Netflixのオリジナル映画「ハーフ・オブ・イット面白いのはこれから」を鑑賞してみました。
長く続く自粛生活の中で、爽やかな青春ラブストーリーを観るという選択は、心の浄化になるかもしれません。
主人公のエリーは、イケてるわけじゃないし、目立つ存在でもないし、どちらかと言えばダサい。だけど、とびっきりかわいくて表情が豊か。
そして、そのエリーにラブレターの代筆を頼むポールってのが、またまた朴訥でナイスです。
ラブストーリーは苦手だけど、そこにフォーカスしすぎていない物語がとても素敵だったし、遠い昔の学生時代のあれこれを思い出させてくれる清涼感たっぷりな作品でした。
3人のキャスト紹介と感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。
作品概略
原題:The Half of It
製作年:2020年
製作国:アメリカ
キャスト:リーア・ルイス、ダニエル・ディーマー、アレクシス・レミール
監督:アリス・ウー
脚本:アリス・ウー
今作は配信スタートわずか1週間で、予告編が450万回以上の再生回数を記録。ニューヨークでのトライベッカ映画祭では、2020年の最優秀アメリカ物語長編映画賞を受賞。
アリス・ウー監督は、マサチューセッツ工科大学とスタンフォード大学でコンピュータサイエンスを学び、学士号と修士号を取得後、マイクロソフトでソフトウェアを設計する仕事をしていた才媛。
2004年のデビュー作「素顔の私を見つめて」の脚本がCAPE(Coalition of Asian Pacifics in Entertainment)の脚本賞を受賞。彼女自身が、レズビアンであることが反映された作品でもあるが、それ以降の作品はなく、16年ぶりの復活作になっている。
ざっくりあらすじ
スクアヘミッシュという閉鎖的な田舎町で父親とふたりで暮らしているアジア系アメリカ人のエリーは、優秀だけど内向的で友人もいない。
ある日、ポールにラブレターの代筆を頼まれたことで、ポールと徐々に親しくなっていくが、ポールがラブレターを渡したい相手は、エリーも密かに思いを寄せるアスター。
3人の恋の行方はいかに?
キャスト
エリー・チュウ
リア・マリー・リャン・ルイス
1996年12月9日生まれ、子役からキャリアをスタートさせた中国系アメリカ人女優。
生後8ヶ月の時、中国上海の孤児院から養子に出され、フロリダ州ゴータで育つ。
10代の頃は、母親と一緒にロサンゼルスとオーランドを行ったり来たりしていたが、18歳でオーランドに戻り、オーランドのオリンピア高校で高校を卒業し、19歳で単身ロサンゼルスへ。
2012年のニコロデオン映画『Fred 3: Camp Fred』にスプーン役で出演。2015年と2016年には、ディズニー番組「Best Friends Whenever」や「Gamer’s Guide to Pretty Much Everything」に出演。
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母を早くに亡くし、優秀だっけのに無気力になってしまった父親と、スクアヘミッシュという田舎町で貧しい二人暮らし。
駅関係の仕事をしている父を手伝ったり、クラスメイトたちからレポートの代筆を有料で請け負って生活しています。
友人は少なく、自転車で学校に通っているエリーは、帰宅途中、ポールに話しかけられます。
レポートの代筆依頼かと思いきや、ラブレターの代筆を頼まれたエリー。ポールが書いたラブレターはひどいもので、代筆を請け負ったエリーでしたが、恋の経験がないエリーにはレポートより難題だった様子。
ポール・マンスキー
ダニエル・ディーマー
1996年6月21日生まれ、カナダ出身。カナダ・バンクーバーでモデルや俳優としてキャリアをスタート。身長191センチ。
600人もの俳優をオーディションした結果、ポール役としてのダニエルが見出された。23歳でこの役を得て、彼のソーシャルメディアのフォロワー数は3倍に増加。
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アメフト部に所属している朴訥な青年ポール。実家はダイナーを経営していて、手伝っているポールはエリーやエリーの父親に自家製ソーセージ・タコスを振舞ったりする優しい青年。
同級生のアスターに恋をして、それを告白するラブレターの代筆をエリーに依頼します。
エリーとポールは、アスターへ渡すラブレターを書くためにミーティングを重ね、距離を縮めていきます。
さて、ポールの恋の行方は?
