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映画「ふたりの女王メアリーとエリザベス」ネタバレ感想|生き様は違えど苦悩は一緒

近世~中世の衣装が大好きな私としては、待ってました!な映画が「ふたりの女王メアリーとエリザベス」

二人の女王を取り上げてはいたけど、メアリー目線な作品でしたね。女王であることの重圧、孤独、それを分かり合えるのはメアリーもエリザベスも同じ立場の相手だけ

生き様や個性は違っても、女性であって王位に付いていることによる苦悩は近いものがあるわけです。

でも、ケータイで愚痴を言い合うことができるわけでなし、会うこともままならないメアリーとエリザベス。

感想はネタバレしていますことをご了承くださいね。

作品の概要

メガホンをとったのはイギリス演劇界のトップ女性演出家ジョージー・ルーク。女性だったんですね。なんだか嬉しい。

そして、やっぱり!という感じで、この作品は第91回アカデミー賞®の衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。

カトリックとして生まれ、0歳にしてスコットランド女王となったメアリー・スチュアートは、幼少時に渡仏し、15歳でフランス王太子と結婚、18歳で未亡人となり、母国スコットランドに戻ります。

一方、イングランドでは、エリザベスⅠ世が25歳で即位。王位継承者がいなかったため、エリザベスは日々、早く世継ぎを産むようプレッシャーをかけられていた折、メアリーがスコットランドに帰国。

二人の未来は?確執は?それぞれの想いは?という映画ですね。

スコットランドとイングランドを知る

大きな声じゃ言えないけど、何しろ学生時代から、いや子供の頃から記憶力が非情に低く、従って覚えなければならない「歴史」のような教科は大の苦手でした。

ということで、スコットランドとイングランドの女王が何故争うのか?という基本から全くわかっていません。

もしかしたら、私と同じような女性がいるかもしれないと思いまして、映画の話しの前にざっくり「スコットランドとイングランド」の説明をしたいと思います。

イギリスの島の正式名称は「グレートブリテン島」と言いまして、北部がスコットランド、南部がイングランドです。

グレートブリテン島は、政治的に見ると、「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」の構成要素であるイングランド、スコットランド、ウェールズの3つの「国(カントリー)」からなる。

Wikipediaより

この構図が、歴史的に様々な争いを生んできたってわけです。今もスコットランド独立の火種がくすぶっていますものね。

ということで、昔はイングランドとスコットランドは、同じグレードブリテン島にありながら違う国だったわけです。

しかも、カトリックとプロテスタントの対立が最も激化した時代と言いわれていて宗教による争いも激しかったようです。

スコットランド女王「メアリー・スチュアート」

画像引用元:IMDb

在位 1542年-1567年 1587年2月8日44歳で死去

イングランドから命を狙われていたため、5歳で渡仏し、華やかなフランス王宮で教養を深め、ラテン語、フランス語などの語学に堪能だったんですって。

18歳で未亡人となり、スコットランドへ帰国。父方にイングランド王の血筋があるため、メアリーはスコットランド・イングランドどちらの王位継承権も持っていたわけだ。

ってことで、イングランドを統治していた従妹のエリザベス1世に対し、自分自身のイングランド王位継承権を主張しちゃうんだな。

その裏には、エリザベス1世が正室ではない女性から生まれた子供であり、母方の血筋をたどると農家出身だったという理由があるらしい。

メアリーは今でいうベストドレッサーで、好みは贅沢でシンプル。そんなメアリーの好みが十分に反映された衣装は、どれも色遣いは抑え目だけど気品があり、若くてパワフルな個性を感じるモノばかりでしたねぇ。

死刑台へと向かうときは、真っ黒なマントのようなドレスに身を包んでいたのに、いざ死刑台に上がったときは、侍女二人がその黒いドレスを左右から剥ぎ取り、一変「真紅のドレス」に早変わり!

ものすごく印象的です。私は死んじゃうけど、私が生んだ息子は、将来スコットランドとイングランドをまとめる王になるのよ!という気迫を感じました。

イングランド女王「エリザベスI世」

画像引用元:IMDb

在位 1558年-1603年 1603年3月24日にリッチモンド宮殿で69歳で死去。

イングランド国王ヘンリー8世とアン・ブーリンの間に生まれるが、3歳のとき母が刑死。それによりエリザベスは庶子と見なされ、王位継承権を失う。

その後、再び王位継承権を得るも、異母姉のメアリー1世統治時代にロンドン塔に幽閉される。1558年、メアリー1世が死去し、エリザベス1世として即位。

国際紛争や国内派閥の形成を避けるため、生涯結婚を拒否した。

映画の中でエリザベスは、まるでサーカスのピエロのように顔を白く塗り、赤毛のかつらをかぶっているが、それは天然痘に罹って荒れた肌を隠し、国民に威厳のある姿を見せるためだった。

外見的なコンプレックスもあり、豪華に着飾ることを好んだと言われていて、エリマキトカゲのような襟のドレスを着ています。更にエリザベスは、メアリー・スチュアートの容姿や服装についての情報を逐一入手し、それを上回る装いを目指したと言います。

中世~近世ヨーロッパ貴族のドレスや女性の服装が楽しめるおすすめ映画8選

感想

その1 メアリーの2番目の夫はイケメンだけどダメ男

メアリーがスコットランドに帰ってきて選んだ2番目の夫:ダーンリー卿を演じているのが「ジャック・ロウデン」イケメンです!

