ハリウッド映画に出演した子役に対する性的虐待を扱ったU-NEXT独占配信のフィクションドラマ「ダーク・マネー」を鑑賞しました。
2017年10月には、ハリウッドでプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが性的虐待で告発され、この事件は「#MeToo」運動を引き起こし、多くの女性がNDA(秘密保持契約)に署名したことが明らかになりましたよね。
マイケル・ジャクソンの未成年少年へのセクハラ行為に対する主張をまとめたドキュメンタリーもNetflixで公開されています。
決してなくならないだろうけど、非常に痛ましい事件が子どもへの虐待。
今作はフィクションではあるけど、こうしたことは今でも世界中で繰り返されているに違いなく、何とかならんもんかねぇ~と思いつつ、ムカつきつつ、己の無力さを感じつつ、鑑賞いたしました。
感想には、ネタバレも含まれますことをご了承くださいませね。
作品の概略
原題:Dark Money
監督:ルイス・アーノルド
キャスト:バボー・シーセイ、マックス・フィンチャム
脚本:レヴィ・デヴィッド・アダイ
同じタイトルのアメリカで出版された書籍がありますが、全くの別物で、こちらはレヴィ・デヴィッド・アダイの脚本家により、イギリスBBCで放送された全4話のフィクションドラマ。
ドラマのダークマネーは、ハリウッドでおきた子役への性的虐待と、それを隠蔽しようとするストーリー。
今作は、ハーヴェイ・ワインスタインの事件が世の中に知られる前からの構想だったと製作陣が語っていますが、タイムリーな公開だったと思います。
ざっくりあらすじ
SF大作映画の撮影を終えた子役のアイザックは、家族が待つロンドンへ帰国。ハリウッド進出を祝って集まった家族や親せきに温かく迎えられたが、アイザックの様子がどこかおかしい。
アイザックに問い詰めると、スマートフォンに録画された動画を見せられ、両親は息子がハリウッドで性的虐待を受けていたことを知る。
付き人として付き添っていた事務所の女性に相談し、虐待行為を行っていたプロデューサーの会社を訪れると、秘密保持契約(NDA)に署名すれば口止め料として300万ポンド支払うと提案される。
アイザックがこの件は、誰にも言わないで欲しいと言っていたことから、両親は署名し300万ポンドを受け取ってしまう。
秘密保持契約(NDA)に署名し、300万ポンド受け取ったことが、後に大きな足かせにもなり、更に両親の考え方に相違が生じ、家族崩壊の危機に見舞われる。
「ダーク・マネー」の感想
子どもに対する虐待は、世の中で許せないことベスト3に入ると思っています。今作でのアイザックに対する虐待は、行為そのものが録画されていたわけではないにしろ、証拠になりうるものが存在しただけでもマシ。
子どもへの性的虐待は、そもそもが立証しにくいため、裁判にもなりにくいし、ましてや加害者が罰せられることも非常に少ないのが事実。
そう考えただけで、はらわた煮えくりかえります。
ムカつくなら見なきゃいいのに、観ちゃうんですよね。その心理って何なんでしょうかね?
アイザックの涙
ドラマの中のアイザックは14歳。日本で言えば中学生です。ハリウッドで撮影される大作に出演するため、両親と離れて付き添いのおばちゃんとアメリカへ行っていました。
撮影は長期にわたるため、両親には仕事があり付き添うことができなかったんですね。
帰宅後、様子がおかしいアイザックを心配する母親のサム。涙を流しながらアイザックから動画を差し出され、それを観たとき、サムは自分が付き添えなかったことを後悔します。
母親って、子どもに降りかかった災難は、全く母親の責任ではなかったとしても、激しく自分の至らなさを攻めちゃったりします。
全然、サムは悪くありません。自分の欲望のためだけにアイザックを傷つけた、悪魔のプロデューサーが1000%悪いんです。くそったれデス。
「やりたくないよ」と動画に収められているアイザックの声。そして、それを見ながら涙を流すアイザック。アイザックの苦しさはよくわかるけど、サムは抱きしめてあげることしかできないんです。
プロデューサーに対する怒りが煮えたぎってきます。バカヤロー!
