記憶に新しいジェフリー・エプスタインの事件を扱ったドキュメンタリー「ジェフリー・エプスタイン: 権力と背徳の億万長者」が、Netflixで配信されていたので鑑賞してみました。
ジェフリー・エプスタインの罪は、売春教唆と児童人身売買。
そのジェフリーと交友関係にあったのが、アメリカ大統領のトランプ氏、元大統領のクリントン氏。イギリス王室のアンドリュー王子などなど。
こんな世界的に名が知られている人が登場しちゃったし、罪状が卑劣極まりないですから、このニュースはかなりセンセーショナルだった記憶があります。
最後は首を吊っての自殺で死亡しましたが、彼の交友関係が白日の下に全て晒されることは本意じゃなかったからじゃないか?
今まで付き合ってきた社会的地位の高い人に迷惑はかけられない、そんな気持ちからの自殺だったのでしょうか?他殺説、暗殺説もあるようです。
真相はもはや闇の中ですが、長年ジェフリーと関係が深かったギレーヌ・マクスウェルに興味が沸いたので調べてみました。
ふたりの生い立ちや経歴を知ると、お互いに必要不可欠な存在であり、お互いに相手がいることで自分の野望が満たされていたことがわかってきます。
Contents
作品の概略
富と権力を振りかざし、虐待を繰り返していた性犯罪者ジェフリー・エプスタイン。その実態を、被害者たちの勇気ある証言とともに検証するドキュメンタリーシリーズ。
Netflixより
ジェフリー・エプスタイン
1953年1月20日 – 2019年8月10日。コニーアイランド、シーゲートの労働者階級の近所で育った。
1971年9月からニューヨーク大学のクーラント数理科学研究所に通い、成績は優秀だったが1974年6月に学位を取得せずに退学。学歴を詐称し教師になり、その後ベアー・スターンズに勤務。
1987年、タワーズ・ファイナンシャル・コーポレーションのスティーヴン・ホッフェンバーグに雇用される。
タワーズ・ファイナンシャルはネズミ講であることが発覚し1993年に破綻。1995年には投資家から4億7500万ドルを騙し取った罪を認めた。
スティーヴン・ホッフェンバーグは、今作の中でインタビューに答え「自分の一番大きな罪は、ジェフリーを雇ったこと」と言っている。
元タワーズの投資家は、盗まれた数百万ドルの投資は、エプスタインのヘッジファンドのシードキャピタルであり、その価値は500億ドルとされていると主張している。
中流の育ちで大学は中退、経歴を詐称して仕事を得ていたジェフリーが、どのようにして巨万の富の基礎を築いたのかは誰も知らない。だからこそ、500億ドルはジェフリーの元にあったのでは?というのも信ぴょう性がある。
生涯未婚。
ギレーヌ・マクスウェル
幼少期
1961年12月25日生まれ、イギリス出身。イギリスのメディア経営者、国会議員であるイアン・ロバート・マクスウェルの9人いる子供の末っ子。
バッキンガムシャー州にある53の部屋を持つ豪邸で育ち、幼少期には家族が所有するジャグジー、サウナ、ジム、プライベートディスコを備えたヨット「レディー・ギスレイン号」でセーリングをしたり、貴族や王族とも交流があったと言われている。
By Andrewrutherford – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
マクスウェルは父親と異常に親密な関係にあり、父親のお気に入りの子供であると広く信じられていた。
1991年に父親がニューヨーク・デイリーニュースを買収した後、ギレーヌはNYに移住。その年の後半、父親がカナリア諸島沖の大西洋で亡くなり、事故死とされたがギレーヌは殺害されたと主張している。それから間もなくジェフリーとの関係が始まっている。
イアン・ロバート・マクスウェルの死後、ミラーグループの年金基金の不正流用を含む、彼の会社の財務の巨大な矛盾が明らかになり、詐欺罪で後を継いだギレーヌの兄弟が起訴されるが無罪。
ジェフリーと付き合うことにより、父親との華やかな生活を取り戻したかのように感じたのかもしれない。
アメリカでの生活
オックスフォード大学を卒業している彼女は、非常に聡明で話題も豊富。社交界では目立った存在でたくさんの知り合いがいたにも関わらず、親しい友人はなく、唯一の友人がジェフリーだったとも言われている。
父親の死後、NYでギレーヌはマディソンアベニューの不動産事務所で働いており、イヴァナ・トランプやアドナン・カショギの息子を含むグループと交際していたと報じられていた。
ギレーヌが最初にジェフリー・エプスタインと出会ったのは1990年代初頭、ニューヨークのパーティーでのこと。
