コンテイジョン」「マジック・マイク」「ローガン・ラッキー」「アンセイン 〜狂気の真実〜」全てソダーバーグ監督作品ですが、全部好き!

「アンセイン 〜狂気の真実〜」は日本未公開映画ですが、これが未公開だなんて勿体ない!ホラーじゃないけど、背筋がぞーっとする恐ろしさを感じるおススメの1本。
プロデューサーには、カトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を基にした映画「スポットライト世紀のスクープ」にも携わったマイケル・シュガーも名を連ねています。
夫を水難事故で亡くし、事故の保険について調べていくうち悪徳弁護士のモサックとフォンセカに辿りつく善良な庶民エレンを演じているのはメリル・ストリープ。
悪徳弁護士モサックをゲイリー・オールドマン、フォンセカをアントニオ・バンデラス、ラスベガスの不動産業者ハンナをシャロン・ストーンが演じています。
ふたりで白いスーツなんか着てパナマ帽をかぶっている姿は、正に悪徳弁護士って感じです。アントニオ・バンデラスさんってば、いくつになってもカッコイイ!
シャロン・ストーンは、ほんの少ししか出てこないんだけど、ボディコンシャスなピタピタワンピを着ていて、昔からのセクシーなイメージそのままです。
ざっくりあらすじ
夫と遊覧船で、ジョージ湖の景色を楽しもうと思って乗り込んだエレン。ところが思わぬうねりで遊覧船が転覆、夫が亡くなってしまいます。
事故の保険金を受け取ろうとしたものの、遊覧船を運航していた会社が入っていた保険会社が幾重にも複雑に絡んでいて、実体のない幽霊会社であることが判明。
夫亡きあと、せめて想い出の場所が眺められるところに移り住もうと、保険金を頭金にしてラスベガスにマンションを買おうと決意し、内見に行きますが、担当の不動産業者ハンナから、この物件を倍額現金で購入するお客が現われたから諦めてくれと言われてしまいます。
エレンは、事故の保険会社について調べていくうちに、パナマにあるモサック・フォンセカ法律事務所に辿りつきます。
「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」ネタバレ感想
ドキュメンタリー映画ではなく、ストーリーのある作品にはなっていて、事故で夫を亡くしたエレンが、事件の裏にある悪徳弁護士に行きつくまでの物語の案内人のような役割を担っています。
悪徳弁護士モサックとフォンセカの2人が何故かいつもお揃いの服、またはテイストが非常に似ている服を着て登場し、補足説明をしたり言い訳をしたり、自分たちの見解を語ったりしています。
高い方に流れるもの
日本ではつい最近、消費税が8%から10%に上がり、その前の月には駆け込み需要の様子がニュースで放送されたほど、国民は2%の増税に敏感だということがわかりますよね。
8%から10%に消費税が上がっても、1,000円の買い物なら20円しか変わらないんだけど、それが1年で換算すればきっと数万円にはなるかもしれないわけで、一般市民はこんなに工夫して生活しているというのに・・・
セレブっていうカテゴリーの人々にとっては、消費税が2%上がるなんてことより、数億円、数十億円の資産をどうやって税金を払わずにいられるか、と考えているわけですよ。当たり前か・・
ま、セレブに生まれなかったことを残念に思うしかないかな。
そんなセレブたちの行動を非難しても自分に得はないし、きっと自分が億万長者だったら同じことをしているだろうなぁーと思うし。
課税が軽減または免除される租税回避地である「Tax Haven/タックスヘイブン」のHavenは天国って意味でございまして、絶妙なネーミングです。
タックスヘイブンは、カリブ海の英領バージン諸島、ケイマン諸島、富裕層への税優遇制度の手厚いオランダ、アメリカのデラウェア州など世界中に点在し、日本の富裕層も利用していると言われています。
どんなことでも100%完璧!ってのは非常に難しく、それは税制も然り、だと思うんですね。賢いセレブは、賢い弁護士や会計士と一緒に、たんまりある財産を少しでも減らさないよう、より増えていくよう知恵を絞るんですもん。
能力もお金も情報も、水の流れのように低いところに流れるのではなく、高い方に流れるんです。
富豪のオヤジは女好きだった
ディズニーランドですかっ?!ってほどの敷地に、かくれんぼをしたら絶対に見つけられないだろう豪邸に住んでいる実業家のチャールズ。
娘の親友とできちゃって、自宅の森の中にあるプールでいちゃついているところを娘に見られちゃうんですね。もちろん、娘は大激怒!
