サスペンス

映画「ナチス第三の男」あらすじ&ネタバレ感想/「ハイドリヒ」は誰の中にもいる

ヒトラー、ヒムラーに次ぐ、“ナチス第三の男”として華々しい出世をしたラインハルト・ハイドリヒを描いた「ナチス第三の男」を観てきました。

原作は、史上唯一成功した、ナチス高官の暗殺計画を描いた、フランスの小説家ローラン・ビネ著の「HHhH プラハ、1942年」

ナチスのユダヤ人虐殺を推進したハイドリヒの残虐な行為だけにフォーカスするのではなく、若きレジスタンスたちの活動や友情、恋心を描いているからこそ、ハイドリヒの行為が益々許せないと感じた作品でした。

ただ、ハイドリヒが抱えている「残虐性」は、誰の中にも潜んでいるものでもあると感じます。

あらすじはネタバレなしですが、感想にはネタバレ含みますことをご了承くださいね。

作品の概略

原作は、本屋大賞翻訳部門第一位にも輝き、NYタイムズ紙の“注目すべき本”に選出された、ローラン・ビネの大ベストセラー「HHhH プラハ、1942年」

原作の「HHhH」は、Himmlers Hirn heiβt Heydrich(ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる)の頭文字をとったもの。

フランス・イギリス・ベルギー合作による映画の原題は「The Man with the Iron Heart」鉄の心臓を持つ男。

第2次大戦下のナチス・ドイツでヒトラー、ヒムラーにつづく「第三の男」と称され、150万人を超えるユダヤ人虐殺の首謀者として絶大な権力を手にしていったラインハルト・ハイドリヒを描いた作品。

あらすじ

バルト海海軍基地に通信将校として勤務していたラインハルト・ハイドリヒ(ジェイソン・クラーク)は、奔放な女性関係が災いし、海軍上層部にコネクションがあるという男から訴えられ、不名誉除隊となる。

身から出た錆、怒りの持って行き場がない中、そんなハイドリヒを救ったのがハイドリヒの除隊理由も知っていた婚約者のリナ。

リナの計らいで、ハイドリヒはナチス党親衛隊指導者ハインリヒ・ヒムラーとの面接の機会を得る。ハインリヒ・ヒムラーは、ハイドリヒの素質を見抜き、情報部立ち上げを任せる。

めきめきと頭角を現すハイドリヒだったが、ナチスがヨーロッパのほぼ全土に占拠地域を広げるなか、ハイドリヒの統治に危機感を抱いた英政府とチェコスロバキア亡命政府は、英国政府から訓練を受けたチェコのレジスタンスグループを送り込みハイドリヒ暗殺計画を企てる。

そして、ハイドリヒ暗殺計画が実行されるが・・・ハイドリヒ暗殺計画チームの行く末は?

感想

感想の中にはネタバレも含まれますことをご了承くださいね。

その1 「ハイドリヒ」は誰の中にもいる

ナチス党の総統ヒトラーは、「アーリア人」こそ優れた人種であり、「ユダヤ人」は劣っている人種と定義し、ハイドリヒはそれを守るために「ユダヤ人」虐殺を繰り返していました。

非道・残忍で有無を言わさぬ虐殺行為は、目を覆いたくなるシーンでしたね。

でも、「アーリア人」の純血を守ろうとする思想は、今また活動が活発になっていると言われている白人の「KKK」と何ら変わらないのではないか?と思うに至ります。

大きな組織的な活動でなくても、自分と違う者を蔑んだり、差別したり、排除しようとする行為、または思想は、誰の中にもあるんじゃないだろうか?と感じます。

学校でのいじめ、社会でのハラスメント、男女差別やそれに伴う発言などは、自分の考え方が正しい、自分の方が勝っている、という発想によるものですよね?

