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映画「七つの会議」ネタバレ感想/八角は最後までぐうたら社員で終わるのか?

池井戸作品は、ドラマや映画にもなり、たくさんの小説も発表されていて、ファンも多いことと思います。何を隠そう、私もその一人。

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池井戸小説はどれも企業がテーマですし、社会の悪とそれを是正する側の戦い!という主旨は変わりませんが、池井戸作品のファンなら絶対外せない面白い映画になっています。

狂言方和泉流の能楽師の野村萬斎が演じるぐうたら社員「八角」は、最後までぐうたら社員のままで終わるのか?さぁーて!どうなるでしょう?

感想にはネタバレも含みますことをご了承くださいね。


映画「七つの会議」ざっくりあらすじ

舞台は大企業の子会社「東京建電」

猛烈なパワハラ攻撃で、部下に売り上げを伸ばすことを命令している営業部長の北川(香川照之)

そんな中、トップセールスマンの営業1課長が、ぐうたら社員:八角(野村萬斎)からパワハラで訴えられて飛ばされるが、北川の信頼も厚い営業1課長の人事異動に周りのみんなは理解しがたい思いを抱く。

営業1課長の後任に座ったのが2課長だった原島(及川光博)。平凡なサラリーマンとしてやってきた原島は、八角や北川の行動に疑問を感じるようになり、独自に調査してみると、そこには大きな東京建電の秘密が隠されていた。

原作「七つの会議」誕生秘話 池井戸潤氏が語る

サラリーマンを書いたらピカイチ!と私は思っています。

七つの会議が誕生したのは、池井戸潤氏が近所のそば屋に昼食を食べに行ったとき、『知ってる?あいつ、パワハラ委員会にかけられるんだって』というサラリーマン2人組の噂話がきっかけになったのだそうです。

「普通、口だけ動かして自分は何もしないという人がいても、会社の人たちは『あいつはなんなんだよ』と呆れたり腹を立てて終わりですよね。

でも、小説の中では、どうして言っていることとやっていることが違うのか、その謎が解けるわけです。その人がどういう風に育ってきて、どういう考えでそういったことを言っているのか、と。

この本では、一つの大きな不祥事が話に乗っかっているため、クライムノベルという形になっていますが、サラリーマンの日常生活の中にある小さな謎を解き明かすミステリーというつもりで書いてきました」

exciteニュース「池井戸潤さんインタビュー」より

映画「七つの会議」ネタバレ感想

ネタバレ感想その1 野村萬斎は狂言師だ!

全体的に演出もセリフもちょっと大げさな感じは否めず、それが好きじゃない、と思う人には鬱陶しいと感じるかもしれませんが、池井戸作品のファンなら間違いなしの面白さです

無精ひげを生やし、ネクタイを少し緩め、全くやる気がない八角に、狂言師としての野村萬斎の影は見当たらないのに、セリフを聞いていると「狂言師:野村萬斎」を感じます。

ネタバレ感想その2 パワハラ地獄で悪魔のささやきが下りてくる

画像引用元:映画.com

トップセールスマンの営業1課長:坂戸を演じていたのは片岡愛之助。

売り上げ目標クリアを36か月更新している坂戸に対して、毎月目標をクリアできない2課長:原島は、営業会議での北川(香川照之)の叱責と嫌味に耐え切れず、会議室のゴミ箱に嘔吐してしまう。

それでも北川の攻撃はやむことなく、更にボルテージは上がっていく。

慌てて席に戻った原島が座ろうとした椅子が壊れて派手にひっくり返り、原島は会議に出席していた者たちから失笑を買うが、後にこの壊れた椅子にヒントが隠れていることがわかる。

メーカーや販売店は、モノを作ったら売らなければならないわけで、売れなければ社員を養っていけないわけで、そのために手段を択ばずにいたら、こうしたことは現実的に起こりうるわけで、このシーンをわが身に重ねる人もいると思う。

今の世の中、足りないモノってのはほぼないわけで、そんな状況でもお客様に「買っていただく」ために「売っている」立場は知恵を絞る。

その知恵を絞っているときに、悪魔のささやきが下りてきてしまうと、今の日本でもたびたび起こっているデータ改ざんや隠ぺいということが起こるのだろう。

悪魔のささやきが生まれてしまう根本原因は何か?どうなると、悪魔のささやきになびいてしまう心理が働くのか?ということを、「売らなければいけない厳命」の前にきっちりと考えるべきなのでは?と痛感したかな。

