実話を基にした作品

映画「エジソンズ・ゲーム」ネタバレ感想|その昔電気は欲と正義と貢献の戦いだった

エジソンの送電システムを巡る戦いを描いた「エジソンズ・ゲーム」を鑑賞してきました。

発明王エジソンは知っていたものの、他の登場人物については詳しく知らなかったので、ちょっとだけ調べてみました。

感想にはネタバレも含みますことをご了承くださいませね。

作品概略

原題:The Current War: Director’s Cut
製作年:2017年
製作国:アメリカ
キャスト:ベネディクト・カンバーバッチ・マイケル・シャノン
監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン
脚本:マイケル・ミトニック

本作は2017年12月22日に全米公開される予定だったが、2017年9月7日に本作のオフィシャル・トレイラーが公開され、2019年6月25日、ディレクターズ・カット版のオフィシャル・トレイラーが公開。

日本ではは2020年4月3日に公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響により、配給元のKADOKAWAが公開延期を発表し、2020年6月19日公開となった。

アルフォンソ・ゴメス=レホン監督にプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインから、数々の編集修正の要求があり、仕上がりが遅くなったとか、『ニューヨーク・タイムズ』にワインスタインのセクハラ告発記事が掲載されたことで、ワインスタインの名前をクレジットから削除するなどのバタバタがあったらしい。

キャスト

トーマス・エジソン

画像引用元:IMDb

ベネディクト・カンバーバッチ

天才肌な変わり者を演じたら天下一品!と思っているのは私だけでしょうか?

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」でカンバーバッチが演じていたアラン・チューリングも、少し変わった天才肌な数学者でした。

画像引用元:Wikipedia

1847年2月11日 – 1931年10月18日

発電、マスコミュニケーション、録音、映画などの分野で多くの装置を開発し、近代工業化された世界に広く影響を与えた。

J・Pモルガンから巨額の出資・援助を受け、Edison General Electric Company(現・ゼネラル・エレクトリック)を設立。

エジソンの暴挙は、映画の中で描かれていたライバルの交流式を陥れるための策略にとどまらない。

エジソンの会社がアメリカ東部においては映画業界をほぼ独占していた時代、競合他社との間で特許を共有するトラストを形成し、それに参加しない会社の映画製作をマフィアや探偵を雇って妨害するということもしていたらしい。

輝かしい発明王という顔の裏には、強い承認欲求、自己愛、妬みという闇も持ち合わせていたらしい。

自身の名前で1,093件の米国特許と他国の特許を保有していた。1931年に糖尿病の合併症で死去。

ジョージ・ウェスティングハウス

画像引用元:IMDb

マイケル・シャノン

画像引用元:Wikipedia

1846年10月6日 – 1914年3月12日

鉄道用エアブレーキを開発した電気産業の先駆者であり、19歳の時に最初の特許を取得。ウェスチングハウスは、1880年代初頭に配電システムとしての交流に可能性を見出し、その開発と販売に全力を注いだ。

現代の鉄道では、ウェスティングハウスの設計に基づいて様々な形のブレーキが使用され、同じ設計のフェールセーフエアブレーキは、大型トラックにも採用されている。

1880年代初頭に電力分配という新しい分野に興味を持つようになり、1884年に独自の直流家庭用照明システムの開発に着手し、物理学者のウィリアム・スタンレーを雇い入れる。

1886年、スタンレーはウェスティングハウスの支援を得て、マサチューセッツ州グレート・バリントンに最初の多電圧交流電力システムを設置し、ウェスティングハウスは同年「ウェスチングハウス・エレクトリック&マニュファクチャリング・カンパニー」を設立。

作中でエジソンがウェスティングハウスの交流発電機を搭載した死刑用の電気椅子を開発した様子が描かれているが、ウェスチングハウスはこの動きを阻止しようと、当時最高の弁護士を雇って、電気椅子にかけられる予定になっていた死刑囚ウィリアム・ケムラーを弁護することを余儀なくされたが、それは失敗に終わっている。

