マリオン・コティヤール主演のフランス映画「マイ・エンジェル」を鑑賞してきました。
非常に美しい映画ですが、上映館が少ないのが残念なところ。
この映画のために監督が探し出したという、子役:エイリーヌ・アクソイ=エタックスの自然な演技が見事でした。
日本でも社会問題になっている幼児虐待を盛り込んだ、少しハードな内容ではありますが、映像美と舞台となったコート・ダジュールやマリオン・コティヤールのムンムンの魅力が必見の作品です。
感想にはネタバレも含みますが、物語の核心には触れていませんので、作品選びの参考にしていただけましたら幸いです。
Contents
作品の概略
南仏、地中海沿岸のコート・ダジュール。シングルマザーのマルレーヌ(マリオン・コティヤール)は、浜辺にほど近いアパートで“エンジェル・フェイス”と呼ぶ8歳の愛らしい娘エリー(エイリーヌ・アクソイ=エテックス)とともに暮らしていた。
そんなマルレーヌが純白のウェディングドレスに身を包み、人生で最も晴れやかな日を迎える。不器用だが誠実でハンサムな男性ジャン(ステファン・リドー)と恋に落ち、迷うことなく結婚式を挙げたのだ。
ところがいつもの悪癖で酒をあおり、気が高ぶって我を見失ったマルレーヌは、結婚披露パーティーの真っ最中、ジャンに“不適切な現場”を目撃され、ようやくつかんだ幸せは幻のように消え失せてしまう。
エリーはその日、美しい母親が無様に壊れゆく姿を、ずっと黙りこくって見つめていた。
『マイ・エンジェル』オフィシャルサイトより
フランスでの原題は「Gueule d’ange」天使の口、英語でのタイトルは「Angel Face」天使の顔、そして日本のタイトルは「マイ・エンジェル」私の天使。
新人女性監督&脚本による作品
出演作を厳選することでも知られるマリオン・コティヤールが、新人女性監督ヴァネッサ・フィロとのコラボレーションに挑んだのは何故か?
エージェントから「絶対に読んだ方がいいプロジェクトがある。とても良く書けていて、シンプルで力強く、ここ数年読んだ中で一番素晴らしい脚本だ」と連絡があり、マリオンは興味を持ちます。
読んでみたら本当に素晴らしかったのです。ですから、監督のヴァネッサに会うことを決めました。
彼女はこの企画に魅了され、映画にしなければという差し迫った思いがその目に表れていました。
これはまさに、私が監督に求める条件だったのです。
オフィシャルサイトのインタビュー記事より
写真家やミュージシャンとしても活躍してきたヴァネッサ・フィロのオリジナル脚本に魅了されたマリオン・コティヤールが、娘を愛しているのに、自分本位で不器用な愛情表現しかできない母親役を熱演。
舞台は南仏コート・ダジュールの夏。親子が住んでいるアパートの窓の外には、青い海と空がいつでも広がっています。
そんな部屋に暮らしている親子には、依存症、育児放棄、といったリアルな社会問題が盛り込まれていて、外の景色は素晴らしく明るいけど、正解もスマートな解決法もない問題の闇深さを訴えています。
映画は、ヴァネッサ・フィロの写真家でもある経歴が生かされた美しい映像美やコート・ダジュールの夏が目で楽しめる作品です。
マリオン・コティヤール プロフィール&出演作
1975年9月30日生まれ、パリ出身、身長169センチ。
『世界でいちばん不運で幸せな私』で共演したギョーム・カネと交際し、2011年5月19日に男児を出産。
オルレアンの演劇学校を首席で卒業し、16歳の時に映画デビュー。
フランス映画では活躍していたマリオン・コティヤールが、ハリウッドデビューしたのは、2003年のティム・バートン監督作品でファンタジー映画の「ビッグ・フィシュ」
ジャーナリスト:ウィル・ブルームの妻:ジョセフィーンを演じています。
2007年にはフランス製作の伝記映画「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」で、シャンソン歌手エディット・ピアフ役を演じ、第33回セザール賞主演女優賞、第80回アカデミー賞主演女優賞他、数々の賞を受賞。
その後、レオナルド・ディカプリオ主演の「インセプション」、ウディ・アレン監督・脚本作の「ミッドナイト・イン・パリ」他、「ダークナイトライジング」「サンドラの週末」「マリアンヌ」「アサシン・クリード」など出演作多数。
「マリアンヌ」ではブラッド・ピットと共演し、マリオン・コティヤールとの不倫がアンジェリーナ・ジョリーとの離婚の一因となったのでは?という噂もありましたが、マリオン自身がインスタグラムで噂を否定。
当時、交際中のギョーム・カネとの間に第2子を妊娠中であることも告白しています。
映画「マリアンヌ」は、美男美女が恋に落ちて結婚し、子どもまで設けたものの、実は妻のマリアンヌ(マリオン・コティヤール)はスパイでブラッド・ピットが演じていた夫:マックスにマリアンヌを始末するよう命令が下るんですね。
夫婦でありながらスパイだった、というシチュエーションが、アンジェリーナ・ジョリーと共演して恋に落ちた「Mr.&Mrs. スミス」とかぶること、ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールという並んで立っているだけで絵になるカップル、ということから噂になっちゃったのかな?と。
「マリアンヌ」では、「マイ・エンジェル」とは全く違うマリオン・コティヤールの美しさを堪能できますし、ブラッド・ピットの軍服姿がうっとりと我を忘れるほど素敵です。
感想
最後の核心には触れずに感想を綴りますが、途中ネタバレも含みますことをご了承くださいませ。
感想その1 本能に流される母:マルレーヌ
5回目の結婚だというマルレーヌ。結婚式前夜は、緊張して眠れないというマルレーヌのために、娘のエリーがベッドで歌を歌ってあげるんですね。
そして、優しく髪をなでる。本来なら役割が反対であるはずのこのシーンに、この親子の関係性が滲んでいます。
「愛してる?すごく、すごく、すごく?」とエリーに確認するマルレーヌは、愛に飢えている女性とも受け取れます。
ジャンとの結婚式の最中、キッチンで他の男性との関係をジャンに目撃され、結婚は白紙に。いつでもお酒を手にしているマルレーヌは、その日も花嫁でありながら飲み過ぎていました。
とは言え、自分の結婚式の最中に他の男性と関係しちゃうって、あり得る?
