映画「ハリエット」は、1800年代のまさに南北戦争時代、奴隷解放運動を行った実在の女性「ハリエット・タブマン」を描いた作品になっています。
ハリエットは、2020年に新しくなる20ドル紙幣の表にデザインされることも決まっています。
ハリエットさんという、奴隷解放に尽力した女性がいたことをご存知でした?私は全く知りませんでした。
学生時代、歴史は苦手でしたし、全く興味もなったけど、映像で観られるって素敵よね。
少しでも予備知識を入れておこうと思って、ハリエットさんについて調べてみました。
映画が完璧に事実とイコール、ということはあり得ないので、そのあたりも承知のうえで観なくちゃダメよね。
もしご興味がありましたら、読んでってくださいましぃ。
作品の概略
原題:Harriet
製作年:2019年
製作国:アメリカ
キャスト:シンシア・エリボ、レスリー・オドム・Jr.、マーゴット・ロビー
監督:ケイシー・レモンズ
脚本:グレゴリー・アレン・ハワード、ケイシー・レモンズ
製作:グレゴリー・アレン・ハワード他
アフリカ系アメリカ人女性として、初めて20ドル紙幣に採用された奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの激動の人生を描いた作品。
元々、今作の台本はディズニーによって書かれたものでしたが、ディズニーで映画化されることはなく、脚本の権利を放棄したためユニバーサル映画から配給されています。
ハリエット・タブマンを演じるのは、ミュージカル女優シンシア・エリボ。
「ロストマネー/偽りの報酬」では、パワフルなベビーシッター:ベルを演じています。

女性奴隷解放運動家ハリエット・タブマンとは?
Why Harriet Tubman’s story is more relevant today than ever. #HARRIEThttps://t.co/ZsjXFF09gQ
— #HARRIET (@HarrietFilm) December 10, 2019
1820年か1821年にメリーランド州ドーチェスター郡で生まれ、1913年に亡くなったとされているので、過酷な人生ではあったけど、90歳を超える長寿だったんですね。
生まれたときの名前は「アラミンタ・ロス」でしたが、母親の死後、母の名前を受け継いで名乗っていたようですが、タブマンというのは夫の姓で、改名時期は結婚直後という説もあります。
5歳のときにはすでに子守りとして働き、雇い主が亡くなったことをきっかけに、北部のフィラデルフィアへ逃亡している途中に、奴隷解放運動主義者で非合法組織である地下鉄道を支援していたクェーカー教徒に助けられます。
地下鉄道とは
19世紀アメリカの黒人奴隷たちが、奴隷制が認められていた南部諸州から、奴隷制の廃止されていた北部諸州、ときにはカナダまで亡命することを手助けした奴隷制廃止論者や北部諸州の市民たちの組織
ハリエットは、奴隷解放運動家と交流を持つようになりますが、1850年には脱走奴隷を助けることを違法とする「逃亡奴隷法」が設立。
そして、ハリエットは助けられた「地下鉄道」組織へ加わり、自分の両親を含むたくさんの奴隷を導いた中、彼女には「逃亡奴隷」として懸賞金が懸けられますが、1度も捕まることなく活動をつづけたそうです。
1903年には「高齢者や貧しい人々」のための家にするという指示の元、彼女が所有する不動産を教会に寄付し、ハリエットタブマン老人ホームが1908年6月23日に開業。
ハリエットは、その5年後の1913年に肺炎で死亡。2020年に行われる予定の新20ドル札の表面のデザインが、ハリエット・タブマンに決まっています。
アメリカで出版されている下の伝記には、日本語の翻訳本はないようですが、2番目の本は日本で出版されたハリエットの伝記本。
精力的な活動
ハリエットは故郷から脱出して以来初めて、1851年にドーチェスターに残してきた夫の元に戻りますが、夫のジョンは別の女性と結婚してしまいます。
ハリエットは、ジョンとその妻を逃亡させようと試みますが、ジョンは「この地で幸せだ」と拒否。ジョンはその16年後、道端で白人と口論の末に殺されてしまいます。
1859年の初頭にハリエットは、奴隷制度廃止派で共和党のアメリカ合衆国上院議員ウィリアム・H・スワードから、ニューヨーク州オーバーン郊外の土地を1,200ドルで購入。
土地を購入したことが、寒いカナダにいた両親を呼び寄せるきっかけにもなったものの、両親がアメリカに戻るということは、逃亡奴隷法の危険に晒されることにもなるため、カナダにいた彼女の兄弟たちは留保しています。
オーバーンの家では、複数人の黒人たちが暮らすようになります。
ある時、ハリエットはメリーランドからマーガレットという8歳の姪を連れてきます。
マーガレットには双子の弟がいましたが、両親と弟はメリーランドに置き去りにしたままだったため、後にマーガレットの娘:アリスからハリエットの行動は利己的だったと非難され「彼女はマーガレットを保護された環境から、世話する人がいない場所に連れて行った」と言われます。