将来が楽しみなイギリスのイケメン俳優です。

メアリーはダーンリー卿に、王族にしか与えられなかったロス伯、オールバニ公の位を与え、また王位継承もあらためて与えたため、貴族の反感を買い、ヘンリーも父親にそそのかされたりして野心を持ったりもするわけ。なんだけど、ヘンリーはどーしょーもないダメ男。

結婚する前はメアリーもヘンリーが好きだと思ったからこそ選んだんだろうなぁと感じたんだけど、次第にヘンリーの傲慢な性格がわかるにつれて、嫌気がさし、子どもを産むためだけに利用しようと思うわけだ。

だって、いつでも酒を飲んで酔っ払ってるし、ある日はメアリーが寵愛していたイタリア人の音楽家:デイヴィッド・リッチオと一緒に寝ているところにメアリーが踏み込んじゃったからね。

そう、ヘンリーはゲイだったし、デイヴィッド・リッチオは今でいう「おネエ」だったわけ。

ヘンリー!バカよねぇ。そこは欲望に負けず、我慢しなくちゃ!と思うけどねぇ。

ま、その奥底には、立場はメアリーの方がずっと上だし、メアリーの言うことに従わなきゃならない、ということへの男としてのプライドやら沽券やらがストレスになっていたかもしれないけど、そんなことは結婚する前からわかっているわけだし。

その2 メアリーの心のよりどころだったデイヴィッド・リッチオ

デイヴィッド・リッチオを演じたのは、1987年生まれ、プエルトリコ出身で、セサミストリートでマンドリンを演奏して注目を集めた俳優イスマエル・クルス・コルドバ。エキゾチックです。

デイヴィッドは出番こそ多くなかったものの、キーパーソンだったと思うのね。映画のキャスティングってすごいなぁといつも思うんだけど、そんな役どころにぴったりな俳優さんだったのよ。

実在した人物で、本当はイタリア人じゃなかったようだけど、オペラを歌って女性たちを和ませたり、おネエだもんだから、女性たちと一緒に楽しむこともできて、メアリーにとっては心の支えにもなっていたとても重要な人物だったわけ。

2番目の夫の間男だったわけだけど、結局メアリーはデイヴィッドを責めないの。

でも、ヘンリーは、メアリーがデイヴィッドを寵愛していたことに対して激しく嫉妬してたらしいけど、そいじゃ、もっとメアリーを大事にしなさいよ!って話しだわね。

イスマエル・クルス・コルドバがギャングのボスとして出演しているのが、日本未公開映画「ミス・リベンジ」

映画の内容も役柄も全く異なりますが、これはこれで個人的にはとても好みの作品でした。ご興味がありましたら是非ぃ~。

その3 生き様は違うが王位にある苦悩は一緒

タイトルは「二人の女王」とはなっているけど、どちらかと言うとメアリー目線の作品だったかな。

フランスに嫁ぎ、スコットランドに帰ってきて王子を生み、自分が死んだ後も息子が王位を継承してくれるという礎を築いたメアリーに対して、生涯結婚することなく「私は国を守る上ではオトコなの」とメアリーに告げるエリザベス。

どちらも国を守ることを使命としていたものの、生き様は大きく違うのよね。

もう少し男を見る目があったら・・と感じるメアリー、もう少しかたくなじゃなかったら・・と感じるエリザベス。

だけど二人とも、結局はオトコ社会の中で「オンナの命令なんか聞けるかっ!」という男たちの蔑みを感じながら、それに負けない心の強さを何とか維持しながら戦っていたのよね。

本当の敵は敵対する国でもなく、その女王でもなく、異教徒でもなく、実は周りにいる男たちだったのかもしれない。

だからこそ、二人だけに通じる思いがあったわけだし、それが最後の最後に絵が描かれていて、初めて二人が密会をして顔を合わせるシーンがとても印象的。

エリザベスは、メアリーの若さと美貌に嫉妬していて、そのことをメアリーに告白し、良く見せたかったからこんなものをかぶってきたの、と言って付けていたかつらを取っちゃうの。

ありのままをさらけ出すって、勇気がいるわよねぇ。二人の気持ちが寄り添った瞬間だったかな。

でも、メアリーは王位を虎視眈々と狙う男たちのが民衆を煽って王位を追われ、最後はエリザベスの命によって死刑台に送られちゃうの。

二人が密会をしたとき「必要とあらば断罪する」というようなことをエリザベス1世がメアリーに告げたように、メアリーの処刑にGOサインを出したわけだけど、きっと胸中は複雑だったはず。

でも、それが国を守る王位にあるものの務めとしてエリザベス1世は全うしたのだと思う。

まとめ

衣装はどれもゴージャスでとても見応えがあったし、イングランドとスコットランドの関係性もよくわかったし、王位についていても「女」だということで軽く見られていたということもわかった興味深い作品でした。

女としての幸せは、仕事と両立しないのか?という普遍的な課題がこの時代にもあったことを感じます。

女としての幸せ自体、定義はないし、人それぞれの価値観ではあるけど、それは男の側の理解と協力が誰にでも必要であると強く思います。

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