ネタバレ感想その3 それぞれの立場は理解できちゃうから悩ましい

坂戸は、売り上げ目標を達成させるために、上司の指示もあり安全基準に達していないねじを作らせ、それを使用しコストダウンを図っていた。

上司の指示に逆らえない部下、大手取引相手の要望に応えざるを得ないメーカー、それによって支えられている売り上げの数字、そして隠ぺいを知っていながら黙認しているトップ。

わかるのよね、それぞれの立場は。逆らえない心理もすごく理解できる。

もし逆らったら自分の人生が変わってしまうかも・・と思うと、恐ろしくて真っ向から勝負する気になんてなれないのよ。うん、うん。

でも、それをやってのけたのが「ぐうたら社員:八角」だったわけ。逆らい難い上司、夫、親、教師などなど、そんな存在がいる人には、八角の行動が痛快だと思う。

ネタバレ感想その4 御前会議という名のトップダウン

安全基準を満たしていないねじが「東京建電」の製品に使われていることを調べ上げ、証拠も掴んで「東京建電」の社長:宮野(橋爪功)に報告するも、宮野は隠ぺいを指示。

しかも親会社から出向できている副社長:村西(世良公則)には秘密にするように言われ、八角は納得できず村西(世良公則)に文書を送る。

そこで親会社ゼノックス社長:徳山(北大路欣也)に報告し、御前会議という名のトップダウンミーティングが開かれる。

余談だけど、この御前会議のシーンは、ヒルトンホテル東京お台場の最大の広さである宴会場「ペガサス」で撮影されたんですって。

広大な部屋の中央にしつらえた大きなテーブルの前に着席しているのは、確か10人ほど。威圧感たっぷりな会議室の様子が、そのまま御前会議と呼ばれているその場の緊張感を表している感じ。

今でも、池井戸作品によく出てくる誰も意見をしないトップダウン会議、ってのは存在するんでしょうねぇ。

以前、Facbookの社内を紹介している番組をテレビで観たとき、マークザッカーバーグは、数名の社員が企画会議をしている場にサクッと出席していたけど、いわゆる老舗企業がそうしたスタイルが取れるようになるのは至難の業なのかしらねぇ。

高度経済成長を遂げ、物作り世界一の地位を築いた日本の昨今の凋落ぶりには、その時代を生きてきた私としては、かなりな失望感もあるわけで、きっと日本人なら何とかなる!と希望的楽観視もしているわけで、御前会議みたいなシーンを見るとより一層日本の未来が心配になっちゃうわけですよっ。

八角は最後までぐうたら社員なのか?

結論から先にバラしちゃうと、ある意味、八角は最後までぐうたら社員。

入社当時からぐうたら社員だったわけではなく、営業活動をしている中でショッキングな出来事があり、それがきっかけで組織に対する失望から出世に興味がなくなり、長いものに巻かれることを拒否するようになるわけ。

でも、東京建電と親会社の隠ぺい工作と戦う姿に、以前はトップセールスマンだった片鱗が!

そして、本質の優しさや人としての情も垣間見え、ものすごく感じ悪い印象だった八角を見直し、サラリーマンとして一番勇気があるのは八角なのかも、と思えてきちゃう。

日本には「持ちつ持たれつ」という言葉があるけど、八角を見ていると、時として「持つことをやめる勇気」も必要なんだな、と思ったり。

映画「七つの会議」まとめ

自分にとって企業人として働くことの意味は?プライオリティは何? 100人のサラリーマンがいたら、価値観も100通り、働く意味もプライオリティも100通り、そして正解はないのだと思う。

八角のように、ある出来事がきっかけになって、「モノを売ること」に対しての情熱を失えば、仕事を続ける意味すらなくなってしまうけど、情熱を奪ったのも自分が属する企業体質であり、上司の考え方によるもの。

だとしたら、希望に燃えて就職してくるであろう若者たちの夢や希望を、企業も上司も握っているとも言えるわけで、その責任の重さをもっと感じて欲しいとも思いましたねぇ

最後の最後、エンドロールが流れるころ、八角に「こうした不正をなくすにはどうしたらいいか?」みたいな質問を弁護士が投げかけると、八角は

『不正はなくならない。でも、正しいことは正しいと言い続けることが大事』と答えるのね。

何事も、簡単な道はない。「地道に教育し続けること」という王道がイチバンの近道なのかもしれない。

さて、あなたはこの映画を観て、何を感じるでしょうか?