アリスはハリエットの行為を「誘拐」と表現したいたものの、実はマーガレットはハリエットの娘だった可能性もあったそうですが、未だに真相はわかっていません。
ハリエットの妹レイチェルとその子どもたちを逃亡させることが叶わないまま、レイチェルは死亡し、子どもたちが残されてしまいます。
子どもたちはひとり30ドルの賄賂があれば救うことができたけど、お金がなく子どもたちは奴隷のままでその後どうなったかは不明。
当時は親が奴隷だと、その子供に選択肢はなく、奴隷として売買されていました。
そしてハリエットは、1860年11月に最後の任務として、厳しい旅にはなったものの、子どもを含めたグループをメリーランドからオーバーンへと連れて帰ることに成功。
南北戦争時代
大好きな映画のひとつが「風邪と共に去りぬ」ですが、ハリエットは「風と共に去りぬ」に描かれていた南北戦争を戦い、生き抜いてきた黒人女性です。
1850年に「逃亡奴隷法」が設立し、1861年に南北戦争が勃発。ハリエットは看護士として働きながら、北軍のスパイ及び軍の偵察を担っていました。
看護士として、多くの赤痢や天然痘の軍人を救います。また、ハリエットは南北戦争中に武装攻撃を行った最初の女性として、プランテーションの襲撃にも同行しています。
コンバヒー川の襲撃では、750人以上の奴隷が救助され、新聞では彼女の「愛国心、聡明さ、活力、能力」と、解放された男たちのほとんどが北軍の軍人になったことの活動を称賛していました。
北軍勝利の元、1863年1月が解放宣言が発行されたとき、当時の大統領エイブラハム・リンカーンが南部の奴隷解放に対する準備ができていなかったことを受け、ハリエットはそれを批判します。
北軍が勝利した後もハリエットは北軍のために働き、南軍が1865年4月に降伏した数か月後まで労働奉仕をした後、オーバーンに戻ります。
アメリカ人種差別を扱った作品





アメリカの映画やドラマには、人種差別を題材にした作品がたくさんあって、胸が痛くはなるけどどれもこれもとてもいい作品です。
明るい作風の「ヘルプ 心がつなぐストーリー」はとても好きな作品でしたし、それぞれの立場の違いを超えた友情を描いた「ブラインドスポッティング」もご機嫌な映画でした。
「グリーンブック」は、きっと誰でもがグッときちゃうだろうラストシーンでしたしね。
ただ、今あげた3作は、それほど過酷な描写はないし、どちらかと言えば現代に近い時代を描いていますが、1800年代、南北戦争の頃はもっともっと想像できないほどに過酷だっただろうと思います。
日本は単一民族だし、人種による差別はないものの、差別というのは、自分の優位性を示すために他の人を貶める行為のような気がするんですね。
だけど、人に優劣はないんです。人の心が生むものです。
能力の差や、貧富の差、学歴の差、体格の差、容姿の差、みんな違うけど、それらは全て個性です。
ということはわかっていても、誰かと自分を比べたくなるのが人の心理。
そんな気分に陥っちゃった時に、こうした映画を観ると、自分のプライドや価値観がどんだけちっちぇーか、狭いか、貧しいか、ということを突きつけられる気がします。
イジメも差別です。
人をイジメることでしか、自分の優位性を感じられないとしたら、心の狭い、ちっちぇーヤツです。
映画「ハリエット」でも主人公は、実在した黒人奴隷の開放に尽力した女性。今でも人種差別はなくなっていないというのに、それが150年以上も昔、彼女の戦いがどれだけ過酷で厳しいものだったことか、想像できる範囲を優に超えていることだろうと思います。
海外の反応は?
IMDbのレビューによると女性からの指示の方が得点が高いのは、女性が主役の映画だからでしょうかね?
実在の人物より大きな人を器用し、特定できない人々や起こらなかった出来事を挿入することで、何が得られるのでしょうか?
ハリエット・タブマンの実際の映画を見たい場合は、シシリー・タイソン版の「モーセと呼ばれる女性」をご覧ください。
ストーリーが本来あるべき姿で明確に描写されていなかったということは、アフリカ系アメリカ人に対する侮辱のようなものです。
ハリエットはヒーローですが、スーパーヒーロー映画として演じられました。それは偉大さを描いたというよう、冗談のようでした。
数千はあったレビューの中からたったふたつのマイナスレビューを取り上げただけなので、こうした意見が全てではないことをご理解いただきたいのですが、今作は事実には基づいているけど、決して全てが事実ではない、ということをしっかりわかった上で鑑賞しないといけないということを言いたかったんですね。
アメリカの歴史をこの映画で観た!と思ってしまうと、エンタメならではの脚色もあるだろうし、俳優ならではの解釈も乗っかっていると思うんですね。
なるほど、このような事柄があって、今のアメリカがあるんだ、みたいなざっくりとした感覚で観るべきかな、と私は思います。
さて、どんな作品に仕上がっているのでしょうか?2020年3月に公開予定でしたが、コロナウィルスの影響で公開延期となっています。公開日程は今のところ未定です。