当初は恋愛関係にあったと言われているが、その後何十年も続いた関係はどのようなものだったのかは誰も完全にはわからないが、ジェフリーがギレーヌを「私の親友」と言っていたという証言もある。
2008年、ジェフリーは未成年者を売春のために勧誘した罪で有罪判決を受け13カ月の禁固生活後に出所してからは、ふたりが公の場で一緒にいる姿は目撃されていない。
ジェフリーと誰にも理解できない特別な関係は続いていたが、ジェフリーとの恋愛関係に終止符を打った後、ゲートウェイ・コンピュータの創設者テッド・ウェイトと数年間にわたって恋愛関係にあったと言われている。
また2010年代には、海上データ分析に関わるヘッジファンド投資会社カーゴメトリクスのCEOであるスコット・ボルガーソンと恋愛関係にあったとされている。
2016年には、彼女が住んでいたアッパーイーストサイドのタウンハウスが売却され、ニューヨークのパーティ会場から姿を消し、2019年以降彼女の存在を確認できていない。
そして2019年12月8日、イギリスのタブロイド紙ザ・サン紙は、不明だった彼女の居場所を明らかにできる人に1万ポンド(約134万円)を提供した。
ギレーヌの罪
ギレーヌは、ジェフリーを助長したとしてFBIの捜査を受けている人物の1人であると報じられたが、2020年1月30日現在、マクスウェルに代わって3件の訴訟の送達を受けることを拒否。
彼女は、かかった嫌疑について全て否定。2020年3月12日には、米領ヴァージン諸島の高等裁判所に、エプスタインの遺産から彼女の弁護士費用の補償を求める訴訟を起こした。
法廷文書の中で ジェフリーを告発した人たちは ギレーヌがリクルーターとして、また少女たちの指導者として働いていて、いくつかのケースではジェルフィーが実践していた虐待に参加していたと主張。
裁判での宣誓証言によると、家計費はギレーヌ名義の銀行口座から支払われていたと説明しているが、ジェフリーから給与は支払われてないと言っている。
感想
ふたりの関係
知り合ったのが1991年、それ以来数十年に渡り関係が変化しながらも続いていたジェフリーとギレーヌ。
最初は恋人同士だったようだけど、それ以降は、お互いの欲望を満たすためになくてはならない存在になっていったように思うんですね。
ジェフリーは社交的ではなかったとも言われているので、ギレーヌの華やかな人間関係を利用することで政財界や王室とも親しくなっていったし、
一方のギレーヌは父親の罪により幼少期の豪華な生活が危ぶまれたものの、ジェフリーと一緒にいることで当時の生活を蘇らせることができたはず。
「ギスレーヌは父親と同じようにジェフリーに恋をしていた」
「半分は元カノ、半分は従業員、半分は親友、フィクサーのようだった」
と彼女を知る人が言っています。
ふたりの関係がスタートしてほどなく10代の姉妹が毒牙にかかり、警察に訴えたけど何もしてもらえず、その後FBIにも行ったが結果は同じ。
そこから数年後、2005年に別の少女がフロリダ州パームビーチ警察に訴え、パームビーチ警察が捜査をスタートし、結果的に最初の有罪につながっていきますが、1999年からジェフリーが2017年に再逮捕されるまでの約20年もの長きにわたり、少女を凌辱する獣は野放しにされていたってことになりますよね。
しかも、ギレーヌという忠実なリクルーターが手助けをして、被害にあった少女はパームビーチ警察が入手したデータだけでも48人にも上ったというから、もっと早く何とかならなかったんですかっ!と腹が立つ。
本当は自信のない小物だったジェフリー
政財界の大物と懇意であるとか、困ったことは何でもお金で解決できるほどの力があるとか、ジェフリーもギレーヌも世間に信用されている表の顔があり、彼らの薄汚い日常に気づいていた人は少なかった様子。
今作を観ていると、パームビーチ警察のマイケル・ライター署長の尽力は大きく、彼の信念と正義感あってこそ、起訴に持ち込めたんじゃない?と感じます。
ジェフリーに対する評価は
「彼は感情的に幼稚で、発育不全で、内面の世界がなかった」
「彼はとても自信がなくて、いつも腕にモデルが必要だった」
など、自信のなさをお金で買っていたような節もあります。
大学や研究所に多額の寄付をして、研究者と親しくなることも、ジェフリーのコンプレックスによるものじゃないか?と私は分析したんですけどねぇ。
少女たちを次から次へと調達して、自分の欲望に任せた行為を続けることに罪悪感はなかった様子だけど、そうすることで自信のなさを補い、やっとギレーヌが紹介してくれる世の中の大物と対峙することができていたんじゃないか?と思うんですね。
