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Netflix映画「アイリッシュマン」でロバート・デニーロが演じるフランク・シーランという男

Netflix映画「アイリッシュマン」では、ロバート・デニーロとある・パチーノが共演。

これはもう私にとって「観なくちゃいけない作品」という位置づけでございます。

ロバート・デニーロ演じるのが、チームスターという全米トラック運転組合の幹部として活動していたものの、マフィアのブファリーノ・ファミリーと共に犯罪行為に手を染めてきたフランク・シーラン。

アル・パチーノが演じるのは、チームスターの指導者を務めていたジミー・ホッファ。ブファリーノが二人を引き合わせ、親友とも言われていたのに、フランクはジミーを暗殺したと告白しているんですね。

今作は、チャールズ・ブラントが2004年に発表した『I Heard You Paint Houses』を原作としたノンフィクション映画になっています。

ロバート・デニーロが演じるフランク・シーランがどんな人物だったのか?について掘り下げてみたいと思います。

Netflix映画「アイリッシュマン」概略

元軍人のフランク・シーランは、20世紀、悪名高い人物たちの傍らで動いていた暗殺者。

数十年が描き出される本作品では、彼の視点で第二次世界大戦後のアメリカ裏社会が語られる。

労働組合指導者ジミー・ホッファの謎に包まれた失踪事件が描かれると共に、内部事情、主導権争い、政権とのつながりといった闇の面にも焦点が当てられる。

Netflixより

原題:The Irishman
製作国:アメリカ
キャスト:ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ
監督:マーティン・スコセッシ
原作:チャールズ・ブラント
脚本:スティーブン・ザイリアン
上映時間:210分
配信期間:3週間

ロバート・デニーロが演じるフランク・シーランという男

生まれと軍人時代のフランク・シーラン

フィラデルフィア郊外のペンシルベニア州ダービーという労働者階級が多く住む小さな町で誕生。身長は193センチもあったんですって。

1941年8月に陸軍に入隊。ミシシッピ州ビロクシ付近で訓練を行い、軍警察に配属。シーランは411日間という長期の戦闘任務を務めました。

シーランは後に、戦争で最初に人の命を奪うことになったとき、自分は冷静だったと語っていたそうです。

原作者チャールズ・ブラントとのインタビューでフランク・シーランは、戦争での虐殺を以下の4つのカテゴリーに分けています。

  • 復習の殺人
  • 司令官の命令
  • ダッハウの虐殺
  • ドイツ人捕虜の人間性を奪うため

ダッハウの虐殺とは、1945年4月29日のダッハウ強制収容所(ナチス・ドイツの強制収容所)解放後にアメリカ陸軍によって行われた、収容所職員および戦争捕虜に対する虐殺行為のこと。

フランク・シーランは、1945年10月24日に陸軍から除隊されます。

除隊後のフランク・シーラン

戦争から復帰すると、シーランはペンシルベニアに移り、アイルランド移民のメアリーと結婚し、3人の子供に恵まれましたが、1968年に離婚。

その後、アイリーンという女性と再婚しています。

フランク・シーランは、除隊されたのちトラック運転手になり、お金を稼ぐために殺人を請け負っていました。

マフィアのボスであるラッセル・ブファリーノとアンジェロ・ブルーノと親しくなり、生涯を通じてフランク・シーランが指導者としていたのは、イタリア系アメリカ人マフィアのブファリーノファミリーの長であるブファリーノだったそうです。

画像引用元:IMDb

フランク・シーランの犯罪

1972年4月7日にウンベルトのクラムハウスで、「クレイジージョー」として知られるアメリカのギャング「ジョー・ギャロ」を殺害したと疑われていましたが、後に目撃者が現われシーランの仕業と確認されています。

ブファリーノが、1903年に結成され今も続いているアメリカとカナダの連合労働組合であるInternational Brotherhood of Teamsters(IBT)の指導者だったジミー・ホッファにシーランを引き合わせ、ふたりは親友となったものの、シーランの仕事は反抗的な組合員やチームスターを脅かすライバル組合員の暗殺が含まれていたと言われています。