1907年の金融恐慌でウェスチングハウス社の支配権を辞任。1914年3月12日にニューヨーク市にて67歳で死亡。

ニコラ・テスラ

画像引用元:IMDb

ニコラス・ホルト

画像引用元:Wikipedia

1856年6月10日 – 1943年1月7日

オーストリアで生まれて育ち、1870年代に学位を取得せずに工学と物理学を学び、1884年に米国へ移住。

1888年にウェスチングハウス・エレクトリック社からライセンスを受けた交流誘導電動機と関連する多相交流特許は、多額の資金をもたらし、ウェスチングハウス・エレクトリック社が最終的に販売した多相システムの礎となる。

映画ではテスラが、エジソンに自分を売り込みに行って採用されたように描かれていたが、実際は1884年パリの設置を監督していたエジソンのマネージャーがアメリカに連れ戻された際、テスラも連れてくるように要請したと言われている。

5万ドルのボーナスが支払われなかったことによる不満が、エジソン社を去ったひとつの理由になっていたことは本当らしい。

ナイアガラの滝から水力発電を行うアメリカで最初の会社「Niagara Falls Hydraulic Power & Manufacturing Company」が、テスラに電力を送信するための最善のシステムについて意見を求めている。

本作のラストでは、そのシステムをウェスチングハウスと共に構築することになったが、実際に「Niagara Falls Hydraulic Power & Manufacturing Company」と契約を結んでいる。

テスラは、無線トランスミッターの発明、点火プラグの米国特許取得、レントゲンへの着想など様々な発明や特許を有していたにも関わらず、死亡時は一文無しだったそう。

86歳の時、ニューヨーカーホテル3327号室で亡くなっているのをメイドが発見。冠動脈血栓症による死亡だった。

米国の電気自動車メーカー「Tesla」の社名は、ニコラ・テスラへの賞賛をこめて名づけられたんですって。

サミュエル・インサル

トム・ホランド

画像引用元:Wikipedia

1859年11月11日 – 1938年7月16日

イギリス生まれのアメリカの実業家。

アメリカに渡り、エジソンの片腕として働いていたが、作中にも描かれているようにエジソン・ゼネラル・エレクトリック設立に関わっている。

1892年にはシカゴに移り、その年にシカゴ・エジソン社の社長に就任。

1897年、別の電気事業会社であるコモンウェルス・エレクトリック・ライト&パワー社を設立。 1907年に2つの会社は正式に合併してコモンウェルス・エジソン社を設立。

年間200万トン以上の石炭を使用していた1920年までには、6000人の従業員が約50万人の顧客にサービスを提供し、年間収入は4000万ドル近くに達していた。

シカゴに拠点を置く投資家となり、公益事業や鉄道を購入する持ち株会社を設立。1929年にはシカゴ・シビック・オペラハウスの建設にも携わっている。

大恐慌では、中西部の広大な持ち株会社の帝国は崩壊したが、実績と評判からインサルを信頼していた無名の投資家に価値のない株を売って利益を得たとして告発された。

インサルは、最初にフランスに逃げ、米国がフランス当局に身柄引き渡しを求めたとき、米国との送還条約がまだなかったギリシャへ移動。

後に逮捕され、郵便詐欺と独占禁止法違反容疑で連邦訴追されたが、弁護士フロイド-トンプソンの弁護によってすべての罪で無罪判決を受けた。

1938年7月16日、コンコルド広場駅の長い階段を下りて切符売りに足を踏み入れた瞬間、心臓発作で亡くなった。遺言書によると、彼の借金は1400万ドルに達していた。

ざっくりあらすじ

19世紀、実際にあったトーマス・エジソンの直流式送電方式とウェスチングハウスの交流式送電方式の戦いを描いている。

エジソンの直流に比べ、ウェスチングハウスの交流は安く遠くまで電気が運べる優れた点を認めたくないエジソンは、自分の正義を曲げた行いをし、更にネガティブキャンペーンを繰り広げていく。

