洋画

アメリカ放送界の実話映画「スキャンダル」豪華キャストが演じる実際の人物とは?

2016年アメリカの「FOXニュース」に激震が走ったセクハラ事件。

FoxニュースのCEOを、クビを言い渡されたベテランキャスターがセクハラで訴えた!という事実を基に作られた映画で、事件を葬ってはいけない、という目的で製作されています。

少し前、日本でも元TBSワシントン支局長を女性がセクハラで訴えて勝訴した事件がありましたよね。だけど、何となく男性を味方する声が無きにしも非ずで、それっておかしくないか?と思っていました。

映画が始まる前に「事実を基にしているけど、架空の人物も登場するし、話しには捜索の部分もあるからよろしく!」的な字幕が流れます。

実際の人物について知ると共に、それを知った上で映画を観た感想を綴ってみたいと思います。

作品概略

原題:Bombshell
製作年:2019年
製作国:アメリカ・カナダ合作
キャスト:ニコール・キッドマン、シャーリーズ・セロン、マーゴット・ロビー
監督:ジェイ・ローチ
脚本:チャールズ・ランドルフ
制作:アーロン・L・ギルバート、ジェイ・ローチ他

実際にあった事件を基に「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の脚本家がシナリオを書き上げ、シャーリーズ・セロンがプロデューサーに名乗りを上げて映画化された作品。

日本人として初めてアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘さんが、シャーリーズ・セロンの特殊メイクを担当。

今作で辻一弘さんは、2度目のアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。

キャストと実際の人物たち

ニコール・キッドマン

ニコール・キッドマンが演じるのは、Foxニュースのベテランキャスター「グレッチェン・カールソン」

グレッチェン・カールソン

1966年生まれ、ミネソタ州出身。スタンフォード大学で組織行動を学び、優秀な成績で卒業。グレッチェンさんの写真はWikipediaにありましたが、びっくりするほど寄せていっています。

メイクってすごい!ざわちんさん的な?

卒業後は、いくつかのローカルネットワークでレポーターとしての経験を積み、2000年にCBS Newsの特派員として「The Early Show」サタデー版のホストに。

2005年、フォックスニュースチャンネルに移り、スティーブ・ドゥーシーとブライアン・キルミードと共に「モーニングショーフォックス&フレンズ」のホストになります。

2013年「The Real Story」という新しいプログラムをスタートしましたが、Fox Newsとの契約は2016年6月23日に失効。

同年7月6日に、当時Fox News会長兼CEOだったロジャー・エイルズに対しニュージャージー州高等裁判所でセクハラ訴訟を起こし、カールソンがエイルズから迫られた性的関係を拒否したため、彼女が担当していたプログラムから外されたと主張。

エイルズは告発が虚偽であると主張したものの、カールソンの弁護士が、他にも被害を受けた女性たちが「仕事と引き換えに性的恩恵を期待することを公然と話していた」など、エイルズの行動を暴露。

2016年9月にフォックスは訴訟を2,000万ドルで解決したとされていますが、詳細な和解条件は公開されていません。

彼女が提訴したことにより、セクハラ被害を名乗り出た他の女性たちとも、FOXが和解協議を行ったと伝えられています。

ざまーみろ!ですね。

和解後、FOX側は「グレッチェンが彼女にふさわしい敬意と尊厳を持って扱われなかったことを心から後悔し、謝罪します。」と謝罪の言葉を述べました。

グレッチェン・カールソンは、2017年にTime Magazineの「世界で最も影響力のある100人」に選ばれています。

2015年に自伝「Getting Real」が出版され、2017年に出版された2冊目の本「Be Fierce:Stop Harassment and Take Your Power Back」は、ニューヨークタイムズのベストセラーになったそうです。

プライベートでは、1997年10月4日にスポーツエージェントのケーシー・クローズと結婚し、子供がふたりいます。

シャーリーズ・セロン

シャーリーズ・セロンが演じるのは弁護士でもある人気ニュースキャスターの「メーガン・ケリー」

メーガン・ケリー

1970年生まれ、イリノイ州出身。1992年にシラキュース大学のマックスウェル市民社会学部で政治学の学士号を取得し、1995年にアルバニーロースクールで学士号を取得したジャーナリスト兼弁護士。