アスター・フローレス
アレクシス・レミール
1996年5月30日生まれ、アメリカ・ニューハンプシャー州のロンドンベリー出身。
2016年からプロとして活動し、Elite Forceが初出演作。眼だった実績はほとんどなく、主にInstagram等ソーシャルメディア上でアクティブだった様子。
俳優ジェイク・ショートのガールフレンドとして有名になったころは、モデルとして活躍していた。
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学校の中でも美しさが際立つ存在で、ステディなボーイフレンドもいて、漠然と彼と結婚するのかな、と考えているアスター。
ある日、学校の廊下でエリーが手に持っていた教材を落とし、それを拾う手伝いをしてくれたのがアスター。
エリーが名乗ると、「知ってるよ。日曜礼拝でオルガン弾いてるよね」と笑いかけます。動揺するエリー。アスターの笑顔は、人を惹きつける魅力があるのでしょうか。
感想
青春ロマンティックストーリーとでも言いましょうか。ラブストーリーは苦手ですが、これはまるでミントガムを噛んでいるかのような清涼感を味わえる素敵な物語でした。
アリス・ウー監督自身がカミングアウトしているレズビアンであり、主人公のエリーもアスターという美貌の女子に恋をしている女の子。
自分で告白するつもりなんぞ毛頭なかっただろうけど、そこに同じ相手に恋をしているポールが加わったことで状況が変わっていきます。
そもそも恋愛をしたことがないし、ましてや異性との付合いもないエリーは、ポールからアスターへのラブレターの代筆を頼まれて戸惑うんだけど、ポールから「恋は未経験なのか?」と聞かれ、動揺しながらも「ラブレターくらいかける」と言い切ります。
その様子のかわいいこと。
エリーは優秀だけど家庭の事情で諦めていた遠方の大学への進学も、ポールのラブレターを代筆し、アスターと時間を共有したことで気持ちに変化が訪れるんですね。
何か新しいことに巡り合ったり、小さくても環境に変化があるとその結果、心境に変化が訪れ、人生すら変わっていくってことです。
今作で軸になるエリー、ポール、アスターの3人を演じているのは、ほぼ無名のフレッシュな俳優たち。3人とも20代ながら、高校生のフレッシュさと初々しさを存分に発揮しています。
エリー
幼いときにアメリカに移ってきた両親の元に生まれたアジア系アメリカ人のエリーは、成績優秀で先生からある大学を推薦されるものの、貧しい自分の環境を考慮し、実家から通える大学にすると言います。
どれだけ成績が優秀だろうと、置かれた環境によっては、輝かしい道を断念しなければならないことがあるのは非常に残念。
エリーの父親は工学博士で優秀だったのに、英語が得意じゃないということで経歴に相応しい仕事に就けないまま、すでに諦めてしまっています。
優秀なら英語を勉強すればいいじゃん!と思うけど、閉鎖的な田舎町ではそれだけでない人種差別があるだろうことは推測できます。
エリーも帰宅するときに自転車を漕いでいると、車に乗った男子たちに必ず「チュウチュウ・エリー」とはやし立てられてるんですね。
そんなエリーにある日、ポールがラブレターの代筆を頼んだことで、エリーが変わっていきます。
ポールがラブレターを渡したい相手は、自分も密かに憧れていたアスター。最初は思うように書けなかったんだけど、父親が観ていた映画からヒントを得て書くようになり、
次第にエリーは、自分がアスターに抱いている恋心をそのまま綴るようになって、それは思いを告白するというより、知性の詰まった日記のよう。
でもまあ、ポールにその文章が書けるはずはなく、実際のデートにこぎつけたときは、無茶苦茶な外しっぷりでしたけどね。
ポール
滅茶苦茶な外しっぷりのデートだったものの、それでもアスターがポールに幻滅しなかったのは、ポールという青年がすごく温かくて素直ないい奴だったから。
エリーにラブレターを頼む初回、自転車のエリーを追いかけるんだけど、なかなか追いつけない。
