映画「ANNA/アナ」を鑑賞してきました。3カ月ぶりに訪れた映画館でしたが、やっぱり大スクリーンはいいですねー。
スパイ映画は大好物でございまして、今作は個人的にドストライクだったので、3カ月ぶりに映画館で鑑賞するにふさわしい作品だったと興奮気味でございます。
主役のアナを演じたのは、ロシア出身のサッシャ・ルス。見事に脚が長くてうらやましかった・・・・。
ふたりの男と関わり、二転三転するアナのスパイ生活。KGBか?CIAか?極秘任務を託されて、それが完遂したときアナはどうなるのか?
ラストは見事に収束するので、そこには触れず感想を綴ってみたいと思いますが、ネタバレも含みますことをご了承くださいませね。
作品概略
原題:Anna
製作年:2019年
製作国:フランス・アメリカ合作
キャスト:サッシャ・ルス、ルーク・エバンス、キリアン・マーフィ
監督:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン
『レオン』 『TAXi』『トランスポーター』シリーズのリュック・ベッソン監督作品ということで、キレッキレのアクションも見どころのひとつ。
Sasha Luss サッシャ・ルス
1992年6月6日生まれ、ロシア出身。身長178センチ。
母親がモデル事務所に連れて行ったことがきっかけとなり、13歳からモデルとして活躍。キャンペーンモデルとしてディオール、シャネル、ヴァレンティノ、バルマンなどのハイブランドを担当。
長くて真っすぐな脚が見事なんです。
作品の中でも人気モデルを演じていますが、様になっていたのはリアルにハイブランドのモデルとしての経験があったからなんですね。
この動画がモデル時代のランウエイでの様子。
『Vogue Russia』『Vogue Italia』の表紙も飾った経歴の持ち主。
映画は、2017年のリュック・ベッソン監督SF作品『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』でデビュー。日本では2018年3月30日に公開されています。
ざっくりあらすじ
両親が亡くなり路上生活だったところ、ペーチャに拾われ同居していたものの、犯罪に巻き込まれ家に逃げ帰ると、そこにはKGBのアレクセイが。
胡散臭いとは思いつつも、亡くなった両親から贈られた命と説得され、アレクセイの誘いに乗りKGBのスパイになる。
ところが、任務遂行中にCIAに囚われ、逆スパイとして活動するようになってしまう。
CIAから依頼された任務とは?自由になりたいと願っているアナの希望は叶うのか?
感想
同じようにオンナスパイが活躍する映画「レッドスパロー」では、ケガで踊れなくなったバレリーナがロシアの腕利きスパイになる話でしたが、こちらはかなり暗くて重く切ないストーリー。
それに比べると、アナが置かれた状況は同じように厳しいにしても、映像が暗すぎずファッショナブルだし、観ている人を気持ちよく裏切ってくれるラストが個人的には好ましかったです。

アクション最高
リュック・ベッソン作品の中では、ダントツにトランスポーターシリーズの大ファンなので、それを彷彿とさせるキレッキレのアクションが最高です。
女スパイが大勢の男たちをバッタバッタと倒していく姿には心の中で「ブラボー!」の連呼でしたね。アクション映画は、ストレス解消にももってこいです。
まあ、実際あんなに細い身体で大のオトコを大勢に戦えるのか?って疑問はあるけど、そこは映画ですから、単純にキレッキレのアクションを楽しむってことで。
実際、サッシャ・ルスは1年をかけてマーシャルアーツを学び、ガン・フーをマスターしたのだそうです。
新しいアクション女優の誕生ですかね。今後の活躍が楽しみです。
デカい儲け話しがあるという男
17歳のときに両親を事故で亡くし、通っていた士官学校を中退したアナは、ペーチャに拾われ薬漬けの堕落した生活を送っていました。
そんな生活から抜け出したいと、海軍に志願を出したことでアナの人生が大きく変わっていきます。
アナに威圧的なペーチャは、「デカい儲け話しがあるから待ってろよ」と目を輝かせるんだけど、大体そーゆーことを言う男はクズです。大体じゃなく絶対かな。
本当に儲けている男は、「デカい儲け話」というギャンブルみたいな言葉は口にせず、黙々と稼いでいるはず。
元々賢いアナは、ペーチャの言葉なんぞ信用しているわけじゃなく、何とかしなくちゃ、という思いから海軍に志願書を送るわけですよ。
アクションを起こしたことで、自堕落な生活からは抜けることができたものの、スパイ活動という別の意味で激しく険しくタフな生活になっちゃうわけです。
ファッションも見どころのひとつ
見知らぬ男の誘いでKGBのスパイに仕立て上げられたアナは、マトリョーシカを売る店先でモデルエージェントにスカウトされパリへ。
モデルにスカウトされたアナは、もうすでにスパイ。偶然モデルにスカウトされたわけじゃなく、それもまた巧妙に仕組まれた作戦のひとつ。
無気力でおびえた猫のようだったアナは、もうそこにはいません。華々しいモデルとして美しく輝いています。
パリのエッフェル塔が夕日に照らされている中を歩いているアナは、抜群に姿勢がよく颯爽としていてカッコイイ。
表向きの職業がモデルなんで、撮影の様子や私服も実にファッショナブルだし、パリやバケーションで訪れた海の風景が、殺伐としたスパイ活動の中に一服の落ち着きや清涼感を与えてくれます。
だから、今までスパイ映画にはあまり興味のなかった女性でも、興味を持って見られるスパイ映画になっているように思います。
最初の任務でレストランに入っていくとき着ていた白いファーコートと、すごくロシアっぽいファーの帽子のかわいいこと!そして似合っている!