実際のメーガンさんの写真もWikipediaにあります。

法律事務所「Bickel&Brewer LLP」シカゴ事務所のアソシエイトとして、そこで彼女は米国弁護士協会の雑誌「訴訟」の記事を共同執筆していました。

2004年から2017年まで「Fox News」のニュースアンカーを務め、2017年から2018年までは「NBC News」のトークショーと特派員を務めています。

グレッチェン・カールソンが、ロジャー・エイルズから受けた性的嫌がらせの訴訟を起こしたとき、ケリーは自分自身も嫌がらせを受けていたことを告白しています。

2014年、彼女は最も影響力のある100人のTIMEリストに加わっています。

プライベートでは2008年に現在小説家であるダグラス・ブラントと結婚し、3人の子どもに恵まれています。

シャーリーズ・セロンは、ケリー役を演じるにあたり

「すべてが手に負えないと感じ、様々な理由によりケリーを演じることを理解するのに時間が必要だった。その一番大きな理由は、ケリーがとてもよく知られている人物であるということだと思う。

それはこの瞬間も現実であり、あなたたちが彼女を好きかどうかは別として ケリーの顔や彼女の話し方を知っているということ、そしてそうしたことを回避することはできない。」

と語っていて、更にシャーリーズ・セロンは、メイクアップアーティストのカズヒロの助けを借り、ケリーとの身体的類似性についても追及したことが批評家からの賞賛を得ています。

そして、セロンは実際にケリーからも称賛され、「声、姿勢、ワードローブ、そして天才的なメイクアップを通して、セロンは完璧にケリーです」という評価を手にしました。

試写後、ケリーの夫ダグラスは「実際にそこで働いて感じていたことや体験したことの本質を、映画がどのように理解したかについて話し合ったとき、正しく理解され、事実が正しく検証されたと感じました」と語っています。

更にシャリーズ・セロンは「映画はドキュメンタリーではないが、正しく表現することが重要だった」とも言っています。

ジョン・リスゴー

ジョン・リスゴーが演じるのは、Foxニュースの元CEOでカールソンにセクハラで訴えられたロジャー・エイルズ。

ロジャー・エイルズ

1940年5月生まれ、オハイオ州出身。1962年ラジオとテレビを専攻していたオハイオ大学を卒業。実際のロジャーはWikipediaで。

エイルズはかつて、ニクソンとレーガンのメディアコンサルタントを務め、 2016年にはドナルド・トランプキャンペーンのアドバイザーとして、議論準備を支援しています。

エイルズのテレビでのキャリアは、KYW-TVのプロダクションアシスタントからスタートし、当時地元で話題になった「マイクダグラスショー」が全国展開になり、1967年と1968年にはエミー賞を受賞。

ある特定のニュースネットワークは、若くて魅力的で、金髪のアンカーを採用していることで有名とも言われていて、それがFOX NEWSを揶揄しているのでは?という噂も。

エイルズがカールソンから訴えられた時、弁護士のスーザン・エストリッチを通して、カールソンの告発を否定。

また。ドラマの原作にもなったガブリエル・シャーマンの本にある「1980年代にエイルズが、テレビプロデューサーに自分と一緒に寝るなら昇給する」と発言したということについても否定。

エイルズは、弁護士を通して「カールソンさんと彼女の弁護士は、論争する法的事件がないため、新聞でこれを必死に訴訟しようとしていることが明らかになりました。30〜50歳すべての申し立ては偽です。」と表明しています。

訴訟を起こされた結果、エイルズはFox Newsから解雇され、4000万ドル(日本円にして約44億円)の退職金を受け取ったそうです。

エイルズが解雇され、その後ルパート・マードックが会長になり、暫定CEOとしてエイルズの後任になりましたが、エイルズは「Fox NewsとFox Businessが業界をリードし続けるために、業務の上で目障りになる私の参加は許されることではないでしょう」と認識していたものの、死ぬまでマードックに感謝し、彼と21世紀フォックスに助言を続けていたそうです。

だけど、持病だった血友病が悪化して硬膜下血腫に苦しんだ後、1年後の2017年5月に77歳で亡くなっています。

米ドラマ「The Loudest Voice」

1996年にFOXニュースを開局し、共和党の事実上のリーダーにまでのし上がったロジャー・エイルズが、セクシャルハラスメントによって失脚するまでの10年間を描き、2019年に放送された全7話のドラマ。