ところが、チャールズは妻に黙っていること、卒業パーティにきちんと出席すること、その二つを守れば2,000万ドルの価値がある企業を譲渡すると娘に交渉するんですよ。
娘の親友と別れることは全く考えてないし、反省もしてない。お金で解決できるなら、それがイチバン!ってことよね。だけど、人の心が絡むと物事はそんなにうまくいきません!
後に妻にもバレちゃうんだけど、それより強烈なのが、2,000万ドルの価値があるとチャールズが娘に譲った企業は、実は37ドル程度の価値しかなかったってこと。
オヤジは、娘にも平気でウソをついて騙してたってことですかね?
そのチャールズは、資金洗浄にも関わり、汚職事件を起こしたブラジル国営石油公社ペトロブラスのCEOがモデルかしら?と思ったりして。
悪っそーな面構えですもん。
お金はお金が好きです
原題のLaundromatはコインランドリーという意味。資金洗浄がまるでコインランドリーで洗濯をするかのような感覚だったってこと?かしらね。
日本でもネット通販のトップを走っているAmazon。日本国内の流通総額は公開されていないものの、1兆円は超えると言われていますが、日本で法人税を納めていません。
それを知ってから、一般市民のささやかな抵抗としてamazonでは買い物をしないと決めています。
ところが、Yahoo率いるソフトバンクグループの会長兼社長である孫正義氏も巧妙な節税、脱税が、ある号の週刊現代に「1兆円儲けたソフトバンクが法人税ゼロで、しがない高齢者がなぜ税金を払うのか」と題して記事になっていました。
じゃあ、楽天だ!
残念ながら、楽天の三木谷社長の名前もパナマ文書にあったと言われています。
結局、お金はお金が大好きで、たくさんあるところに集まり、集まると離れないように団結するってことです。
パナマ文書の流出により、モサック・フォンセカ法律事務所は解散を余儀なくされ、モサックもフォンセカも資金洗浄の疑いで逮捕されたものの、3カ月で釈放されたそうですし、ふたりとも死ぬまで働く必要がないほどの貯えがあるはずです。
左が実際のモサック、右がフォンセカ。
日本でも国税が調査をしたそうだけど、どうなんですかね?イタチごっこって、言うんでしょうか。モグラたたきの方がいいでしょうか。
税法ってのは、そんな気がしますけどね。税法を決めのは財務省とか、省庁や業界団体の要望を聞いて税制調査会が取りまとめるとか、そんな感じですよね?
下々には関係なく、政界や業界のお偉いさんが決めるんですもの、自分たちに不利なことはスルーするに決まってる、と思っている私はひねくれてるかしら?
まとめ
パナマ文書やタックスヘイブンのことがよくわかる映画というより、そんな世界観をなんとなく楽しく映画で観てみる、という感じの作品になっていると思います。
全然難しくないし、おバカな奴らが出てきたり、間抜けなシーンがあったりもして、ププっと笑いながら気楽に観られる経済が絡んでいる映画って感じでしょうか。
学生時代は、全く勉強をしてこなかったので、へー!世の中にはこんなこともあるのね、なるほど、こういう世界も存在するのね、という興味を持って観られました。
最初は、え?もしかしたら、メリル・ストリープ?あれ?アントニオ・バンデラス?と半信半疑でしたが、キャストの豪華さも映画に華を添えていましたね。
セレブは別の世界の人たち。一般人の私は、コツコツと働いて節税するほどでもない稼ぎを、きっちり納税するだけでございますね。ふんっ。