これから人を殺しに行くのに、その目立つ出で立ちはNGだろ!とは思うけど、白いコートを脱ぐと革のジャケット、というファッショナブルで粋な演出も素敵です。
時系列
今作は、時系列通りに進まず、行きつ戻りつしながらストーリーが展開していく構成になっていますが、ここがまたすごく夢中になっちゃったひとつの要因かも。
あれ?と疑問を抱いた部分が、時間を戻してその「あれ?」と感じた部分を気持ちよく解決してくれるようになっています。
アナが一仕事終え、ホテルのドアを出た瞬間、壁にもたれて一瞬うなだれるシーンがあって、どうした?と感じるんですね。その様子をカメラで見ていたボスのオルガも「あれ?」という表情をします。
その時は、疲れちゃったのかな?と思ったけど、実はアナのこのリアクションにも納得できる理由が後でわかるようになっています。
このオルガというアナの上司である女性が、実はかなりの曲者。根っからの諜報員で、欲と野望に満ちています。
アナがCIAに寝返らされたことも、実は知っていたんです。それを自分の出世に利用しちゃうところなんぞ、国家に仕えているんじゃなくて、自分自身に忠実なだけ。
冷酷非情で血が通ってないヤツか!と思っていたら、イヤイヤ自分が損をしなければ人の味方もしますよ、という狡猾ながらも人の心は持っていたおばちゃん。
オルガによって、アナは助けられます。
KGBからCIAへ寝返ることになっちゃったアナが与えられた使命は、KGB長官ワシリエフの暗殺。それは無理でしょ、と言っちゃったら映画になりませんので、スルーです。
長官を暗殺したあと、どうやって逃げるのか?どんだけバッタバッタと押し寄せる敵を倒しても、まだまだやってくる。建物の前でアナを待っていたCIAのレナードは、諦めて走り去ってしまいます。
さて、アナは無事なのか?アナはどうやって逃げたのか?というたくさんの疑問を、時間を戻すことであっさりと解決してくれます。
アナと二人のオトコ
ひとりはルーク・エヴァンス演じる、アナをKGBに誘ったアレクセイ・チェンコフ。口数少なくクールです。
もうひとりがキリアン・マーフィ演じる、CIAのレナード・ミラー。切れ者って感じ。
アナはどちらのオトコとも男女の関係になるんだけど、KGBとCIAそれぞれから課された任務を遂行しながら、二人には信頼を寄せていた様子がうかがえます。
アレクセイもレナードも、本当のキャラが見えてこないけど、心の中ではアナの身を案じていたように感じます。
ただ、アレクセイはロシアの諜報員、レナードはアメリカの諜報員。レナードの方が言葉や行動に自由度があるように感じ、アレクセイは抑圧されているように見えたのは、先入観からでしょうか?
最後には、ニューヨークで直接対面するシーンがあって、緊迫感も半端ないわけだけど、ふたりの間にはアナがいて、アナの望みは自由になること。
ふたりとも何も言わないけど、アナの希望を叶えてあげたい気持ちがあることが伝わってきます。
アレクセイにしてみれば、アナを育てて一流のスパイにしたのは自分、という自負があっただろうし、レナードはロシアの監視から自由にして挙げられるのは自分という自負があったと思うんですね。
どちらのオトコもアナに対する気持ちを一切言葉にはしていないけど、愛情を感じていたと思わせるところは十分にありましたね。
まとめ
実際、本当のスパイ活動をしている人たちって、仕事を辞めることってできるんでしょうか?
引退することになったとしたら、絶対に秘密は洩らしちゃダメです、みたいな書類に署名捺印?するんでしょうかね?
どうも映画に洗脳されているので、スパイの世界は魑魅魍魎、阿鼻叫喚的なイメージしかないんだけど、本当のところはどうなんですかね?
北朝鮮の金正男氏がマレーシアで暗殺されたり、何年か前にも、イギリスで元ロシアスパイの男性と娘が、毒物で殺害される事件がありましたよね?未遂だったかしら?
こうしたことが現実にも起こると、一体世の中の諜報活動員やスパイたちってどんな生活をしているのだろう?とあれこれ考えてしまいます。
わからない世界だからこそ、映画になっていると興味が沸くし、フィクションだとわかって観ているから楽しめるってことですかね。
海外の映画やドラマを集めた「IMDb」における「ANNA/アナ」の評価はあまり高くありませんが、個人的にはすごく面白く鑑賞できた作品でした。