ドラマは、アメリカNewYork誌の記者:ガブリエル・シャーマン著「The Loudest Voice in the Room」を原作としています。

ロジャー・エイルズを演じたのはラッセル・クロウ。グレッチェン・カールソン役をナオミ・ワッツとドラマも豪華キャストになっています。

ロジャー・エイルズを演じたラッセル・クロウは、なんとなく顔に本人の面影はあるものの、でっぷりメイクをしているので別人。だけど、本人と2人の役者、甲乙つけがたいそっくり度です。

映画は主に物事をスキャンダルに集中しているけど、ドラマの方はエイルズの10年を描いているので、同じ人物が主人公でありながら、違った出来上がりになっている様子。

日本ではまだ公開されていないようだけど、もしかしたら今後Netflixあたりで配信されるんじゃないか?と期待しているところです。

映画の感想

シャーリーズ・セロンが演じたメーガンは、頭脳明晰で優秀、野心もあって仕事もできる女です。

だけど、ロジャーから受けたセクハラについては、

長い間誰にも言えず、胸にしまっていた苦しさやプライドを傷つけられたこと。それでも仕事が欲しかった自分の野心。

などなど、いろんな側面を抱えて醸し出す雰囲気が、もちろんシャリーズ・セロンの演技力によるところが大きいけど、メイクによってより鮮明に作り出されていたようにも思いましたね。

セクハラってのは、男性は理解できないかもしれないけど、被害者の女性はどんな小さなことだって、絶対に忘れない。

加害者にだって家族がいて、娘を持っている人だっているだろうに、どうして他人だと平気で傷つけることができるのか理解に苦しみます。

男女は、身体的な特徴や体力に違いはあっても人としては平等。

力のある男性が、それを武器に女性に対して、己の欲望を満たすような要求をするなんてのは、弱虫だと私は思うんですけどね。

グレッチェンに訴えられ、メーガンが加勢し、窮地に陥ったロジャーは「俺が仕事を与えてやって、彼女たちを人気者にしてやった」的なことをのたまうんだけど、「与えてやった」という言葉からしてムカつきません?

仕事を与えたのは事実かもしれないけど、彼女たちにも能力があったから人気キャスターになったわけだし、彼女たちの仕事ぶりによってFOXだって潤ったわけだし、お互い様でしょっ。

ロジャーは仕事はできたかもしれないけど、食生活がいい加減だからブクブクと太って、自分を管理する能力はないってことでしょ?

しかも、最後はFOXから解雇され、その時に思い出したのは「老害」という言葉。

世の中って、常に動いているわけです。過去にどれだけ仕事で実績を上げていたとしても、その方法が10年20年たったとき、正しい方法であるとは限らない。

そこを認められるか否か、ってのは人間性のような気もするんですね。人は歳を取ればとるほど、心の柔軟性がなくなっていくように感じるので、自分も気を付けなくちゃなぁと思います。

たった一人のキャスターが、大企業の代表を相手取って戦う勇気。そして、相手が大きすぎて声を上げることをためらっていた女性が、たくさん#MeTooと立ち上がったこと。すごいな、と感じます。

こうした映画が公開され、少しでも多くの人の目に触れて、セクハラするとまずいぞ、という空気が広がっていけばなぁと切に願います。

まとめ

いつも思うんだけど、メイクの技術も俳優たちの演技も本当に実物に寄せていてすごいです。

実物のキャスターたちをテレビで実際に見たことがあるわけじゃないけど、写真で見る限りにおいては、完璧に寄せていっていて、そこだけでもブラボーだもの。

日本では「事実は小説より奇なり」ということわざがありますよね。この話は、特別「奇」な話しではなく、どこにでもある事柄だけど、だからこそ映画になって世の中のより多くの人たちに知ってもらうべきなんだろうな、と思うわけです。

私が会社員をしていた頃は、セクハラなんて言葉もなかったし、セクハラ的行為はあっちでもこっちでもあまりに日常的にでしたからね。

だから、女性の訴えを聞く耳を持つ世の中になったことは大いなる進歩です。

男性たち!

誤解を生むような言動は慎みましょうね。あからさまなセクハラじゃなくても、グレーな発言もやめておいた方が無難ですね。

たくさんの女性にモテることより、正直で誠意のある男性がモテる時代になっていくと思うよ。

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