規模が違えど、心の中にあるものは同じじゃないだろうか?と感じると共に、それが集まったり、共感する人が増えたりすると、大きな歪んだパワーになりかねないと思うととても恐ろしい。

人は、大体が自分も含め、自分のやっていることが正しいと思い込みがちだけど、俯瞰すること、人の意見を聞ける耳を持つことは大切だなぁと感じました。

その2 レジスタンスグループが若くて辛い

英国政府から訓練を受けたチェコのレジスタンスグループの二人の若者が、パラシュートで真っ白な雪に覆われた山に降り立ちます。

足跡も付いていない雪の山を歩いて移動するのですが、その苦行のような様子は、彼らの未来を暗示しているかのよう。

映画は、メルセデスベンツのオープンカーに乗って表れたハイドリヒにレジスタンスグループの若者が銃を向けるシーンから始まります。

映画はハイドリヒだけにフォーカスせず、レジスタンスグループのハイドリヒ暗殺計画のために送り込まれたチームにも視点を置いて描いていますが、時系列が前後しながら物語が進んでいくので、混乱しないようにご注意です!

レジスタンスグループのハイドリヒ暗殺計画のために送り込まれたチームの若者たちの明日への希望や潜伏生活の中での恋、子どもまでもが仲間を守ろうとする必死な姿、仲間との強い信頼関係、追い詰められた絶望感など、若者たちの生活から様々な感情を読み取れてすごく切ないんです。

混乱の時代に生まれていたら、自分の息子たちもこんな生活を余儀なくされていたのかもしれない・・と思うと、切なくて涙があふれてきます。

「誰にも言っちゃダメよ」と母親から言われた少年は、ナチ党に拉致され、拷問されている仲間の青年を目の前にしてもかたくなに口を割らないのですが、泣き叫びながらついにレジスタンスの隠れ家を口にしてしまいます。

少年の意志の強さは、そのまま仲間を思う気持ちだっただろうに、自分ではなく仲間の青年に対する拷問を見せられ耐えきれなくなった気持ちを思うと辛すぎます。

その3 ハイドリヒは単なるアブないヤツだった?

ハイドリヒがナチ党に参加することになったきっかけは、婚約者だったリナがナチ党を指示していたことから、リナの計らいがあったからハインリヒ・ヒムラーとの面接の機会を得たわけで、特にハイドリヒがナチ党に心酔していたわけでも、ナチ党への参加を熱望していたわけでもなかったんですね。

海軍を不名誉除隊した怒りやパワーが、ナチ党への活動、もっと言えば虐殺への大きなエネルギーになっていたかもしれないし、自分の力を誇示すること、出世していくことが目的だったのかも?と思ってしまうのが、娼館に盗聴器を仕掛けて、スキャンダルをネタに上官たちを恫喝までしてしまうところ。

自分のためなら手段は問わない、汚いことも平気でやってのけちゃう、その根底にあるのは、自己愛じゃないだろうか?とも思うわけです。

婚約者がいるのに、奔放な女性関係も悪びれず、その結果不名誉除隊ということになっても、後に上官を恫喝することでほくそ笑む・・・みたいなところ、徹底的な自己愛と感じるのは私だけでしょうか。

その4 映画「ナチス第三の男」を観て思った事

ハイドリヒは病院のベットで亡くなるのですが、そこからナチ党のレジスタンスグループへの報復が爆発します。

圧倒的な人数の違いに、レジスタンスグループが追い詰められていくシーンは、辛すぎますね。ありきたりですが、戦争は繰り返しちゃいけない、と心の底から思います。

地下納骨堂に立てこもったレジスタンスグループのヨゼフとヤンは、開口部から放水され浸水していく中、アメリカに渡ることを夢見て励ましあうものの、万策尽き「あっちで会おう」と言葉を交わし合い自ら命を絶ちます。

まだ若いのに、これから長い未来があるのに、希望に燃えている時もあったろうにと、彼らの無念を痛感します。

戦争映画は嫌いですが、繰り返しちゃいけない!という思いを確認するためにも、時には辛い気持ちになることも必要なのかも、と思った作品でした。

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