マルレーヌは、後先を考えるのが苦手、目先の欲望に忠実、いつでも自分の本能に従って生きています。だから、常にエリーはそんなマルレーヌに振り回される結果になってしまうんですね。
感想その2 孤独な少女:エリー
小さな町では、そんなマルレーヌのことが噂にならないはずはなく、エリーはマルレーヌの娘だということで、学校でも「あばずれの娘」といじめられます。
これって、きっと親が子供たちにエリーの家庭の事情を吹き込んでいると思うんですね。
だから子供だと知り得ない情報によってエリーがいじめられることになっちゃう。どこにでもある話ではあるけど、家庭環境があまりよくない子は、それだけでも大変なのに、大人の噂話によって、更に過酷な環境を押し付けられる結果になるってことです。
エリーを演じたエイリーヌ・アクソイ=エタックスは、エリーの設定年齢と同じ8歳。
監督自身が、何ヵ月も費やして発掘した逸材。
自由奔放な母親が新しい恋人を見つけ、そいつとの逢瀬のためにとんずらしちゃったとき、周囲の人たちに「ママは死んだ」と告げるんですね。
親に放棄されたことを知られたくなかったのか、そんな親だということを知られたくなかったのか、ママをかばったのか、エリーの言葉はいつでも少し大人びています。
「親がいない子はゴミ箱行きなの」というエリーの言葉が、切なすぎます。
そして、学校にメイクをして登校したり、ママと暮らしていたアパートで、毎夜ひとりお酒を飲むようになっちゃうんです。
親がやっていたことを見ている、お酒を飲めばつかの間、イヤなことが忘れられる体感している、ということです。
エリーは、言葉が少ない少女。表情や態度から喜怒哀楽を感じますが、置かれている非常に厳しい状況や精神状態を見事に演じています。
感想その3 マリオン・コティヤールのムンムンと匂い立つ魅力は必見
コート・ダジュールの空と、あばずれなマルレーヌを演じたマリオン・コティヤールの美しさが魅力の作品です。
ウエディングドレスを着たまま、披露宴会場のキッチンで花婿とは違う男性とよからぬことをいたしているマルレーヌの官能的な表情は、女性の私が見ていてもゾクゾクします。
服もスパンコールなら、顔にもスパンコールをつけちゃう派手派手な母さんは、そんな姿のまま学校へ行ったりもしちゃいます。
パンツ見えそうなくらいのミニスカートで、学校へ行っちゃう。
それはどうなんですかねぇ~と思う気持ちとは反対に、胸元で揺れる豊かなバストや、真っすぐで細いだけじゃない見事な脚線美には魅了されます。
マリアンヌでは、エレガントで芯の強い妻役だったマリオン・コティヤールの、全く違った危なげな魅力が感じられる作品でもあります。
マリオン・コティヤールさんは40代。人によって好みは様々ではありますが、彼女が映画で演じていた官能的でパワフルな雰囲気は、絶対に20代女性にはない魅力だと思うんですね。
40代の自分を作るのは、自分の責任とも言いますし、アラフォー女性の目標にもなる女優さんだわ、と感じます。
感想その4 フランス映画だから、コート・ダジュールだから
はっきり申しまして、この映画は、母親が恋愛依存でネグレクト。加えて、親子のアルコール依存、というものすごくハードな社会問題を提示しています。
どこの国でもあるんだな・・・というありきたりな感想を持つと共に、これが日本映画だったとしたら、あまりに現実的で観ていられないと感じましたね。
美しい親子と、縁がない土地柄、セリフがフランス語、という、自分の生活とはかけ離れたシチュエーションだからこそ、最後まで観ていられたのだと感じました。
フランス映画を観て、感想に幼児虐待を語ろうとは思いませんが、映画の中にある様々なシーンにはこうした問題に対する、たくさんのヒントがあったように思います。
まとめ
世の中は夏休みで、映画館には子供がわんさか溢れています。
映画館が混んでいる!のは、目の当たりにするだけで嬉しいのですが、今作のような地味目な映画はとにかく観客数が少ない!
それが少々残念です。
テンションも上がらないし、ワクワクもしないけど、違う国の映画を観ることで、価値観や文化の相違などなど、いろんなことを感じられます。
最近、邦画もたくさんの作品が公開されていますが、どうぞ洋画も観てください。
と、最後までこのブログを読んでくださった方は、洋画ファンだわね。失礼しました!