感想

発明って、お金がかかるんです。スポンサーが付いていなくちゃ、とても新しいことなんてできやしないってことがよくわかります。

ニコラ・テスラに因んで「テスラ」という社名にしたアメリカの電気自動車の開発に関するニュースも時々目にしますが、資金繰り大変なんだろうなと感じますもの。

だけど、ひるまず果敢に挑戦し、たゆまぬ努力をした人が日の目を見るってことですかね。

今までエジソンは、偉大な発明王だと思っていました。

もちろん、その事実は変わらないんだけど、結構ライバルにやっていたことがエグイ

子どもの頃から大層な変わり者だったようなので、自己愛も強く、自分の発明に絶対の自信とプライドがあって、それ以外を認めることができなかったのでしょうね。

もっと素直で柔軟な気持ちと見る目を持っていたら、モルガンにも見放されず、送電システムの未来を担っていられたかもしれないのに、と感じます。

エジソンにとって発明は人生そのもの、自分自身でもあるだろうから、自分の発明が人より劣っているなんてのは、自分自身を否定されていることとイコールなんですね。

どんなにお金を積まれても「人の命を奪う」発明には関わらない、と決めていたにも関わらず、ライバルを蹴落とすために「電気椅子」を開発しちゃいます。

それに意見したのが秘書のサミュエル・インサル。

コイツがいい奴なんですよ。暴走するエジソンを時になだめ、時に意見し、それがすごく真っ当でよく言った!と思うんだけど、もちろんエジソンは耳を貸しません。

電気椅子の開発をするエジソンに「自分の正義を曲げるんですか。それでいいんですか?私はあなたの正義が好きだったのに残念です」みたいなことを言うんですね。

よく言った!サミュエル。

それでサミュエルはエジソンに三下り半を突きつけるのかっ?!と思いきや、でも自分はあなたと仕事しているのが何より楽しい、と言うんですよ。

あ・・・辞めないんだ、と思ったけど、それほど楽しい仕事に就けるって幸せです。

画像引用元:IMDb

サミュエルは、童顔で(実際も童顔だったらしい)頼りなげなんだけど、現実はかなりなやり手だったようですね。

モルガンから見放されてエジソンが首になった後もサミュエルは共倒れすることなく、バリバリ稼いでいますが、詐欺で訴えられたりもしているので、本当は腹黒かったのか?

映画の中では、かわいい坊ちゃん風でしたけどね。

エジソンは発明と自分にしか興味がないのかな?という印象だったけど、ウェスティングハウスは常に「お金はさておき、世の中にどれだけ貢献できるかってことに価値がある」と度々口にします。

その思いが、勝敗を分けたに違いない、と個人的には思っているんですけどね。

映画の焦点は、エジソン直流vsウェスティングハウス交流だろうと思うのですが、その焦点に対する描き方がボヤっとしていたようにも感じました。

ただ、主役は「電気」なので、冒頭の列車を降りて暗闇を歩いた先で一斉にともる電球とか、証券取引所のような場所が一気に明るくなるシーンとか、電気や灯りの演出がとても素敵でしたね。

まとめ

歴史上の実際の人物や事柄を元にした映画は、学生時代に勉強をしてこなかった私にとって、非常に興味深く、物事を知るきっかけになります。

エジソンという名前は知ってたけど、テスラは知らなかったし、エジソンに敗北があったことも知らなかったし、映画を観ていなければ知らないままだった、たくさんのことを学べましたからね。

若干ぼんやりした作品だったようにも感じたけど、全く眠くはならなかったので、興味深く先を見続けたいと思えた作品だったってことです。

映画や本、アートや音楽、全てのエンタメは、好き嫌いがあって当たり前だし、私がいいと思っても全ての人が同じ感想ではありません。

だから、ここで取り上げる作品については、つまらないと感じた映画やドラマは取り上げていません。

もし私が書いた「つまらなかった」を読んだ人が、その映画を観るのをやめてしまったら勿体ないですからね。もしかしたら、その人はものすごく面白いと思うかもしれませんもの。

そんなわけで、かなり取り上げる映画のカテゴリーが偏っちゃってますけどね。

やっぱり映画館で観る映画はサイコーです。行ってみてね。