ハンサムだとかいう評価もあるけど、卑しいくたびれたおっさんですよね。大人は生活や価値観、心情が顔に出ますから。
大体、小児性愛者ってのは自分が大人になりきれない男、または大人の女性を相手にできない自信のない奴がやること!ですから。
精神科医によると、小児性愛者たちは病気なんだそうだけど、例えばお酒やギャンブルへの依存症なら被害者がいないけど、虐待や強姦は被害者がいて、被害者たちは一生心の傷が癒えることはありません。
なのに、ジェフリーは1回目の有罪では、自分の力と財力をフル活用して、たった18ヶ月の刑に収まってしまいます。
秘密裏に7ヶ月にもわたり捜査をし、ようやく家宅捜査にこぎつけたのに、いざ家に行ってみると内通者がいたらしく、家から証拠になるようなものはすべて持ち出されちゃってるわけ。
その内通者に対しても、きっとお金を積んだに違いない。腹立つよねー。
被害者の少女たち
ジェフリーとギレーヌは狡猾で、自分たちの言うことを聞きやすい、言うことに従う少女たちを狙い、その少女が拒むと代理を立てるように要求します。
彼らに狙われた14歳から17歳の少女たちは、親が薬物依存症だったり、育児放棄していたり、家庭に居場所がない子が多く、彼らの誘いに比較的簡単に応じてしまうんですね。
でもね、それって責められない。居場所がなく孤独だと、どこかに自分が落ち着くところを求めるだろうし、お金がなくて家を出ていくこともできない状況だと、少し我慢すれば・・・と安易に思っちゃうわけです。
しかもジェフリーは、その少女が欲しがるような留学や進学、海外旅行などのエサをちらつかせ、若くて美しい女性を常に求めていたわけです。
少女たちにしてみれば、豪邸に遊びに行ったり、プライベートジェットに乗ったり、行ったこともない世界に連れて行ってもらう経験で洗脳されてしまいます。いや、麻痺しちゃうのかな。
それは彼女たちのせいじゃなくて、家庭環境や生活環境が整えられなかった大人の責任だと感じます。どうかしら?
ジェフリーが所有していたカリブ海の島で働いていた男性は、ジェフリーから娘の年齢を聞かれ、うちに連れてこないかと誘われた次の日に仕事を辞めています。
それが父親としての義務と愛情だと感じるんだけど、そうした対応ができない親もいるわけで、それが不幸の始まりになっていたりもしますよね。
体は大人になりかけていてもマイケル・ライター署長曰く「自分の身に起きていることを理解するには未熟」と。恐怖の環境に置かれると、思考は停止しちゃうから。
ジェフリーは自殺だったのか?
2019年に起訴され、家宅捜査が行われた時には、大量の証拠となる写真が見つかったとのこと。
2005年にパームビーチ警察が家宅捜査したとき内通者がいなかったら、そこで逮捕起訴され被害者も少なかっただろうにと思うと、世の中の強欲な大人たち!罪深さを思い知れ!と思います。
自分の将来を悲観して、独房でシーツを使い首を吊ったとされているジェフリーの死について、弟が異議を唱え司法解剖が行われました。
その結果、自分で首を吊って首が前に倒れた状態では、絶対に起こり得ない首の骨の3か所の骨折が見つかったそう。
だけど、それ以上のことはわからず、他殺とも暗殺とも噂されている。陰謀論が消えないのも、ジェフリーの死によってホッと胸をなでおろしたに違いない大物がたくさんいたからだわね。
最後までクソ野郎だった
自殺する2日前にジェフリーは、自分の財産5億5千万ドルをバージニア諸島に移し、それによって賠償金が支払われにくくなるらしいんですね。
被害者側の弁護士たちは「全く反省の気持ちもなく、最後まで守銭奴だった」と言っていました。
少しでも申し訳ないという気持ちがあれば、全ての被害者に対して過去は消せないまでも余りあるお金で多少なりとも償おうとするだろうから、どれだけ金持ちであろうと、有名であろうと、彼の人生そのものがクソだったってこと。
まとめ
どんな結果になろうと、被害者の傷が癒えることは決してないだろうけど、世間がきちんと自分たちの問題に向き合い、そして正しい制裁が下されたことは大きな支えにはなると思いたいです。
こうしたドキュメンタリー映画が製作される意図は、決して興味本位ではなく、同じような事件が起こらないこと、人々が正しい判断力を持つこと、声を上げることの大切さなどなどを世の中に知らしめるためではないでしょうか?
被害者たちの声は、聴いていると胸が痛くなってくるし、ジェフリーのような大人の皮をかぶった卑劣で未熟なオトコは世の中にたくさん隠れているだろうから、子どもたちがそうした獣たちからきちんと守られるようになればいいなと心から思います。
ちょっと重いけど、いろんなことが学べるドキュメンタリーでした。