話し合いに応じた双方
アイザックの両親は、付き人を介してプロデューサーの会社まで出向き、双方で話し合いをするに至るんだけど、あちらは海千山千の業界人、両親は一般人。
立て板に水って感じの説明に声も出ないわけですよ。そりゃそうだよね。
「こんなんじゃ証拠にならない」とか「秘密保持契約に即刻サインするなら300万ポンド支払う」とか、なんだか見下している感が漂っていてムカつきます。
証拠にならないと言っておきながら、秘密保持契約に署名するなら300万ポンド支払うってことは、後ろめたいんじゃん、と感じますよね。
300万ポンドは日本円にすると現在のレートなら4億円以上。
アイザックから「このことは誰にも言わないで」と言われていたことから、両親は署名し300万ポンドを受け取っちゃうんだけど、後に秘密保持契約にサインしたことが大きな足かせになってしまいます。
300万ポンド受け取ったのちの生活
2話では、プール付きのオシャレな豪邸からスタート、そう、両親は300万ポンドを受け取ったことで、豪邸を購入し、車はポルシェのカイエンになり、生活が一変。
アイザックの件は、姉のジェスにも秘密だったため、ジェスは豪邸をアイザックのギャラで購入したと思っています。
だけど、生活が一変したことでジェスは家を出て、ひとりで生活するようになり、両親ともぎくしゃくして行っちゃうんですね。
300万ポンドと引き換えに、失ったものが大きいと少しずつ感じられます。
でもさぁ、子どもが被害にあって手にした口止め料で豪邸や高級車買っちゃうのは、ちょっと軽率だったんじゃないの?と私は思うんですけどね。
せめて、今まで暮らしていた家よりちょっと治安がいいところ、ちょっとこぎれいな家、少し広い間取り、くらいにしておけばジェスだって家を出なかったかもしれないのに・・。
そんな両親を見ていて、アイザックは父親に対する不信感を持つようになってしまうんですね。
親に対する不信感ってのは、思春期なら誰でも1度は感じることかもしれないけど、親が思っている以上に子供って親の行動を見ていたり、暴言を記憶していたりするんです。
両親のアイザックに対する愛情は少しも薄れちゃいないんだけど、日々の両親の行動を見ていて徐々に不信感を募らせ、それがストレスになり、アイザックの行動を危うくしていっちゃうんです。
性的虐待加害者との再会
映画のプロモーションが行われることになり、その席でアイザックは性的虐待の加害者であるプロデューサーと再会しなければならないことになってしまいます。
両親も非常に心配し、今回は二人で付き添うことにします。
いざ!プロモーション会場へ。車から降りてくるプロデューサー、カメラの前に立つアイザックに近づき、肩に手をまわして写真に納まります。
クソ野郎の顔を間近に見て、父のマニーは怒りで身体が震えてきます。当たり前の反応です。
そして、プロデューサーを呼び止め、何を言うのか?と期待していたものの、場慣れしているプロデューサーからアイザックへの賛辞と映画の成功を語られ、結局マニーは何も言えずに終了。
それを見ていたアイザックとサムは、冷たい一瞥をマニーに投げかけ無言でその場を後にし、マニーも激しい自己嫌悪に陥ります。
でもさ、アイザックと両親は心を傷つけられた被害者なのに、いつまでも苦しいわけで、加害者のプロデューサーは謝罪のひと言もなく脚光を浴び続けているわけで、その不公平さ、理不尽さ、圧倒的な力関係にホント、腹が立ってきます。
もうひとつの苦悩
アイザックには、母親が違う兄タイロンがいて、とても仲良し。タイロンもアイザックの様子がなんかおかしいことを気にかけていたんですね。
ある日、アイザックがタイロンにハリウッドで起こったことを告白すると、タイロンは動揺して心ない言葉を投げつけてしまいます。
ふたりとも大人じゃないし、多感な年齢だし、受け止めきれない事実だっただろうし、動揺して暴言を吐いてしまったタイロンを非難することなんてできません。
仲良しだったタイロンに突き放されたことで、アイザックの心は更に疲弊していってしまいます。
何度も言うけど、アイザックは被害者です。なのに、加害者と離れても尚、毎日心休まるどころか、次々とやりきれない出来事に見舞われてしまうんです。チクショー!
暴かれた真実
姉のジェスが地元の新聞記者にリークしたことで、名前は伏せられていたけど新聞記事になり、両親はプロデューサーの会社に呼び出されて、秘密保持契約書にサインしたにも関わらず記事になったことで訴えると言われてしまいます。
記事を書いた記者も訴えられることに。
そんな現状を打破したのが、地元の新聞社からインタビューのオファーを受け承諾したサム。
そして、サムの言葉が記事になったことで、他の被害者からも声が上がってきます。まさに、#Me tooです。
まとめ
やりきれない題材を扱ったドラマなんだけど、だからこそ価値があると私は思いながら観ていました。
ペドフィリア(小児性愛者・児童性愛者)は、病気だとも言われています。
だけどさ、桜を見るためにたくさんの税金を使ったり、それを糾弾するために国会を欠席したりっていうばかばかしいことをやってないで、病気ならその補助に、犯罪者が増えないような工夫に、加害者の心のケアに、お金も労力も使えないもんですかね。
腹立つわぁー。
世の中って、力のある者、影響力のある者、お金を持つ者に有利だと思っています。このドラマの中でも、それを痛いほど感じるんだけど、最終的には民主主義の国であれば、「#Me too」運動のようなことが広がっていくんです。
と信じたい。
実際、被害者の親という立場になったとき、正しい行動なんてのはないと思うんですね。ただただ子どもを不憫に思い、愛情を掛けてやることしかできないだろうと思います。
加害者を訴えたくても証拠はない、裁判ともなれば子供に更に被害状況を詳しく語らせなきゃならない。そんな拷問みたいなこと、できれば避けたいと思っちゃうのがフツーだろうし。
だからこそ、それを見越しているかのようなこうした犯罪はホントに許せませんっ。
最後に救われたのは、アイザックに暴言を吐いてしまったタイロンが、そのことを心から反省し、彼らの仲がきっちり修復したこと。ここはとっても気持ちよかったな。
ちっと重いですけどね。最近、U-NEXTの独占配信ドラマはなかなかいいセレクトが揃っています。


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