組合は政治家やマフィアとのかかわりもあり、ジミー・ホッファは詐欺や賄賂の罪で1967年に投獄され、13年の有罪判決を受けています。

ジミー・ホッファは1975年7月下旬に姿を消し、1982年に死亡宣言されていますが、ジミー暗殺にシーランが関わっていたと言われていて、原作者のチャールズ・ブラントは、フランク・シーランがジミー・ホッファの暗殺を自白したと主張しています。

この動画はジミー・ホッファ失踪の謎に迫る!的な番組。最初の方の白黒動画に映っているのがジミー・ホッファ。少し後の白黒動画になったところで、長身の男がフランク・シーランです。

16分越えの長めの動画だし、字幕は入っていませんが、もしご興味があれば!と思って貼り付けてみました。

フランク・シーランは、2003年12月14日にフィラデルフィア近くの養護施設で、癌のため83歳で亡くなっています。

アイリッシュマンの感想

ものすごくありきたりな感想ですが、やっぱりロバート・デニーロってすごいです。フランク・シーランは、もっと激しい性格なのかと思っていたけど、激しかったのはアル・パチーノが演じていたジミー・ホッファ。

当時アメリカでは、労働者階級の男性にカリスマ的人気があったと言われていますが、その片鱗が映画の中での演説に見られます。

何をやったか、何をやろうとしているか、ということも大事だろうけど、ジミー・ホッファの演説を聞いていると、人を説得できる言葉をどれだけ発せられるか、が非常に大事だということを痛感します。

3時間を超える作品だし、サスペンスやアクション映画のように手に汗握るようなシーンがあるわけでもないのに、フランク・シーランの淡々と仕事をこなしながら着々と足場を固めていく様子に目が離せなくなります。

作品は、老人ホームで車いすに座ったフランク・シーランの語りから始まりますが、その姿はすでに力を失ったただの老人。

だけど、フランクの若かりし頃を同じようにロバート・デニーロが演じていて、CG効果によって同じ人物が同じ役を演じることができているんだけど、これがあまりに違和感なくてすごい!のひと言。

映画の技術ってホント!進化しているんだなと感じます。

フランクは闇の殺し屋でありつつも、家庭では彼に対して批判的な娘がいて、多くは語らないけどその表情で娘との関係に悩んでいるごく普通の父親でもあることを感じるんですね。

どんな悪党であろうと、子どもの前では当たり前に親なんだと感じつつ、娘に対して語れない仕事をしている矛盾も感じます。

自分や周りの利益のために人を殺すとか、世の中のルールを逸脱したお金儲けとか、誰かを陥れた上で成り立つ利益で力をつけることが絶対にいけないことは理解しているけど、マフィア映画が魅力的なのも事実。

そこには、ある種の男のロマンみたいなのが詰まっているのかもしれません。そう、今作はどちらかと言えば、女性より男性に指示される映画かもね。

IBTの指導者で失踪したとされているジミー・ホッファの行方は、いまだにわかっていません。そしてジミーは、あのケネディ暗殺の首謀者の1人であるという説もあります。

真相がわかっていないこと、憶測の域を出ないこと、みんなが噂することってのは、人の心を捉えるのかもしれません。

まとめ

最近、映画館で上映される洋画は、派手な演出、正義のヒーロー、ぶっ飛んだアクション、これでもかっ!と恐ろしいホラー(観ませんけど)が多くなってきているように感じるんですね。

そうした作品が観客を集められるとしたら、それもまた時代の流れってことだとは思うけど、今作のように登場人物の会話や人間関係、そこから生まれる葛藤や軋轢をじっくりと描いた作品はやっぱり見応えがあって、鑑賞後の余韻も十分で、私は好きだなぁと感じました。

これからもNetflixオリジナル映画には、大いに期待しています。