だけど、日々自転車のエリーを追いかけ、追いつく努力をしてるうちに、ポールはエリーの自転車と並走しながら会話ができるようになっちゃう。
そして、部活のアメフトで試合をしたとき、ポンコツチームだったのにポールが相手をぶっちぎって1点だけ得点を入れるんです。
毎日、コツコツとラブレターのために走っていたことが、こういう思いがけない結果を生むんだ、とわかると、例えポールが恋愛で玉砕されちゃったとしてもちゃーんと別の成果が残ったということになりますから。
このシーン、個人的に非常に好きです。
ポールは、エリーとのラブレターの打ち合わせで度々エリーの家を訪れるようになっていて、エリーの父親とも交流を深めていきます。
特別なことを話すわけでもなく、ふたりでソーセージ・タコスを作るだけなんだけど、そうした丁寧な日常がポールという温かい青年を育てるのかな、と温かい気持ちになります。
そして、学校の音楽発表会みたいな場で、エリーはピアノを弾くことになっていたものの、悪ガキたちのいたずらで鍵盤が狂っていて弾くことができませんでした。
呆然とするエリーに、ポールは舞台袖からそっとギターを滑らせます。やるよね、ポール。
本当に素敵な男子ってのは、見た目のカッコよさやオシャレさや背の高さや筋肉じゃなくて、こういうことがさらっとできるかってこと。
ということは、歳を重ねるとわかるんだけど、どうしても見かけに惑わされちゃうのが若さってことかな。
アスター
ポールもエリーも思いを寄せる美少女です。しかも、ただかわいいだけでなく知性もあり、顔がいいからっていい気になってんじゃなよ的な意地悪さもありません。
エリーが「アスターのどこが好きなの?」と聞くと、考えてから「かわいくて賢いところ」とポールは答えます。確かに間違っちゃいないけど、その時エリーがつぶやくアスターの魅力の方がうんと深い。
それは感受性の違いでしょうかしらね。
だって、自分が好きな人のどこが好きか?と聞かれた時、詩人のような答えが出てくる人がどれだけいるでしょうか?
普通は、かわいいとか賢いとか、料理が上手いとか、本当はそういう単純な形容詞では表現しきれないところに惹かれているとしても、それを言葉にするってとても難しい。
ある出来事から、アスターはもしかしてラブレターはエリーが代筆している?と言うことに気づくんだけど、それを言葉にはしない。何故言わなかったのか?
それは観ている人それぞれに感想は違うかもしれないけど、「言わなかった」ところもポールやエリーが惹かれたアスターの知性的な魅力なのではないか?と感じます。
LGBTQがあまりに自然
今作ではエリーがアスターに恋をしているというところでは、LGBTQ的要素なのかな?とは感じるものの、それが何か?そこを感想で取り上げる必要ある?と思えるほどに自然だったと感じました。
1969年にニューヨークで実際に起きた同性愛者迫害に対する暴動を基にした映画「ストーン・ウォール」では、世の中からの迫害や偏見と闘う姿が描かれていました。

それから約50年。今でも偏見が全くなくなったわけじゃないし、田舎や封建的な地方に行けばまだまだ白い目で見られることがあるかもしれないけど、時代は大きく変わり特別なことではなくなっています。

この作品では、精神科医がゲイだったし、私が大好きな「ドラゴンタトゥーの女」のリスベットはバイセクシャルですしね。

いろんな性格の人がいるのと同じように、誰を好きになるか、ということも個性です。
この作品では、とてもさりげなくエリーが同性に恋をしていることが描かれていて、本作をたくさんの若者が鑑賞することでより偏見がなくなり、LGBTQであることによるイジメがなくなっていけばいいなと思います。
まとめ
基本、サスペンスやアクション、比較的暗い映画が好きだけど、たまにはこういう清涼感たっぷりな作品も心が洗われていいかも、と感じたかな。
映画館では絶対観ないカテゴリーだけど、それをサクッと家で観られるのが、動画配信サービスのいいところですよね。
コロナの影響で映画館には行かれなくなっているので、ホント!ありがたいです。
さて、次は何を観ようかなぁ。